6
ロンが参加をしてから、キースはさらに新しい音楽を吸収していきました。一部での批判を拭いきることは出来ていませんでしたが、それがライク・ア・ローリングストーンの新しいスタイルになっていました。昔からの音楽に新しいスタイルや音を取り入れ、ライク・ア・ローリングストーンらしい音楽を生み出します。彼らにしか出来ないスタイルとして、若者からの人気を得ることにも成功しました。
彼らが作品を発表するペースは、数年に一度になっていました。二年続けて発表することもありましたが、五年も間が開くこともありました。作品を出せば必ずツアーに出ていましたが、以前のように休みなく世界を周るということはありませんでした。作品を出した後に半年から一年間のツアーに出て、その後休息を取り、また作品を作りツアーに出る。その繰り返しになっていました。そしてあっという間に、時を重ねていきました。
「俺も歳をとったからな」
「けれどファンは、キースの歌を待っている」
「そんなことはわかっているさ。けれどもう、昔とは違うんだ。俺だけじゃない。ミックにもビルやチャーリーにも、ロンにもそれぞれの家族がいるんだ。俺たちはその時間を大事にしたいと思っている。家族サービスをするのは、男としては当然だ」
転がり始めてからいつの間にか、四半世紀以上が過ぎていました。その間にメンバーそれぞれが結婚をし、子供を授かってもいました。キースには、すでに孫も存在していました。
「それに今では俺たち以外の音楽が溢れているだろ? 流行りものじゃない本物もいる。俺たちだけが頑張る必要はないんだ。無理せずに、伝えたい言葉と音楽をしっかりと伝えていけばいい。時間は永遠だ。急ぐ必要はない」
「これからはどうするつもりなんだい? 今度はビルが辞めると言っているんだろ?」
「ビルが辞めるのは、家庭の問題だよ。ビルは俺たちの中で一番の年寄りだからな。家族との時間を、俺たち以上に大切にしたいだけなんだ。無理に引きとめるわけにはいかないだろ?」
「それはキースも一緒だろ? 家族がいるから、作品のペースを落としているんじゃないのかい?」
「それだけが理由とは言えないな。家族との時間を大切にはしている。それだけで作品のペースが落ちているわけじゃない。昔のように溢れるほどにアイディアが生まれてはこなくなっているんだ。いい曲が浮かんでも、どこか昔の曲や他人の曲と似てしまう。時間をかけていい作品を作らなければ、ありきたりになってしまう。それも一つの理由だよ」
僕はその後、直接ビルに連絡を取りました。ビルの本音が知りたかったのです。