表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/75

3


 広告に使われる曲は、短いものです。一曲丸ごと流れるのではなく、ほんの数十秒だけが使われるのです。インパクトがあり、耳触りのよい曲が求められます。

 それが間違いの始まりだったと、僕は感じています。広告に使うための、耳触りのよいだけの音楽が溢れてしまったのです。

「音楽の楽しみ方は様々だ。とっかえひっかえも悪くはないけど、意味がないのも確かだな」

 ライク・ア・ローリングストーンが広告に曲を提供したのは、一度きりです。その後はいくら大金を積まれても、許可していません。


「俺たちの時代はもう、終わりなのかもしれないな」

「キースの時代は、永遠だよ」

「俺たちはただ、転がっていただけだ。もう限界なのかもしれないな。壁にぶつかり、勢いをなくしている」

「それは違う。今でもまだ、勢いは保っている。ただ少し、世界の考えが変わったのかもしれない」

「なんだ? それは? 世界なんて関係ないだろ? 俺たちはそんなものをぶっ壊しながら進んできたんだ」

 それもまた、世界の答えなんだとは言えませんでした。ライク・ア・ローリングストーンが世界を変えることが出来たのは、キースの歌に力があったからだけではないのが現実です。世界がそれを求めていただけなのです。直接キースの歌を、音楽を求めていたとはいえませんが、世界を変える力のあるなにかを求めていたのは確かなことです。そこにタイミングよく、彼らが登場しました。実力だけで世界を変えるのは難しいのです。タイミングが合わなければ、ここまで偉大にはなっていなかったことでしょう。彼らがいなければ、他のなにかが代頭していたはずなのです。その時の時代が求めた答えが、ライク・ア・ローリングストーンだったのです。

「今が限界かもしれないと感じている。新しい波には、逆らえないからな。テイラーと一緒に色々と新しいことが出来たのは、楽しかった。テイラーがいなくなる今、その楽しみは幻だ」

 僕はすぐに、キースのその言葉の意味を理解出来ませんでした。

「そんなことないさ。テイラーは素晴らしいギタリストで、作曲家だろ? 世間がなにを言おうとも、僕は今のライク・ア・ローリングストーンが好きだ。新しい音楽を吸収している。今はそう、勉強の時期なんだよ。これからが楽しみだ」

「お前はなにかを勘違いしているな。俺たちは今までの作品に満足している。世間がなんと言おうと、いいものはいいんだからな。テイラーのことも、最高だと思っている。だからこうして悩んでいるんだ」

 僕はようやく、おやっ? と感じました。そしてしばらくの沈黙を作り、考えました。答えは、単純でした。

「テイラーが辞める?」

「・・・・そういうことだよ。バンドでの生活に疲れたそうだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ