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 流行りの音楽を聞きながら、流行りの服装で街を歩きます。気分によって着せ替えをし、飽きたら捨ててしまえばいいのです。

「それでもいいんだ。好きにすればいい。本物は、どんな時代にも死なない」

 キースは僕と出会った時からずっと、変わらない服装で、変わらずに音楽を楽しんでいました。

「流行りの中にも、いい音楽は溢れている。俺はそれを、吸収したい。頑固な爺さんにはなりたくないからな」

 確かにそうです。頑なに自分だけを貫くのは、カッコイイとはいい難いものです。

「俺たちも、流行りのようなものなのかもしれないと思うことがある。いつ飽きられてしまうのか、不安になることもある。だからかもしれない。俺は立ち止りたくないんだ。常に新しく、楽しく生きていたい」

 街に溢れた音楽たちは、流行りを意識しているようでした。流れては消えていく。そんな耳障りがいいだけの音楽が溢れ始めていました。聞いていて少しの不快感もない音楽は、すぐ飽きがきてしまいます。だからなのでしょう。次から次へと新しい曲が生まれては、消えていきました。

「作品を作らずに一曲勝負。悪い考えじゃないけどな。確かにそれは、つまらないな」

 音楽の楽しみ方が、少しずつ変化をしていました。作る側も、一曲ずつ発表し、飽きを感じるとすぐ、新しい曲を発表します。そして数曲集まると、そこにどうでもいいような捨て曲を加え、作品として発表するのです。

「俺たちはそういうことをしないと決めている。一曲でのバラ売りは、卑怯だな」

 当時はその一曲で有名になり、消えていくバンドも多くいました。

「ベスト作品なんてのも、作らなければよかったと思っている。悪い影響を与えているのは確かだな」

 テイラー加入後、ライク・ア・ローリングストーンはそれまでの作品から人気の高い曲を集め、作品として発表しました。ブライアン追悼の意味もありましたが、その理由は、新しいファンにこれまでの軌跡を伝えたかったからです。その中には未発表の曲も含まれていて、古くからのファンも楽しめる内容となっています。彼らはその後も何枚ものベスト作品を出しているのですが、その全てに未発表の曲や新曲などを加えていました。

 しかしそのベスト作品が注目を集め、予想以上の売り上げを見せたことで、真似をするバンドが増えてしまいました。ただ真似るのならいいのですが、作品を三枚程度しか出していないのにもかかわらず、新しい曲も入れずにベスト作品を発表するバンドが増えてしまったのです。人気があるうちに、売れるうちに作品を売っておこうとの考えの元の戦略だったようです。

「広告に曲を使わせたのも失敗だよな。あれは確かに金になる」

 企業の宣伝のため、曲を使わせてほしいと彼らに連絡が入りました。キースはなんの考えもなしに、承諾してしまいました。金にもなり、曲の宣伝にもなります。断る理由は見つかりませんでした。

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