第四章、1
第四章、二千九百七十年~二千九百九十八年
テイラーの加入後、ライク・ア・ローリングストーンは一年から一年半に一枚のペースで作品を発表していました。時代の流れに乗り、流行りの音を大きく取り入れた作品を生み出してきました。
世間からは少し、疑問の声が上がり始めていました。ブライアンがいた頃のライク・ア・ローリングストーンを求める声も多くありました。
「俺はただ、時代に埋もれたくないと思っていただけだ。次から次へと現れては消えていくバンドの仲間入りはしたくない。常に挑戦していただけだな」
作品発表のペースが少し遅れ出したのは、ライブツアーに力を入れるようになっていたからです。世界中を周り続けながら、その間に曲作りをして、作品を発表していました。数年間休まず、世界を何周も周っていました。一年で数百万の観客を集めていました。そんなツアーを実施し、成功させたのは、彼らが初めてでした。
「俺のことを起業家だなんて呼ぶ連中もいる。ふざけろってんだ! 巨大な金を動かしてはいるけど、俺の力じゃない。それだけのファンが集まってくれるから。それだけだ」
当時は音楽の新しい波が押し寄せてきた時代でもありました。ライク・ア・ローリングストーンのレコードは、思うようには売れなくなっていました。しかし、以前からのファンが大勢いたため、ライブでの人気が衰えることはありませんでした。どんな評判の悪い作品を発表した後でも、ファンはライブを楽しみに会場へと足を運ばせます。それは、昔からの名曲を聴かせてくるからです。
「金のためにライブをやっているわけじゃない。金ならもう、手に入れた」
新しい波は、古い波を呑み込んでいきます。ライク・ア・ローリングストーンと同世代のバンドは、次々と姿を消していきました。転がり続けていた数少ないバンドが、彼らでした。
「楽しむことが出来ればなんだって構わない。音楽は、自由だろ?」
しかし僕としては、不満が多い時代の始まりでもありました。音楽は、飾りではありません。この時代から、音楽がファッションと化してしまったのです。