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観客の一人がまた、ステージに上がりました。その一人も、手に銃を持っていました。前日の事件の後です。恐怖を感じた者たちの多くが、会場に銃を持ち込んでいました。観客席でも無意味に銃が発砲され、数十人が殺されています。ステージに上がったその男は、ステージ袖に向け、迷いもなく発砲しました。その弾は、犯人の胸を貫きました。倒れた犯人の血飛沫が、キースの身体に浴びせられ、すぐさま犯人の身体がキースに向かって倒れ込んできました。
犯人を殺し男は、観客席からの別の発砲により撃ち殺されました。その犯人が誰なのかは、いまだに公表されていないのですが、会社側と警察は捕まえたと言っています。観客席での惨事を引き起こした者たちも全てを捕まえることが出来たと言っているのですが、その真偽は闇に消えてしまっています。
「みんなが哀しい・・・・ マネージャーはキースを助けて死んだんだ。その意味がわかるかい? キースに生きていて欲しい。その想いがわからないのかい?」
キースは突然、僕を抱き締めました。
次の日から、ツアーは何事もなかったかのように再開されました。銃の持ち込みが制限されることはなかったのですが、その後同じような事件は起きていません。その日のキースの歌声は、前日の事件を忘れさせてくれるほどに、最高でした。
その後、ライク・ア・ローリングストーンはライブを続けながら作品を発表していました。当時としては初めての、ライブ録音の作品も発表しています。
ライク・ア・ローリングストーンは、常に時代の先頭を走っていました。バンドを組んで表舞台に立ったのも、作品の発表も、サッカー場でのライブも、完璧すぎる物語を表現した作品も、ライブ録音を発売したのも、その他にも全ての作品が、全ての行動が、画期的なもので、初めての試みばかりでした。
そして、初めてのメンバー脱退という事態を招くことになりました。