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「お前は悔しくないのか!」
キースは僕を、ぶん殴りました。
「僕は、哀しい・・・・」
犯人が発砲をした後、すぐに警護の人たちがステージに飛び上がり、犯人を取り押さえようとしました。その時、犯人は突然ステージ袖に向かって走り出しました。警護の人は、突然のその行動に虚を突かれ、取り逃がしてしまいました。犯人の目的は、キースでした。キースを殺すつもりだったと思うのですが、その真相は明かされていません。犯人の記憶装置にもその思考が残されていなかったと言いますが、真実は会社側が消去してしまったのだと、僕は考えています。
ステージに走り出していたキースに、犯人が銃を向けたその時、当時のマネージャーが突然、キースを横から突き飛ばしました。犯人は予想外の出来事に驚き、引き金を引きました。その弾が、マネージャーの脳天を貫きました。
「俺だって哀しいんだ! 目の前で人が殺された。これを見てみろ! あいつの血を浴びたんだぞ!」
そのマネージャーは、地下のライブに足を運ばせ、ミックにレコードを売っていた人です。彼の家族の意思により、その名前と詳しい人柄を伏せることになっているのですが、とてもいい人だったことだけは記したいと思います。彼のことは、僕も含めたみんなが愛していました。彼はキースの危険を感じ、素早く飛び出し、キースを突き飛ばしました。そのおかげでキースの命が助かったのです。