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「今日は最高のライブをする。それだけだ」
キースはそう言い残し、ステージに飛び出しました。しかしその日も、歌うことが出来ませんでした。
「俺があいつを殺してやる!」
「それはもう、手遅れだよ・・・・」
前日の犯人がまた、会場に現れました。当時ライブのチケットは、クレジットを使っての購入が出来ませんでした。世間が認めていたとはいえ、会社側は、表向きとして、バンドの活動を認めてはいませんでした。ただ、大きな金を落としてくれるので、文句も言えなかったのです。
クレジットが使えないため、チケットは紙で作られていました。入口で一枚ずつ、係員がそのチケットをちぎり、半分を渡して中に入る許しを得るという仕組みです。
犯人の顔が公表されていなかったため、入口で確認することは不可能でした。しかし、銃の所持もそのまま許可されていて、警護の数を増やさなかったのは、不自然なことでした。バンド側は銃の所持を禁止することと、警護の数を増やすことを要請したのですが、受け入れてくれませんでした。会場の管理をしている会社が、世界を支配している会社からの圧力でそうしていた事実が、後になって判明しました。
「死んでしまったんだ。これでもう、危険はない。明日からのライブは、楽しめるはずだよ」
「楽しむ? ふざけるな! 人が死んでるんだぞ!」
「なにをいっているんだい? 昨日も人は死んでいる。それでもキースは、今日を楽しもうとしていたじゃないか?」
「昨日とは訳が違うだろ! 今日死んだのは、俺たちの仲間なんだぞ!」
犯人は、演奏が始まると同時にステージに上がりました。観客席に向け、無暗に発砲しました。三人が、死亡しました。