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活動再開初日のライブは、開演前から会場が異様な雰囲気に包まれていました。なにかが起きる、そんな嫌な予感に満ちていました。
「俺はお前の書く記事が好きだ。物語の方は、いまいちだけどな」
僕は当時すでに、ライターとしての仕事以外に物語を書くようになっていました。無事に大学を卒業し、その資格を得たのです。当時は作家になるのに特定の大学を卒業しなければならなかったのです。かといって、大学を卒業しただけでは面白い物語を生み出せないのが現実ではあります。今ではその制度も廃止され、学歴がなくても面白い物語を発表する者が増えています。
「そんな言い方をするのかい? 確かにキースの作品は面白い。けれどそのおかげで大変なことになったじゃないか?」
「大変なこと・・・・ か」
今になって考えると、この時のキースの表情がその後の事件を見据えていたようにも思えました。
「俺はただ、自由に音楽を楽しんでいるだけだ」
ライブが始まると、すぐに事件が起きました。一曲目の演奏が始まり、キースが舞台袖から飛び出し、大きな歓声を浴びたその時です。ほんの少し遅れて悲鳴が響きました。歓声の中には、誰の耳にも届かなかった銃声が紛れていました。
会場内に銃が持ち込まれ、発砲されました。合計で五発の弾丸が、人間の身体に撃ち込まれました。男女二名が、殺されました。