序章-ビギニング・デイ
澄み渡る空を見上げると、風を見て感じれるほど雲の流れが速く、水平線の向こうまで流れていく。
その光景を見つめていると、水平線に吸い込まれていくような感覚をおぼえた。
肌にあたる海風は冷たく、眼下に広がる海の波が岸壁に打ちつけは引いて、また打ち付ける。
塩の匂いと足元に広がる草花の匂いが混じる風は、透き通るような薄い水色の髪がキラキラと輝く一人の少女、ガラテアの髪をなでていた。
ガラテアは水平線の先を見ながら「終わりました」と声をもらす。
その声は風にのり、少し後ろを歩いてきていたコスティの耳に届くと、彼はガラテアの傍で立ち止まり「いいや、ここから始まるんだ。そうだろう?」とゆったり、優しい笑顔を作りながら言った。
ガラテアは歩いてきたコスティに振り向き、すこし見つめた後「あなたにその笑顔は似合いません」そう言いながら雲の流れを見つめなおし、微笑んでいた。
◆
二〇二〇年、地球全土を自然的とは思えない災害が襲った。大地が激しく揺れ、陸が割れ、地面は隆起し、海が陸へ変わり、山が崩れ、波が大地を襲った。
さらに北極圏および南極圏を中心とした氷が二四時間のうちに融解。水位が上昇し、その上昇水位は50m以上とされ急激な水量の変化に海は荒れ続け、沿岸部の主要都市および施設は壊滅。
追い打ちをかけるように人類に悪夢が襲ったのはその二日後。
混乱が続く中、世界各所に突如として現れ、人を襲いだしたのは人類が今まで確認したことのない生命体だった。
その生命体の目的が侵略だと気づいたのはさらに七日後。
あらゆる国は自国の対応もままならず全てが後手にまわり、対応のなにもかもが遅かった。
災害の対応がままならない混乱の中で起きた侵略者の侵攻速度は凄まじく、わずか二週間足らずで人類は二五パーセントの死傷者を出す結果となった。
「北に行けばヤツ等がいるらしいぞ! 南に逃げろ!」
「バカやろう! 南は山が崩れて通れねぇよ!」
「じゃぁどこに逃げろって言うんだ?! 東か?! 西か?!」
「パパーっママーっ!!」
どこに敵がいて、どこが攻められて、どこに行けば安全なのか分からない。ある者は崩れた建物に隠れ、ある者は叫び、ある者は意味もなく走り、ある者は果敢に侵略者と戦い、子供達は泣いていた。
「戦うしかねぇっ! 子供を逃がせ! 戦えるやつは何でもいい武器を持て!」
混乱の渦中で人類は存亡をかけた戦いと逃亡を強制的に強いられ、この日起きた出来事は後に《ビギニング・デイ――始まりの日――》と呼ばれるようになる。
始まりの日から約一年が経った頃、地球全土で環境が変わっていた。
災害の影響からの変化はもちろんだが最も大きな変化は、北極圏および南極圏の氷の融解によって起きた海水温度低下。それによって引き起こされた北半球の凍土化。
一度、融解した氷の大地はさらに大きな氷の大地へと変貌を遂げた。
人類は、災害の影響による物資や情報が不足する状況で、凍土可した大地で生きることは厳しく、南へと撤退を余儀なくされる。
そして『キャンサー』と総称された侵略者に北部地域を明け渡す結果となり、北部と南部の境界線では幾度となく人とキャンサーの戦闘が繰り広げられていた。
人類はこの年、キャンサー撃滅に向け連合軍を結成。生き残った世界中の人々は協力し、共存の道を探り始めた。だが、この時はまだ地球全土で天変地異を巻き起こした災害の被害は回復していない。
「Yahooo!! 仕留めたぜ! この緑野郎!」
「右からもデカイのが来てるぞ! タイタンだ!」
「で、デケェ……クソ! クソ! 銃がきかねぇ!」
「お、おい逃げるぞ逃げるぞ!」
「「ギャァァァァァァッ――ッ」」
キャンサーの容姿は様々だった。剣や槍を持った人型の生物に襲われ、体が岩でできた巨人が街中を暴れまわり、ドラゴンとしか形容のできない空を飛ぶ恐竜が現れ、通常の何倍も大きな狼には体を引き裂かれた。
科学では説明ができない現象によって攻撃を受け、銃器などの現代兵器が効かないキャンサーも現れはじめると苦戦を強いる攻防を繰り返す。
そして、その各種の様相は『自然界の動物や無機物が変化したように思える』と報告がされている。
「ママーこれみてー」
「……え? これは一体……なにが起こっているの」
戦いが続く中、一部の子供達の体に異変が起き始める。
多くは、超人的な能力を発現させた。何も無い所から物を取り出したり、物を浮かせたり、火や水を生み出したり、中には人が聞こえない音域の音を聞きだすなど動物に見られる特徴を宿す子供もおり、その能力は多種多様だった。
子供達が発現させた能力も災害が切っ掛け、もしくはキャンサーが出現したことによって起きているものと推測されてはいたが原因は不明。
ただ『キャンサーも同じような能力を使っている』という確認は取れていた。
当初は気味悪がられる事もあったが、様々な情報が飛び交う時代の状況、また様々なSF小説や映画などを作ってきた人類は、意外とこの超人的な能力を持った子供達を受け入れられていた。
ビギニング・デイから一三年が経った二〇三三年。
勝機を見いだせずに追い込まれていた人類は、一縷の希望に掛け、キャンサー撃滅にむけた大規模な作戦を実行することになる。
「隊長っ、ここは何とかします。逃げてくださいっ!」
「おまえ死ぬ気かっ!」
「もう、どの道この戦いは人類の負けだ。なら、隊長は生きてくれ!! 俺はこの怪我でまともに動けない!」
「尚更、置いていけるわけないだろう!」
「っ……ガーラっ! 隊長を頼む。ガーラと隊長が人類の希望なんだっ!」
「ジャスパーノ意思ヲカクニン。リョウカイ。隊長ハ任セテ下サイ」
「……ッ! おいっ! ガーラ放せっ! 降ろせぇぇぇっ!!」
この年、あらゆる手を尽くし度重なる攻防を繰り返した戦闘もむなしく、キャンサーの勢いをとめる事が出来なかった人類は敗戦。
このとき人類の人口は全盛期の一〇パーセントを切っており、人々は住む場所を追われ散り散りに逃げ惑うことになる。
敗戦以降、多くの人間を失った人類の現代科学技術は衰退。
そして現在、『人』はひとつの人類ではなくなり、様々な様相が見て取れる容姿へと急速な進化をとげていた。この急速な進化は超人的な能力を発現させた子供達が要因になっている。
人類は『種族』で分類され、人間だけでなくワービースト族、ハルピューマ族、パック族、ジャイアント族、その他にも多種多様な種族が村や町、都市を形成し『ヒュニティー』としてまとまり生きていた。
そして、地球の南側を死守してきた『ヒュニティー』と北側の多くに生息地域を広げた『キャンサー』との戦いは今なお続き、ノイドとよばれる種族によって違う形の技術が発展している。
はじめまして。
『河村ゆきも』と申します。
プロローグ、読んでくれてありがとう。
ここまで読んでくれただけでもうれしいです。
この作品は私がはじめて書く処女作になります。
これから、試行錯誤の末に少しずつ投稿していくことになりますが、なんせ初めてなんで拙いところが多々あることは先に誤っておきます。
誤字脱字の報告や感想なども随時お待ちしていますね。
手元にある構想では結構、長い話になるんじゃないかと思います。
処女作でそんな長い話で大丈夫なのかって? 私もワカリマセン。不安だらけです。
いつまで書けるか分からないけど、死なない限りは最後まで書いてみたいですね。
それでは皆様。これからもよろしくお願いします。