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第2話 「Think.」~考える~

2話めです。



 

 ガボラ達は学校に着くと、門前を警備する軍人に元気よく挨拶をすると、自分達の教室に向かった。


 王宮から南にある王立軍学校は、有事の際には災害対策本部や避難所、作戦司令部に使われるほど、広大で強固な造りになっている。

 門前に立つ軍人と構内を警備する軍人を見れば、それはわかるだろう。


 軍学校を卒業し、軍人となった生徒は1年間、軍学校内にある寮に住み込み、軍学校の警備に就きながら学校内の施設で研修を行う。

 その後、本人達の希望と能力を考慮したうえで全国に派遣されていく。


 道すがらガボラが楽しそうに話す。


「今日のおべんとなんだろな〜。昨日のおべんとも、おいしかったな〜。」


 お幸は毎朝、子供達の為にお重5段分のお弁当を作っているが、絶対に子供達に中身を見せない。


 お幸曰く、「お弁当は食べる時に初めて見ると、もっとおいしくなるのよ。」らしい。

 だからお幸がお弁当を作っている間、お手伝いをしているアイラとメルルは、庭を掃いたり雑巾がけをしたりする。


 子供達もお幸の言う通りにお弁当を先に見たりはしない。

 お弁当を開ける前の、「今日は何かな〜。」と言う期待感が、子供達にとって、極上のスパイスになるからだ。


「昨日の焼いたお魚もおいしかったねぇ。あちし、あのお魚大好き!」


 アイラはうっとりとした表情で、昨日のお弁当で食べた「サワラの西京焼き」を思い出した。


「俺はおにぎりだな!おばちゃんのおにぎりが一番おいしい!」


  お幸のおにぎりは全て違う具材が入っている。それがモチラに「次は何のおにぎりかな?」と言う期待をさせる。


  「僕は煮物が好き!」


  タルルはたくさんの野菜とこんにゃく、鳥肉の煮物の味を思い出しながら語る。


  少し甘めの煮物とおにぎりを一緒に食べると、甘さとしょっぱさが奏でるハーモニーは、タルルを虜にするのだ。


  「私はたまご焼きが好き!」


  メルルはふんわりと色よく焼かれた、甘ーいたまご焼きの味を思い出しながら言った。


  あんなにおいしそうな黄色い食べ物は他にない!


  メルルは断言出来ると思っている。


 

 子供達が修道院にいた頃は、食べ物の話なんかしなかった。

  余計に腹が減るからだ。


 修道院の朝食は、固いパンとじゃがいもたっぷり、ベーコンがちょっぴりの薄い塩味のスープ。もしくは、薄いおじや。


  昼は固いパンにたっぷりの野菜と薄いハムをはさんだサンドウイッチと、朝食の残りの具のないスープ。


  夜はパンであったり、米であったりバリエーションはあるが、肉の塊や新鮮な魚などは出て来ないし、全ての食事の量は圧倒的に足りない。

  ヘタをすれば、少ない食事を年上の連中に盗られる事もあるのだから、たまったものではない。


  たまにお手伝いで町に出たりすると、町中に広がるおいしそうな匂いに耐えきれず、お腹の虫が鳴ることも少なくなかった。

  だから町に行くのは余り好きではなかった。

  匂いを嗅ぐからこそお腹が減るのだから、嗅がない方がマシなのだ。


  特にお母さんに連れられた同じ年ぐらいの子供が、何かを食べながら歩いている姿を見るとつらかった。

  お腹が空くと同時に、胸の奥がキュッとなるからだ。


  修道院には5人を除いた今でも、20人はいるのだ。

  中には赤ん坊もいるし、子供達より小さい子供も多い。もちろん年上もいる。

  対してシスターの数も少なく、修道院は貧乏だとくれば、ガボラ達の年にもなれば自分の事は自分でしなければならない。

  それどころか、小さい子供達の面倒まで見るのだ。

 

  留学の話が出た時、ガボラ達5人は話し合った。

  議題は大和王国に行くか行かないか。

  各自の主張を要約すればこうだ。


  ガボラ

  「大和王国に行くのは嫌ではないが、修道院の小さな子供達が心配だ。いじめられても助けられないし、なにより夜、一人でおしっこに行けるかが大きな問題だ。」


  モチラ

  「大和王国に行くのはやぶさかでは無い。兵隊さんになれるのであれば、兵隊さんになってみんなを見返してやりたい。

  ガボラの言いたいことはわかるが、そろそろ一人でおしっこに行くべきである。」


  アイラ

  「大和王国に行くのは嫌ではない。しかし心配なことが一つある。大和王国においしいものがあるのか?そしてそれらを食することが出来るのか?出来るのであれば今すぐ行く!おしっこは一人で行けばよい。」


  メルル

  「出来れば大和王国には行きたくない。お勉強は大和王国に行かなくても出来るし、子供達の面倒を見れる戦力の低下は由々しき事態である。

  一人でおしっこはまだ早い。知らない所に行くのは怖い。」

 

  タルル

  「大和王国に行くのは賛成である。せっかくのチャンスを棒に振るなど愚者の行いである。

  いつでも自分達が子供達の面倒を見るのは、後進の教育面から考えていかがなものか?

  それに自分達がいなくなり、子供達の面倒を見る戦力低下を考慮するのはわかるが、自分達が大和王国に行く事で子供達のエンゲル係数が少しでも改善されるのであれば、それはそれで結果的に修道院と子供達への貢献になるのではないか?

  大和王国に行く事は、子供達が一人でおしっこに行くチャンスと考えるのはどうか?」

 

 5人は白熱する議論の末、タルルの意見を採用するに至った。


  5人は話し合いの結果を子供達に伝えた。

  子供達の中で、話が理解出来る者達の意見は真っ二つに別れた。


  各陣営の主張はこうだ。


  賛成派


  「お兄ちゃん達が大和王国に行くのは寂しいが、行けるのなら行ったほうがよい。たまにはお土産を持って帰ってきて欲しい。」マルルくん 5歳


  「大和王国ではここよりおいしい物が食べれるはずだ。自分達の分もおいしい物を食べて来て欲しい。出来れば帰国の際には、お土産においしい物を持って帰ってきて欲しい。」デイブくん 5歳


  「正直な所、うらやましい話である。自分も連れて行って欲しいくらいだ。そういう思いを持つ子供がいることを大和王国に伝えて欲しい。」 マーチちゃん 5歳


  反対派


  「自分達だけおいしい物が食べれるのはずるい。全員で大和王国に行けばなんの問題もないはずだ。俺達も連れていけ。」 チックくん 4歳


  「俺におしっこを漏らせと言うのか!お化けが怖いよ~。」 タックくん 4歳


  「タルルお兄ちゃんが浮気をしたら、どう責任を取るつもりなのか?将来のお嫁さんとしては当然、このような愛し合う二人を引き離すような不条理は許さない。断固反対である。」 ミーナちゃん 4歳


 

  賛成派と反対派をも巻き起こんだ、三つ巴の議論に終止符をうったのは、修道院一の交渉人(ネゴシエーター)タルルだった。


  タルルは賛成派と反対派の両派に、帰国時のお土産持参を確約。

 チックくんには一人でおしっこに行く大切さと重要性を伝えたうえで、お化けはいないと話し承認を得た。

  また、ミーナちゃんには浮気はしないと宣言し、個人的にお土産を献上する事を約束する事で、ミーナちゃんの了承を得た。


  これで全ての問題がクリアーされ、5人は大和王国へと旅立つ事になった。


  さすがタルル!と言いたい所ではあるが、実はタルルはここで致命的なミスを犯していた。


  ミーナちゃんへの対応である。


  正直、この時点でタルルはミーナちゃんを妹程度にしか思っていなかったのだが、ミーナちゃんを納得させるためにした約束が、後々、タルルの首を絞める事となったのだ。


  その詳細は以後、物語の中で語られて行くであろう。


  こうして大和王国へと旅立った5人であったが、最初は不安で胸がいっぱいであった。


  大和王国に来て、いきなり熊みたいな大男と出会った時は、「騙された!」「喰われる!」「帰りたい!」と思ったが、日が経つにつれ、大男はいいおじさんであることがわかり、おばさんは料理の上手な優しい人だとわかった。

  胸の小さいお姉ちゃんは、一緒に寝てくれるからいいお姉ちゃんだと思っている。


  残りのあんちゃんと兄ちゃんはまだよくわからないが、悪い人ではなさそうだ。


  毎日おいしいご飯をお腹いっぱい食べさせてもらい、一緒にお風呂にも入ってくれれば、一緒に寝てくれる。


  しかもルーンにいた時よりもお手伝いしなくていいし、ルーンにいた頃よりお勉強もさせてくれる。年上からいじめられる事もなければ、食事を横取りされる事もない。


  まるで夢のような毎日に嬉しいと思うと同時に、修道院にいる子供達に申し訳ないとも思うのだ。


  5人は大和王国に行っても、今までと変わらない生活が待っていると思っていたし、よもや予想を超えて、こんなに恵まれた環境だとは夢にも思っていなかったのだ。


  『こんなに幸せでいいのだろうか?』


  急激な環境の変化に5人は戸惑い、悩んでいたのだ。


  もちろん、そんな話は家では出来ない。

  だから内緒話は大抵、学校でする事になる。


 やがて5人は教室に着くと、それぞれの机に向かった。

 

話が全然進んでない(笑)

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