3
あれ?…俺何してたっけ?
眠気まなこを開けて起き上がった…いつもの霧だ…
『遅いな…やっと起きたか』
不思議と彼女の嫌味も今の俺はそこまで重圧を感じないな…
泥を一握り手で掴み手の上で分裂させ、団子を数個クルクル回した。
「うん…魔法は夢じゃないな」
土魔法か…結構イケてるな…
『ほぅ…初歩は完璧な様だな…では、その団子達を遠くに放ってから動かしてみろ
「ははっ!楽勝しゃね?」
団子達を放ってからクルクル回す。
「ほらね〜…楽勝さ!」
『ほぅ?』
「ん?…ぐ!…あれ?くそ!回れ!」
何だ?数十分しか経っていないのに倦怠感が身体を満たしていく
「が!がはぁ!」
『なんだ?…情けない奴だな…』
「な…なんで…」
『土属性の特性は触れているものを動かすのは得意だが、何も無いところから生み出したり離れた物を動かすのは不得意だ…』
「ハァハァ…なるほど」
『それとな…』
「へ?」
突然、俺の肩に激痛が走る。
「があぁぁぁ!俺の…腕が…」
腕を切断された切り口を抑えながら俺は叫び、泥団子達は弾け飛んだ。
四つん這いになり、頭を地面に擦り付けて痛みに耐えた。
『この様に、外傷などを与えられ、精神が不安定な状況下で魔法に集中するのは難しい…いかなる苦痛にも慣れ…身を守る術を身に付けることだな…』
「がぁ…あ、あれ?」
突然痛みは引き、右手がくっ付いている。
右手を回してみたがなんの問題もない。
『さて…ではそろそろ実戦と行こうか…』
前方の霧が少しづつ晴れていき、高さ1mぐらいのシルエットが浮かび上がってきた。
それはブルブルと震えると突進してきた。
「ブヒー!」
「うおっ!」
俺は横に飛び、突進を避けてその姿を確認する。
「い…猪だ」
『そう…猪だ…この森に生息するリトルボア…小型の猪だが、何のスキルもない人間を肉片にする事ぐらいは可能な種だ』
再び突進した猪を避け、俺は木を背にして立った。
「これでどうだ!」
猪は捻りのない突進を続け、突進を避けるとかに激突した。
突進された木はメキメキと音を立てながら折れ曲がる。
「ブヒー!」
「うそ…うげっ!」
気を緩めた俺は興奮した猪に突き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がり、切れた口から血を吐いた…腕を裂かれる痛みに比べれば!なんて事ねぇ!!
通り過ぎた猪が再び突進してくる…何とかしなくては…
「ブヒー!」
猪を丸ごと落とす穴なんか掘れねぇ!どうする?
そうだ…逆に…
「おら!」
地面に手を当てて自分の周りの泥を操り、所々深く液状化させた。
猪は力一杯突進し、深い沼に足を深く取られた。
猪の勢いは自分の足をボクッという鈍い音と共に折り曲げ、猪の体が転がっていく…
「ピ、ピグー…」
勢いが止まった頃には前脚と後脚が一本づつ折れ曲がった猪はピクピクと弱々しく震えていた。
潤んだ瞳でこちらをみている…
足からは骨が突き出し、重症だ…可哀想だが、こうなっては死は近いだろう…
「可哀想に…殺してやろうにも素手だしな…」
『魔法があるだろう?』
俺は泥を棍棒状に固め、猪を殴った。
「ピグー…」
猪はビクッとしただけで外傷などはつかない
『それは…流石に無いな…』
「ん〜…そうか…」
俺は泥を液状化させ、猪の鼻と口に詰めと猪は激しく暴れた後に息を引き取った。
弱々しい今の魔法ではこれが限界だ…