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よく寝たな…目を開けると葉から雫が垂れ、地面に染み込んでいった。

どのくらい寝ていたのだろう…その場に座り、周囲を確認した。


俺の周囲は霧が晴れ、地面には草…朝靄の緑の匂いが心地良い…


草の長さは綺麗に切りそろえられている…草をイジり長さを指で図り、親指を立て、草の奥に見える霧までの距離を測る…5mって所か…


大きく息を吸い込んだ。

『む?…やっと起きたか…昨日も話したが、特例として妾の領地に滞在する事を許す…半径5m程だがな』

良かった…

彼女の敵意のない言葉に安堵し、苦しくなった俺は吐き忘れていた息を吐く。


『ふぅ…溜息か?』

「あ、失礼…」

『まぁ良い…お前にはこれから修行を積んでもらい、早々に出て行ってもらおう…早速だが咥えろ』

俺の手が何かの力で開かれ、手の平を上に向けられた。


白く細長い紙が手の平に乗っている…

「何だ?…これは…」

『試験紙だ…まずは属性を特定しよう』

「属性?」

『そうだ、生物の中にはマナと呼ばれる魔力があり、それを変換し、色々な魔法を使うことが出来る…簡単に説明すると、肉体を強化する闘気、回復を促す聖属性、心を殺す闇属性、後は説明不要だろう…火土風雷水を操る五属性がある…人間は闘気が圧倒的に多い、次に多いのが五属性聖闇だ、その中でも選ばれた一部の人間は複数の属性を持つ、さぁ分かったらその紙を舐めてみろ』


そうなのか…

俺は口をペロッと舐めた…仄かに甘い…か?

紙を確認すると舐めた箇所が着色料を付けたかのように鮮やかな黄色になっていた。


『ほぅ?土属性なんだな…よし、プランは決まったな…この泥でとにかく遊べ…』


目の前に水が染み出し、土と混ざり合い泥が出来た。

「遊べ?って?」

『そのままの意味だ、妾も忙しい…何でも良いからイジリ倒せ』


は?何言ってるんだ?

「…は?…本当に説明終わり?…おい!」


『五月蝿い!』

「グッ!…ハァハァ…くそっ!何だってんだよ!」


しばらく相手の反応を待ったが、本当に終わりらしい。


「くそっ!」

悪態をついたが、他にやる事もないので言う通り泥遊びでもするか…泥遊びなんて何年振りだろうか?…ん?遊んだ事あったのか?


俺は時間の感覚も無い、この空間で何日も何日も泥を捏ねたり、団子にしたり、身体中に塗りたくったりを一日中やっていた…頭が狂いそうだ…でもそれ以外に出来る事は無い


「そうかそうか…君は団子になりたいのか…ふふふ…君は水を追い出してもっと乾きたいのかな?…」


次第に泥が俺に話しかけてくる錯覚を見るようになっていた…一周回って楽しくなってきたなぁ


「ほら、ちょっと背中見せてごらん」

手の平に乗った彼の背中を擦り、形を整えた…後は回転させて全体を磨けば兄弟の完成だ…


彼は手の上でクルクルと回転して踊り、俺は砂の付いた手で身体を擦った。


『そろそろだな…』

俺以外の人間の声だ!

「おぉう!声だ!」


手の上で回転していた団子が飛び跳ね、泥の中に落ちた。


俺は久々に聞いた人の声に心を踊らせ、涙が止まらない。

俺は1人じゃなかった!

感情が溢れ出てくる!


「うぉー!俺は1人じゃない!うぉー!」

『五月蝿い!』

精神に重圧を感じたが、関係ない!人だ!俺は人と話している!

「叱られた!うぉー!」


『黙れ!』

泥から水が染み出し、俺の首を絞める。

「ぐっ…ぐが!」

首に巻きつき、俺の身体を持ち上げる水は掴もうとしても掴めない…気を失いかけた時、水は飛散した。


「くっ…ハァハァ!…嬉しさのあまり我を失った…」

『目が覚めたようだな…泥に手を当て…動かしてみろ』


泥に手を当て、泥を動かして大量の団子を水面上に浮き立たせた。


「ああ…兄弟達が踊る…じゃない、いつのまに…」


俺はいつのまにか、泥を操作するすべを手に入れていた。


『では次のステップに移る…その団子達を回し続けろ…』


俺は数時間回したが、次第に回す速度が鈍くなってきた。

「くっ…ぐぐ!」

『止めるな!続けろ!』


くっ!意識が飛びそうだ!身体中にミチミチと異音が走る。

「ぐぁぉ!…血管が切れそうだ!」


俺は力尽きて泥の中に倒れた。


『そこが現状での魔力量の限界だな…そしてそれは魔力切れの状態だ…魔術士にとって戦闘では魔力切れは致命的だ…あと何回どのような操作をできるか、体調や精神状態によっても変わるが、自分の限界をある程度把握する必要がある…熟練していても最低1ヶ月に一度は魔力を使い切るのが望ましい…精神修行にもなるしな…』


疲れた…身体中が筋肉痛だ…

『次はな…』

彼女の話を聞きながら、俺はウトウトと途中で寝てしまった。


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