幻のギルドメンバー
「あー! 優臣兄ちゃんだ! それに恭也兄ちゃんもいる!」
「元気にしてたかな?」
「うん!」
走って駆け寄ってきた男の子をおんぶする。たこ焼きパーティーから一夜明け、俺は今、恭也とエクス、テオとともに孤児院にやって来ていた。
孤児院も祭りに出すための屋台の準備があるようで、俺と恭也は昨日エクスたちをはめた罰としてその手伝いに付き合うこととなったのだった。というか別に罰と言わずとも、普通に言ってくれたら手伝ったんだけどなぁ。
まぁとにかく、そんなわけで俺たちはここでそれぞれの作業をすることにした。
「へー、こんなところがあったんだ」
孤児院を出て裏に回り、歩いて五分もしないところに大きな畑が広がっていた。ちょくちょくこの孤児院にやって来てはいたが、裏の方までは行ってなかったのでここに来るのは今日が初めてだ
「そりゃ兄ちゃん、うちだってお金がないなら自分たちの食べる分はできるだけ自分たちで確保しないとな」
「そういうことだ。じゃあ優臣、やるぞ」
いつのまにか麦わら帽子をかぶっていたエクスに同じものを渡された俺は、子供たちと一緒に野菜の収穫などを開始したのだった。
☆
「今日はありがとうございました」
「気にしなくていいよ。それよりあんなに貰って良かったの?」
「もちろんです」
「そうか。じゃあ遠慮なく貰うね」
「はい。それではよければまたいらしてくださいね」
昼を少し過ぎたところで畑から孤児院に戻り、そして用意されていた昼食を食べた俺たちは孤児院をあとにした。どうやらエクスたちは、手伝うのは昼までと約束していたようなのだ。
「いやぁ、それにしても野菜いっぱい貰ったね」
「そうだね」
テオが言うように俺たちはとうもろこしにトマト、きゅうりになすなど様々な種類の野菜を貰った。収穫した量と比べれば確かに僅かなのかもしれないが、それでもかなりの量がある。
「これだけ多いとおすそ分け……そうだ! サチのところに持っていこうよ!」
「サチ?」
「うん。あっ、もしかして優臣はまだ会ったことがなかったっけ?」
「あー、そういや紹介するの忘れてたな」
テオたちの口ぶりからどうやら、そのサチという人物はエルピリアと深い関係にあるようだけど……
「サチはね、僕たちと同い年のギルドメンバーだよ」
「どこの?」
「もちろんエルピリアだよ」
「えっ? でもこれまでに何度かメンバー全員がギルドに集まることがあったけど、そのときはいなかったよね?」
実際にレオンもそのサチという人物をまるでいないもののように扱っていたはずだ。
「そうだな。まぁそれは実際に会ってみれば分かるだろ。どうだ、一緒に来るか」
「もちろん」
そのサチという人物には一度も挨拶がしたことがないし、なによりどんな人物なのか気になるのだから行かないという選択肢は存在しないだろう。
というわけで俺はテオたちとともに幻のギルメンであるサチのもとへ向かった。
「あれがサチの家だよ」
クリューンの街を出て、少し外れたところにある森に入ってしばらく歩いたところにそれはあった。 しかし――
「えっ……」
その光景を見て思わず驚きの声を上げた。
まず結界が家を囲むように展開されていた。こんなことをしている人は初めて見たが、まぁモンスターの侵入を防ぐためと考えれば理解できる。
俺が本当に驚かされたのは結界の内側は草などが生えているにもかかわらず、結界の外側は周囲数メートルにわたって植物が一切生えていなかったことだ。辺りにはこんなに木々が生い茂っているのに、だ。
家の周りだから草を綺麗に抜いているとかいう次元の話ではない。地面が乾いてひび割れており、言うなれば土地が死んでいる状態であった。
こんなことをするなんていったいどんな凶暴なやつが住んでるんだ?
「いるかな?」
テオが結界の外に設置されているチャイムを押して声をかけると結界がすぅっと消えた。どうやらいるようだ。
まっすぐ家に向かい、そしてドアをノックすると中からドアが開いてこの家の主が現れた。
「いらっしゃい」
予想に反して、出てきたのはぱっちりとした目で非常に可愛らしく、そして柔和な雰囲気のエルフの女の子だった。




