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たこ焼きパーティー

「ほら、できたのから持っていってくれ」


 出来上がったたこ焼きを皿に乗せ、レオンが持ってきたたこ焼き器に新しく生地を流し入れる。

 なぜたこ焼きを作っているのかと言えば、昨日の話し合いで俺たちが出す屋台がたこ焼きに決まったからだ。ただし俺たちはがっつり系、女子はデザート系と意見が分かれてしまったので屋台は別々で出すことになったのだが。

 ということで俺たちは俺の家で、メアたちはレオンの家でそれぞれ試作をしている。


「ほいほーい。お、綺麗に作ってるなぁ」


 ソファでくつろいでいた恭也が皿を取りに来る。


「だろ?」

「あぁ。そうだ、次は俺が作ってやるからあっちで皆と食べてろよ」

「えっ!?」


 まさか隙あらば楽をしようとする恭也がそんなことを言うなんて……明日にでも世界が崩壊するのではないだろうか?

 そもそもそこいつは驚くほどに料理ができなかったはずだ。それでもメアよりはましだが。


「できるの?」

「心配するなって」

「恭也がそこまで言うなら……」


 多少の不安はあるものの自信満々に言っていたので作るのは恭也に任せ、出来上がったものをレオンたちのところへ持っていくことにした。


「んあ? お前こっちに来たのか?」

「あぁ。恭也が任せろって言うから」


 俺のその言葉を聞いてレオンたちは驚きの表情を浮かべた。


「んなバカな!? あいつがそんなこと言うはずがないだろ!」

「そうだそうだ。幻聴でも聞いたのではないか?」

「優臣、大丈夫? 熱でもあるの?」


 やっぱりみんなもそんな風に思うよなぁ。


「いやぁ、俺もそう思ったんだけどね。でも間違いなくそう言ってたよ」

「一体あいつはなにを企んでるんだ……?」

「ただやってみたくなっただけなんじゃない? 知らないけど。それよりも冷める前に食べよう」

「それもそうだな。んじゃいただきまーす」

 



「おーい、できたぞ」


 ちょうど皿が空になったタイミングで出来上がったようなので、キッチンにいる恭也のところに皿を持って行く。


「どうだ? 意外と俺もやるだろ?」

「おぉー、恭也にしてはなかなか」


 少し形は歪だがこいつの料理の出来なさを考えるとこれは完璧と言っても大げさではないだろう。


「で、どうだったんだ? 美味しかったのか?」

「うん、美味しかったよ。恭也も食べてくれば?」

「いや、楽しくなってきたからもう少し作るわ」

「ふーん、了解」


 本当にどうしたんだこいつは? まぁ作ってくれるんなら俺は別にいいんだけど。

 それより少しお行儀は悪いが、今ここで出来立てを手でいただいて……


 ぱくっ!


「……」


 うん。出汁の効いたふわっふわの生地の中の、微かどころではなく主張の激しい甘みがウプッ!


「……、…………」


 これ中身チョコじゃねぇか!

 あまりのマズさに思わず振り返ったが、キッチンはドアの向こうなので恭也の姿を見ることはできない。

 あの野郎……! あいつに任せた俺がバカだったよ! もしかしてこれ全部中身チョコか!? くそっ、こんなもの今すぐに……いや、待てよ? 




「持ってきたよ」

「おぉ、待ってたぞ。少し戻ってくるの遅かったな」

「ごめんごめん。廊下で少し出来立てを食べてたからね。あっ、恭也が作ったのも美味しかったよ」

「おいおい、食い意地が張ってるな。じゃあ俺はこれを貰うか」

「吾輩はこれだな」

「僕はこれを」


 それぞれが無造作に並べられたソースのかかったたこ焼きを箸で取って口にする。それが地獄への片道切符だと知らずに。


「おぉ、ふわふわの生地に中身はたこ……じゃなくて舌に痛みを与える刺激的な辛ぁ!?」


 ん? 辛いということは中身は全部チョコというわけじゃないのか。


「なんだこれ!? めちゃくちゃ辛いんだが!」

「吾輩のは酸っぱいぞ!」

「僕のは苦いんだけど」

「おい優臣、これはどういうことだ!」

「いやぁ、俺のは中身がチョコだったんだよね」

「知ってたんならどうして返してこなかったんだよ!」

「いやいや、やっぱり仲間というのは苦楽を共にしてこそだと俺は思うんだよね」


 まぁただただ道連れにしたかっただけだが。


「クズが! こういうときに限ってポーカーフェイスするんじゃねぇよ!」

「酷いよ、優臣……」

「うっ、ごめん」


 テオに苦しそうな顔で責められてしまった。確かに残りの二人はともかくテオには悪いことをしたなぁ。


「で、これを作ったバカは?」

「またキッチンで作ってるんじゃないかな?」

「……そうか」


 それを聞いた三人が皿を持って立ち上がりキッチンへと向かって行った。あぁ、あいつ死んだな。


「……」

「ギャー!」


 しばらくすると恭也の叫び声がキッチンの方から響いてきた。まぁ自業自得だし仕方ないよな。あとでおそらく床に転がっているであろう恭也を回収しに行ってやるか。


「お帰りー」


 そしてレオンたちが笑みを浮かべて帰って来た。持っていった皿の上のたこ焼きが減っているからやはり恭也に無理やり食わせたのだろう。


「あぁ」


 レオンはそう返事をすると同時に、俺の後ろに回り込んで羽交い絞めにしてきた。


「えっ? なに!?」

「知ってたのに教えなかった奴も同罪だとは思わないか? さぁ、テオ。やっちまえ」

「はい優臣。あーん」


 テオが見た目が真っ赤なたこ焼きを箸でつかんで近づけてきた。えっ、何その見た目は? それ本当にたこ焼きなのか? 

 普段なら間違いなく喜んで受け入れただろう。しかし今はとてもそんな状況ではない。なぜなら俺は微塵もあのパンドラボックス(たこ焼き)の中身を知りたくないのだから。


「いらない! そんなもの今はいらな……んぐっ!」


 しかしそんな俺の願い(むな)しく口の中に放り込まれたたこ焼き。そしてまだ噛んでもいないのに舌に伝わってくる痛み。


「あ痛ー!?」


 こうしてたこ焼きパーティーは俺が床にのたうち回ったことで一時中断となり、俺と恭也が復活してから再開されたのだった。

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