スカウト
メアとフランヴィーレで活動を始めてから明日で二週間だ。俺たちがフランヴィーレで活動するのは二週間と約束していたので、もうこの期間は終了となる。
そんな俺たちはここでの最後の活動として、初めてここで護衛依頼を受けた時と同じメンバーとダンジョン探索することにしたのだ。
そして現在――
「ぐっ!」
「ナイスだよ、優臣!」
「任せて!」
俺たちはダンジョン五層目のボスに挑んでいた。俺たちの三倍近く大きい骸骨型のモンスターが振り下ろした大剣を、俺が正面に立って障壁で防ぐ。そしてその隙にリヴォルがモンスターの右足を、メアが左足を全力で攻撃するとバキン! という鈍いを音が広間に鳴り響いた。
どうやら上手く足を破壊することに成功したようで、ガシャンという音を立ててモンスターが顔面から前のめりに倒れた。奴はすぐに床に手をついて起き上がろうとしたが、その左手を今度はバイゼルが破壊し、これを阻止する。
「優臣君!」
「分かってる!」
アンデット系のモンスターに効果がある白の魔法、いわゆる聖属性を刀に纏わせてモンスターに向かって走り出す。
起き上がるのは間に合わないと判断したのだろう。モンスターは上体を斜めに傾けたまま大剣を高く掲げ、振り下ろす動作に入った。
しかし
「やらせないわ!」
ナーシャとローズの魔法による援護で大剣は弾き飛ばされ、攻撃は不発に終わる。
「うおぉぉぉおお!」
さらに魔力で身体強化をし、床を勢いよく踏み込んで跳び上がり首を斬りつけた。
「……!」
首と胴体を切り離されたモンスターはピタリと動きを止め、骨にひびを入れながらガラガラと体を崩壊させていった。俺たちの勝利だ。
「お疲れ」
「うん」
戦闘が終わり、近づいてきたメアと軽くハイタッチをする。
「優臣君、凄かったよ!」
「ローズも援護助かったよ」
「みんなお疲れ」
骸骨から魔石を取り出したリヴォルとバイゼルも集まりお互いに称えあう。
「今のはなかなか良いチームワークだったんじゃないかな」
「だよね? 私もそう思ってたんだ!」
「みんな上手くサポートしあえていたからね。それじゃあ今日はここで引き上げて、明日六階層を少し探索してから地上に戻ろうか」
「りょーかい」
こうしてリヴォルの提案にしたがって俺たちは六階層に下り、宿をとってから街をぶらぶらと回ったりしたのだった。
☆
「二人とも、ちょっと良いかな?」
五階層のボスを攻略した翌日、六階層を少し探索した後に地上に戻ってそこでパーティー解散となったのだが、すぐにリヴォルが俺とメアに声をかけてきた。
「ごめん、今からレオンのところに報告しに行くんだ。だから――」
「それならちょうど良かった。僕もレオンを交えて話をしたかったからね」
「それなら良いけど。じゃあ行こうか」
「それでコイツが一緒にいると」
「あはは、どうしてレオンは僕に対してそんなに辛辣なのかな?」
共に来たリヴォルを見て顔をしかめるレオン。二人とも相変わらずだなぁ。
「で、話はなんだ?」
「あぁ、そうだね。話というのは優臣をスカウトしに来たんだ」
「またか。前にもこいつはやらないと言っただろう」
「そうなんだけどね、彼を見たらどうしても欲しくなったんだ。彼は間違いなく強くなるからね」
「いいからさっさと帰れ帰れ」
「まぁそう言わずにしっかりと話し合おうよ。……ところでここに楽園の限定ケーキを買えるチケットがあるんだけど」
「やれやれ、俺が仲間を売ると思うなよ」
リヴォルが懐からスッと楽園のチケットを出したがまったく相手にしないレオン。流石は俺らのギルマスだ、もちろん仲間を売るはずがない――
「あっ、他にもテーマパークのパレードをレストランの特等席から見れるチケットがあるんだった」
「じゃあな優臣。お前と過ごした時間は忘れないからな」
「……えっ?」
俺に向かって手をひらひらと振るレオン。
「冗談だって、冗談。そんなゴミを見るような目をするな。そもそも俺が許しても他に許さないやつがいるっぽいからな」
そう言ってレオンは俺の隣のメアを見た。
「そうよ、悪いけど優臣は私のパートナーなの。だからあなたにはあげられないわ」
「……、……そうかい、それは残念だね。優臣が欲しかったのだけどそんな目で見られたらエルピリア……というより君から優臣を奪うわけにはいかないね。うん、この話はもう二度としないと誓うよ」
「そう」
「それで話は終わりか?」
「うん。それじゃあ僕はここでお邪魔させてもらうよ。優臣、こんな話を持ちかけて悪かったね」
俺に頭を下げて謝罪し、リヴォルは申し訳なさそうに部屋を出ていった。
「やれやれ、あいつも懲りないやつだな」
「レオンも人のことは言えないと思うけど!? すぐ物で釣られそうになってさぁ!」
「なっ!? 仕方ないだろ、サラたちが見たがってたんだからよ! それに俺が許可してもどうせメアが許さなかったぞ」
「そう言えばリヴォルが『そんな目』って言ってたけど、どんな目だったの? 俺からは見えなかったけど」
「ん? そりゃあ大せ……」
「レオン」
「おっと、なんでもない」
レオンが教えてくれようとしていたがメアの呼びかけで言うのを止めてしまった。気になる! いったいどんな目をしていたんだ!?
「それで今日でフランヴィーレでの活動は終わりだがどうだった? 何か収穫はあったか?」
「もちろん」
「私もよ」
「そうか、それは良かった」
満足そうにレオンは頷いた。
「それじゃあ明日から再びここで活動することになるがよろしくな。優臣、メア」
「あぁ」
「えぇ」




