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怪盗ゴーストⅡ

「まさ……おき……」


 誰かが俺を呼んでいる。だけど今は眠いんだ、だからもう少し――


「優臣、起きなさい!」

「あいたっ!?」

「やっと起きたわね」


 右頬に痛みを感じて跳ね起きると目の前に不機嫌そうな顔をしたメアがいた。


「あれ? どうして俺は寝て……って、あっ!」


 そうだ、俺は油断した一瞬をつかれてあいつに……あの野郎!


「ということは依頼は」

「失敗よ。こっちはあと一歩のところまで追いつめたのだけど、もう片方が来て逃げられたわ」

「うっ、ごめん」

「別に怒ってないわよ。そもそも屋敷の警備があんなにあっさりと突破されてるんだから、向こうも強くは言えないでしょ。さぁ、報告に行きましょ」


 少しだるさの残る体を、地面に手をついて起こして立ち上がるとカサッとした感触が手の中にあった。確認すればいつのまにか一枚の紙を握っている。


「なにそれ?」

「これは多分……」


 折りたたまれた紙の中身を確認すると、正体について他言無用であることや次に会う日時が書かれてあった。


「あぁ、やっぱりね」

「何がやっぱりなの?」

「それは帰ってから話すよ。先に屋敷に戻ろう」

「むぅ、とても気になるのだけど……分かったわ」


 メアは残念そうな表情を見せたもののすぐに納得して、一先ず屋敷へと共に報告へと戻ったのだった。



           ☆           



 そして翌日、朝九時に俺たちはエルピリアのギルマスの部屋へとやって来た。


「だからお前らはなんで毎回ここに集まってんだ!」

「まぁいいではないか」

「よくねぇよ!」

「……そういえばレオン、一昨日綺麗な女性とランチしていたよな?」

「あぁ、世話になっている店の主人か。それがどうした?」

「そうか、リアに言ったらどうなる――」

「気兼ねなくこの部屋を使ってくれ。あっ、何か飲み物もいるか?」


 部屋に集まった俺たちにレオンが文句を言っていたがエクスの脅迫、もとい交渉によってこの部屋を使うことを快く承諾してくれた。なんて話のわかる男なのだろう。


「さて、レオンもこう言っていることだしな……それで吾輩がお前たちを呼び出した理由だが……もうバレてるんだろ?」

「当然だ、エクス。いや、怪盗ゴースト」

「ははは、正解だ。俺がゴーストだ」

「そして私がキャットよ」


 エクスとミーナの雰囲気が普段とはガラリと変わった。

 やはり俺の予想通りエクスが怪盗ゴーストだったようだ。そしてミーナがゴーストと時々行動する怪盗キャットだったらしい。


「それにしても――」

「んあ? 優臣たちにまだ伝えてなかったのか?」


 エクスが何かを言おうとしていたが、レオンが間抜けな声を上げてエクスに聞いた。って、やっぱりこいつはゴーストのことを知っていたのか。だから掲示板にもゴーストに関する依頼書が貼りだされてなかったのだろう。


「吾輩も言ったと思ってたがどうやら忘れてたようなのだ」

「おいおい、しっかりしてくれよ」

「仕方ないだろう。優臣たちが入って来たときは吾輩も忙しかったのだから。それで優臣に聞くが何故ゴーストが俺だと分かった? こんな風にゴーストのときは『俺』を使っているし、声も昨日は仮面の効果で違っていたはずだが?」


 なるほど、エクスがさっき言いかけたことはこれだったのか。確かに正体を隠しているのにばれてしまったのだから、その原因を知っておきたいだろう。


「きっかけは戦い方かなぁ」

「戦い方だと?」

「うん。こっちの攻撃が全く当たらない、まるで煙に攻撃をしているような感覚がたまにエクスとする模擬戦と似ていたからだね」

「んなバカな……吾輩はそういうところは特に気を付けているのだぞ」

「でも実際にきっかけはそうだからなぁ。そこからエクスと呟いたら隙を見せたことでもしかしてと思い、小さな女の子がいると言ったらすぐに反応したところで確信したよ」

「エクス、お前……」

「おい、そんなゴミを見るような目で吾輩を見るな! 仕方ないだろう、そんなことを言われたら誰もが反応してしまうだろう!?」

「戦いの最中にすら反応するのはお前ぐらいだろうよ」

「そんなはずは……」

「事実だ、認めろ。それにしても優臣は戦い方で気付いたのか……俺もエクスは普段の癖とかを上手く隠しているように思ってたんだが……」

「そうだよな?」

「優臣の感覚が鋭かっただけかもしれないが、それでもばれたんだ。修正しとけよ」

「ぐぬぬ……」


 かなり自信があったのか、とても悔しそうな顔をしているエクス。


「それで優臣とメアはどうする? こいつらを警察にでも突き出すか?」

「えっ、その気は全然なかったけど?」

「私もないわね」

「うん? そうなのか?」

「ただの泥棒ならすぐにでも突き出してたけど義賊なんだろ?」

「そうだな。でも間違いなく犯罪だぞ?」

「分かってるさ。でも……あぁ、もう! こういうのは理屈じゃないんだよ! とにかく毒を食らわば皿までだ。墓場までもっていってやるよ」

「だってよ、エクス」

「すまない」

「でもリアについてはどうするのさ? この国の王女だろ」

「あぁ、あいつは当然知ってるぞ」

「えぇ……」


 まさかのこの国の王女もこの事実を知っていたのかよ。


「ほら、話はもう終わっただろ? それなら出ていけ」

「吾輩の方はそうだな。優臣たちはどうだ?」

「いや、こっちも聞きたいことはないかな」

「そうか、それじゃあここで解散するか。またな」

「そうだね。またね」


 こうして新たに怪盗ゴーストの秘密を知った俺たちはそのことを胸に秘め、何事もなかったかのように今日もフランヴィーレへと向かったのだった。

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