汚名返上
「メア!」
ウルファルドの首を貫いて、力が抜けたかのように落下してきたメアを走って受け止める。
「あら、ありがとう」
「大丈夫!?」
「えぇ、大丈夫よ。でも少し動けそうにないわね」
「二人とも大丈夫かい? って、わぉ」
リヴォルとバイゼルが俺たちを心配して近づいてきたが、そこでなぜか驚きの声をあげた。
「お姫様抱っことはなかなかやるね、優臣」
「うん?」
リヴォルに言われて初めてその体勢になっていることに気付いた。焦っていたからそこまで気にする余裕がなかったのだ。
「~~~~っ! 優臣、もう歩けるから下ろして良いわよ!」
「えっ、でも動けないって――」
「大丈夫だから!」
声にならない声を上げ、そして急に下ろしてというメア。どうしたのだろうか? あっ、もしかしてこっちにいるときはお姫様扱いされるのを嫌っていたからお姫様抱っこされるのが嫌だったのかな?
メアはもぞもぞと俺の腕の中で動いて立ち上がった。しかし自分で言った通りやはり動けないようで、地面にへたっ……っと座り込んでしまった。
「ほら、やっぱり駄目じゃないか」
「うるさいわね!」
「やれやれ、じゃあこっちなら良い?」
メアの前で背中を向けてしゃがむ。お姫様抱っこが嫌となるとメアにとっては少し恥ずかしいかもしれないがおんぶしかないだろう。
「どっちも嫌よ!」
「それじゃあどうしろと!?」
「悪いけどこれだけ大きな音を立てたとなると他のモンスターが寄ってくるかもしれないからここから離れたいんだ。だから恥ずかしがらないでどっちかにしてくれると助かるな」
ウルファルドをマジックボックスにしまい、そしてギルドへ無事討伐したことを連絡したリヴォルがメアを説得する。
「う~~~~! じゃあおんぶ! おんぶで良いわよ!」
「うん、ありがとね」
不満そうな声を上げてメアは俺に身体を預けた。
「じゃあザラスさんたちのところへ向かってすぐに出発しようか」
こうしてウルファルドの変異種に勝利を収めた俺たちは、地面に抉られた跡がいくつも残った場所をあとにしたのだった。
☆
「いやー、みなさん助かりましたよ!」
手綱を握っているザラスが振り返って、休んでいる俺たちに感謝の言葉を口にした。
「いえ、ご無事で良かったです。それよりこんな体勢ですみません」
「リヴォルさん、なにをおっしゃるんですか。あんなモンスター相手に戦ったのです。今はしっかり休んでいてください」
「ありがとうございます」
「ところでよろしければどのように戦ったのか聞かせてもらえませんかね?」
「いいですよ。それじゃあまずは……」
「なんと、エルピリアのお二人が!」
「えぇ、この二人がいなかったら正直ただでは済まなかったと思います」
「リヴォルさんがそこまでおっしゃるとは……!」
リヴォルから話を最後まで聞いたザラスが驚いた顔をして俺とメアを見てきた。
「そうだ、優臣。君のあの魔力量はいったいなんなんだい?」
「確かに私も気になるわ。私たちを覆い尽くして、さらに守りきるほどの障壁を展開するって考えられないほど多い量よね」
「それは……あー、確かに魔力の量は多いよ」
レオンにあまり言いふらすなとは言われてるから詳しくは言わないけど。
「そうなんだ……良いなぁ、私も君の魔力量ぐらいあったらなぁ」
「いやぁ……多くても良いことばかりじゃないよ。俺も多すぎてコントロールできなくなったからね」
「そういえば前に合同で試合をしたあのときに言ってたね……ってことは克服できたのかな?」
「今はまだ道具ありきだけどなんとかね。これで自爆することもなくなったはずさ」
「あの時の自爆は魔力が多すぎるが故のものだったんだね。どうりであんなに派手に暴発するはずさ」
「あはは……」
「でもでも! そんなにある魔力をもってて、さらに押さえきれるなんてすごいよ!」
「うんうん、ローズの言うとおりだよ」
いやぁ、そんなに誉められるなんてなんか照れるなぁ。
「そしてメアさんは素晴らしい槍とそれを扱う技術でしたかな」
「えぇ、あそこまで槍を上手く扱える人を僕は初めて見ましたよ」
「まるで踊っているみたいだったよね」
「そんなにですか! くぅ~! 私も見てみたいものです。メアさん、よろしければ――」
「嫌よ」
「そうですか……」
露骨に残念そうな顔をするザラス。そんなに見たかったのか……
「まぁいずれ見れる機会はあるでしょうし、その時までの楽しみにしておきますかな」
ウルファルドの変異種と戦った後は小さな戦いもなく目的地へと到着した。
そしてその翌日、そこで商いをしたザラスを再び護衛して無事クリューンに戻ったことで、この依頼は達成となったのだった。




