変異種:ウルファルド
ザシュッ!
「くぅうう!」
リヴォルが警告すると同時に、大量の魔力に任せてみんなを包み込むように大きな障壁を展開させた。その直後に障壁に凄まじい衝撃が走り、そして魔力をごっそりと障壁の修復に奪われた。
どうやらあの魔物の変異種が斬擊を飛ばしたようだ。目の前の地面に5本の爪痕が深々と入って地面を抉っている。
「優臣!」
こちらを心配したメアが、自分の展開した障壁を解除して近寄ってくる。
「なんだ、この大きさは…」
近くにいたリヴォルが困惑と驚きが混じった声を上げている。そっちを見ればどうやらリヴォルだけは障壁の展開が間に合ったようで、俺の障壁の中にはいなかった。
「みんな大丈夫!?」
「あ、あぁ! これは優臣が展開しているのかい?」
「そうだよ」
「そうなんだ……まだ展開し続けられるかい?」
「1分ももたないけどそれでいいなら」
普段ならもっと維持し続けられるが、大きく展開し過ぎたため魔力のコントロールがままならず、小さくすることすらできない。
よって展開し続けるなら今の大きさでするしかないのだが、さすがにこの大きさとなると俺の魔力もはっきりと感覚することができるほどに減り続けている。
このあとすぐに起こるであろう戦闘のことを考えて、魔力をある程度残しておくならばこれが限界だ。
「分かった。みんな、聞いてくれるかな」
「それじゃいくよ!」
リヴォルの合図で障壁に過剰に魔力を流して破裂させ、攻撃してきていたウルファルドを弾き返す。そしてさっきまで前衛を務めていた俺たちは攻撃を、後衛の二人はザラスのもとへと走って行った。
リヴォルは主に後衛の二人に指示を出したのだが、その指示とは――
「ナーシャとローズはザラスさんを安全なところまで連れてそこで待機。そしてすぐにギルドに連絡して」
であった。
「ナーシャ、もし君の耳で戦闘音が聞こえなくなったら、こちらを確認することなくすぐに逃げるんだ」
この指示に後衛の二人は不満そうな顔をしたが、リヴォルの毅然とした態度を見て納得したのかすぐに頷いた。
こうした短いやり取りがあって行動に出たわけだが……
「なんだこいつ、めちゃくちゃ硬いんだけど!」
数度、ウルファルドの足を斬りつけているが全て硬い毛によって弾かれている。他のみんなもどうやらこれに苦戦しているようだ。
「それならこれはどうだ!」
刃が通らないならばと魔法に切り替える。しかし
「あぁ!?」
ギリギリだが素早い動きで全てかわされてしまった。この距離で避けられててしまうとなると魔法は使い物にならないだろう。
「どうしたら良いんだい!?」
俺と同じようにこいつへの有効な攻撃手段がなくなったのか、攻撃を避けながらバイゼルが声を上げた。
「赤の魔法が使えるなら炎を武器に纏わせて毛を焼き切るんだ!」
リヴォルの指示に従い、炎を刀に纏わせて斬りつけた。すると僅かに刃が通って毛を刈り取ることが出来たのだが……
しかしこの素早く動き回る中で同じ場所を狙うことは難しく、これをこのまま繰り返していたらやられるのは間違いなく俺たちが先になるだろう。
「くっ……!」
それが分かっているからだろう、リヴォルが少し苦々しそうな顔をしている。
「こいつの弱点はどこなの!」
「普通のウルファルドと同じなら毛の薄い腹、首、顔なんだ。でも……!」
「でも」の先の言葉は聞かなくても分かる。無理なのだ。
ただ大きいだけなら問題はない。高い場所に攻撃を当てる方法はいくつもあるのだから。また、速いだけも同じだ。相手の動きにタイミングを合わせればいい。
しかし大きく、且つ速いとなると一気に厳しくなる。高い位置へ攻撃しようとしても素早い動きで弱点に届くまでに避けられてしまうのだ。
これはかなりマズイ状況なのでは?
「……はぁ、やるしかないわね」
「メア?」
「リヴォル、バイゼル。二人だけで少しの間、時間稼ぎできるかしら?」
「どうしたんのかな?」
「策があるわ」
「……分かった、今はそれにかけよう。でもできるだけ早くしてくれると嬉しいかな」
「当然よ、それじゃお願いね。優臣、私に大量の魔力をちょうだい」
手に持っていた槍を仕舞ったメアは二人に魔物の注意を引きつけるようにお願いし、そして俺には魔力の供給を求めてきた。
「分かった!」
「前は発動しただけで魔力不足で立てなくなっていたけど……優臣がいる今なら! 出番よ! 『メティオラ』!」




