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変態の権化

 自分と同じ十八歳で社長をやっていると言われて、その言葉をまったく疑わずに信じられる人が何人いるだろうか? おそらく信じられないという人が多数派であろう。

 つまり何が言いたいかというと、レオンにドヤ顔で「俺がギルドマスターだ」と断言されても信じられないということである。


「あーあ、レオンがくだらないことをするから優臣が固まったじゃねえか」

「おかしいな、楽しめると思ったんだが。なあ、優臣?」

「えっ、ああ、うん」


 あっ、話を聞いてなくて適当に返事をしてしまった。


「だよな! ……さてと、悪ふざけはこの辺にして。優臣、魔報を出せ」

「魔報? なんだっけそれ?」

「さっきオレが渡しただろ、あれが魔報だよ」

「ああ、これ」


 あいから教えられてポケットから取り出した魔報をレオンに渡す。するとレオンは引き出しから何かを取り出しそれを魔報へと押し付けた。


「ほらよ」


 返された魔報を見ると、大きく翼を広げたトリとドラゴンが向かい合って重なっている模様が追加されていた。


「それがエルピリアの紋章だ。さて、早速だが連絡できるようにしとくか」

「オレもオレもー」


 魔報に魔力を流しつつ、レオンとあいのそれぞれの魔報とカチンとあわせる。これでもう連絡できるようだ。確認してみるとレオンとあいの名前が浮かび上がった。

 因みにだがこれは自分と自分が許可した人しか見れないようになっているそうである。


「さてと。優臣、今からお前はエルピリアの仲間だ。これから大変だろうがこのギルドには頼れるやつらがたくさんいる。だから俺たちを頼れ」


 レオンはまっすぐ俺の目を見てそう言った。……ここまで他人を頼もしく思ったのは初めてかもしれないな。


「ああ」

「さて、今からは俺が案内するぞ。まずは恭也のところかな」



           ☆



 一階に下りるとギルドが少し慌ただしいように感じた。何かあったのだろうか?




「それで結局、恭也って人は薬が大好きなの?」


 レオンによると恭也は多分地下室にいるだろうということで、地下室へと続く階段を下りながら気になっていたことを聞いてみる。

 さっきまで一緒にいたあいは何やら用事があるとかで今はいない。


「確かに間違ってはないが正確には作るのが大好きだな」


 どうやら危ないやつではないらしい。それを聞いて安心した――


「いや、使うのも好きだったな」


 前言撤回、やっぱり危ないやつらしい。


「そんな嫌そうな顔するなって、安心しな。自分の欲に忠実だがおもしろいやつだぞ」


 果たしてそれを聞いて安心するやつがどこにいるのだろうか。


「ん? ここの扉が開けっ放しになってるな。少し中に誰かいないか見るから先に行っててくれ。そこを右に曲がって二つ目の扉だから」


 正直一人で行きたくないんだけどなぁ、仕方ないか。


「分かったよ」




「それで、この扉か」


 あまり入りたいとは思えないが同じ異人ということで、できれば仲良くしたいという気持ちもある。覚悟を決めるか。


「すいませーん、今日新しくこのギルドに入った――」

「くそっ、また失敗したかっ!!」

「!?」


 扉を開けると眼鏡をかけた男が女物の服を着て叫んでいたため思わず扉を閉めてしまった。

 ……今のあれはどういう状況だったのだろうか? まさか中にいた男が恭也なのだろうか?




「ん? 優臣、まだ入ってなかったのか」

「ああ……なぁ、レオン。この世界というか国には男が女物の服を着る文化でもあるのかな?」

「そんな文化はないぞ、このギルド内でテオ以外のやつがしていたらそいつは変態だ」


 なるほど、どうやら中にいる男は変態らしい。


「さっさと中に入るぞ」


 レオンに続いて入ると先程の男は、上は男物に、下はスカートを履いたままだった。どうやら着替えの途中だったらしい。


「あれ、レオンじゃねえか。一年ぶりぐらいか?」

「久しぶりだな変態」

「は? 俺のどこが変態なんだよ。はっ倒すぞ?」

「お前鏡を見てもう一度同じことが言えるのか? 恭也」


 やはりこの男が異人にして変態、そして薬が大好きな恭也らしい。見た目は普通の男に見えるんだけどなぁ。


「それでそっちの男は? 被験た……じゃなくて協力者か?」

「こいつはお前と同じ異人の優臣で今日から仲間だ」

「ああ、そいつが。俺は吾妻恭也だ、よろしく」


お互いに自己紹介したところでレオンが俺も気になっていたことを尋ねた。


「ところでお前はそんな恰好で何をしてたんだ?」

「そりゃお前、女になるための薬を作ってたんだよ。失敗したけど」

「またバカなことをやってんなぁ」

「いやいや! エクスが活動を楽にするために欲しいって――」

「本当は?」

「本当だから! まぁ面白そうだからって気持ちも九割ほどあるけど。せっかく異世界にいるんだ、楽しまないと損だろ」


 見た目じゃ人は判断したらいけないな、うん。


「で、レオンたちは何しに来たんだ?」

「近い歳で行動することが多いからとりあえず紹介かな。ところでエクスはいないのか、あいつもここにいると思ったんだが? ついに捕まったか? それとも刺されたか?」

「あいつは仕事で少し前から時々しか顔を出してないぞ」

「また大きいことをやってるのか……しかしそうなると時間が少し余ったな。テオはまだいないし女性メンバーはサラと旅行に行ってるし」

「それなら新しい方の訓練所に行けばいいんじゃないか? 最近面白いものが入ったって聞いてるだろ? やっぱり男ならドラゴンを見てみたいだろうし」

「なるほどそうするか」




 ということで次は訓練所にやってきたわけだが、今は誰もいないようである。


「この装置は結界を張って特殊な空間を作り出すことができる。その空間ではドラゴンなどを立体的に映しだして、まるで実体を持っているかのように戦うことが出来る。攻撃を受けても身体は傷つかないが痛みはある……とのことらしい。俺が修行に出ている間に入ったものだから、俺もよく分かってないんだよな。とりあえず優臣はそこの装置の下に立ってくれ」


 言われたとおりに装置の下に立つ。訓練所というから汚れているかと思ったがそこまででもない。ここは新しくできた方らしいから古い方は汚れているのかな?


「俺がドラゴンとやるから優臣はそれを観戦しててくれ。一緒にやることもできるらしいが、じっくり見る前に優臣やられそうだし」

「わかった」

「さて、どうやって設定するんだ?まずはドラゴンの種類から決めて……」


 ドラゴンかぁ、映像とはいえ実在するドラゴンを見れるとは嬉しいなぁ。どんな色なんだろ、どのぐらいの大きさかな?

 と考えてると体の周りが光りだした。ついにドラゴンが見れるのかな?


「あっ、ミスった。優臣、今すぐそこから離れ」

「えっ」




「マズイな……優臣だけ行ってしまったか。とりあえず優臣と連絡をとってみるか」



           ☆           



 目を開けると場所が変わっていた。それより


「レオンが何か言いかけてたけど何を言おうとしてたんだろう。あれ、そういえばレオンがいないな」


 すると魔報にレオンから連絡がはいった。


「すまない優臣、失敗した! 詳しくは省くが俺はそっちに行くことが出来ず、お前はこれから一人でドラゴンと戦わなければならない」

「えっ、ちょっと待って。俺どうすればいいの!?」

「今、俺から言えることはこれだけだ、後は任せろ」


 そう言ってレオンは魔報を切った。任せろって何を任せるんだよ! あっ、なんか目の前に出現してきてるし!


 少しずつ鮮明になり完全に姿を現したそれは、本や映画などで見てきたドラゴンそのままだった。現れたよ、ドラゴンが! なんか大きい咆哮してるし!


「くそったれ! いいよ、やってやろうじゃねぇか! 人間死ぬ気でやればなんとかなるんだよ!」

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