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護衛依頼

「平和だなぁ」

「そうねぇ」


 パーティメンバーに自己紹介を済ませ、そして依頼主に軽く挨拶をした俺たちは今、馬車の荷台に乗って揺られながら道を進んでいる。


「二人とも、もう少し緊張感というものをね……」

「ははは、まぁ余裕があって良いことではないですか」


 少し気を緩めていた俺とメアをリヴォルが注意し、それを聞いて依頼主の男、ザラスが笑った。


「ところでお二人は初めて見ますが、もしかして新しくフランヴィーレに入られた人たちですかな?」


 ザラスが振り返って聞いてくる。リヴォルたちといるからどうやら勘違いされたようだ。


「いえ、俺たちはエルピリア所属です」

「今はフランヴィーレで少しの間、依頼を受けているだけよ」

「なんと! ()()エルピリアですか!?」


 エルピリアの人間だと答えるとザラスは大きく驚いた声をあげた。何をそんなに驚いているのだろうか? というか()()ってなんだ、あのって。それは良い意味なのか? それとも悪い意味なのか?


「今年はエルピリアが例年と比べて多くの人材を獲得したと聞いていましたが、それがまさかお二人だとは……」

「そんなに驚くことなのかしら?」

「それはもちろんですよ!」


 ふーん、エルピリアに所属するというのは俺が思っていた以上にすごいことだったようだ。


「ところでお二人はこの方をご存知ですか? なんでも噂によれば魔法が苦手で派手に自爆する人がエルピリアに入ったらしいのですが……」

「……」


 ご存知もなにも、それはもしかして……


「あぁ、優臣のことね」

「えっ! そうなのですか!?」

「……はい」


 本当にその話が広まっているのかよ!


「なるほど」


 そして何を納得したようにこのおっさんは頷いているんだ?


「メアさんは一目でその強さが分かったのですが……そういうことだったんですね」

「ちょっと待ってください。もしかして俺をエルピリアの変人のくくりの方に入れようとしてませんか?」

「ははは、まさかそんな」


 なんてことをしてくれてるんだ、このおっさんは!


「! みんな、静かに」


 唐突に周囲を警戒していたナーシャが静かに声をあげた。犬の獣人であるナーシャは、ここにいる俺たちよりの誰よりも耳が良いので警戒を任せていたのだ。任せるとは言っても当然、俺たちも警戒をしているのだが。


「前からモンスターが来てるわ。種類は……駄目ね、数が多くてよく分からないわ」


 犬耳をピクピクさせながら詳しい情報を得ようとしていたようだが無理だったらしい。


「みんな、いくよ!」


 リヴォルの指示で荷台から降りて馬車の前に立つ。


「あれか」


 正面を見ればこの先にある森を抜けてきたモンスターたちがすごい勢いで迫って来ていた。ゴブリン、オーク、その他にも様々な種類のモンスターがいて、まるで小さな図鑑がそのまま現実に現れたような感じだ。

 それにしてもなんだか――


「なんか様子がおかしくない?」

「そうだね、みんな気を付けて!」




「そらぁ!」

「そこよ!」


 正面に来た狼型のモンスターを俺とメアでそれぞれ対処する。俺、メア、バイゼル、リヴォルの四人で前衛、ナーシャともう一人のパーティメンバーの女の子、ローズは後衛兼俺たちの横を抜けて馬車に近づいたモンスターの討伐という役割で防衛を開始したのだが――


「やっぱりおかしいわよ」


 メアも感じているのだろう、違和感を口にした。


「そうだね、あれだけの数がいたにも関わらず僕たちが倒したモンスターは十数体……」


 リヴォルが言うようにモンスターはもっといた。しかもそれらが数回の波に分けてこちらにやって来たのだ。しかしほとんどが俺たちを襲うことはせず、それどころか大きく避けて通り過ぎていったのだ。

 俺たちなんて眼中になく、それどころかまるで背後から迫ってくる恐ろしい何かから必死に逃げているような、そんな動きだった。


「気を付けて! 何か来るわ!」


 辺りにモンスターがいなくなったことを確認してやってきたナーシャが注意を促してきた。それと同時に少し離れたところにある森の木が何本も大きな音を立てながら倒れ、そして


「ゥオォォォォン!」

「は?」


 狼型のモンスターが雄叫びを上げながら姿を現した。


「ちょっと、何よあれ!?」


 その姿を見て思わず困惑の声をあげてしまう。なぜならそれは俺が知っている大きさのものではなかったからだ。あの高さは三メートル……いや、四メートルはあるのではないだろうか?


「ウルファルドの変異種か! みんな、すぐに撤退の準備を!」


 リヴォルが即座に撤退の指示を出すが、どうやら間に合わなかったみたいだ。こちらを認識したモンスターは再び大きな雄たけびをあげると、かなりの速さで走ってきて一気に俺たちとの距離を詰めてきた。そして直接届かないのにも関わらず、少し離れた位置から右前脚を高く上げた。

 これはまずい気がする!


「みんな、障壁を――!」


 ザシュッ!

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