バカンス最終日
「おはよう」
「あぁ、おはよう」
食堂で朝食を食べているとレオンがやって来た。
「今日が最終日だね」
「あぁ、短かったな」
この三日間は本当に短かった。またこうして皆と来たいものだ。しかしそれにしても……
「ふわーあ……」
今日は一段と眠いなぁ。
「どうした? 欠伸なんかして今日は眠そうだな」
「ん? あぁ、ちょっと眠れなくてね」
「そうか……今日は最後まで遊びつくそうと思ってたら寝られなかったとかか?」
「あー……そんなところかな」
「マジかよ!? お前は子供か? はっはっは!」
「あっはっは」
何言ってんだこいつ、そんなわけないだろ。こいつは俺をそんなに子供だと思っているのだろうか?
寝られなかったから眠いというのは当たっているが原因が違う。原因は当然、昨夜……というより今夜のあの出来事が頭から離れなかったからだ。
「おっ、メア。おはようさん」
「おはよう」
どうやらその当事者がやって来たようだ。少し気まずいところもあるが、挨拶しないというのもおかしいだろう。
「お、おはよう」
「……おはよう」
あー……やっぱりまだ怒ってそうだなぁ。
「おい、何をやらかしたんだ?」
メアが食堂を通り過ぎるとレオンが聞いてきた。
「……えっ、なんのこと?」
「おいおい、誤魔化そうとしたって無駄だぜ」
くっ! そのままスルーしてればいいものを!
「これは……あー……俺が悪いんだけどね。詳しくは何も聞かないでくれ、頼む」
「ほーん。面白そうだがそこまで言うなら仕方ない。聞かないでおいてやるか」
「助かるよ」
残念そうな顔をするレオン。こいつは本当に……!
「さて、昼過ぎにはここを出るし片付けでも始めるか」
「そうだね」
忘れ物がないように、しっかりと確認しておかないとね。
☆
「美味しいー!」
「これ楽しいわね」
掃除などを終え、帰る準備が整った俺たちはこのバカンスでの最後の食事、流しそうめんを食べている。普通に食べても美味しいが、流すとさらに美味しく感じるのはなぜなのだろう?
これを三グループに分かれて行っているのだが……
「おい恭也、こっちに流れて来ないじゃねぇか!」
「そういう日もあるさ」
「あ゛?」
和やかな隣のレーンとは打って変ってこっち側では言い争いが起こっている。いつものことなので気にする必要はまったくないが。
お、このミニトマト甘くて美味しいな。ここで採ったものだろうか?
「ほら二人とも。恭也、そういうのは良くないと思うよ? レオンもまだあるんだから落ち着いて?」
「「へーい」」
テオに注意されて大人しく引き下がる二人。相変わらずテオの言うことは素直に従うよなぁ。そうなる気持ち、分からなくもないが。
まぁそれはともかくこの二人が大人しくなったことで、やっとここも落ち着いて楽しめそうだな。
☆
「お兄ちゃん、楽しかったね!」
「それは良かった。向こうに着いたらリアにしっかりお礼を言わないとね」
「うん!」
帰りの馬車の中でアリスがはしゃいでいる。よっぽど今回のバカンスが楽しかったようだ。
「またみんなでどこかに行きたいなぁ……」
そんな言葉をアリスがポツリと零した。これまでクリューンの中でしか過ごしてこなかったから、この子にとってこれが初めての冒険とも言えるものだったのだろう。それが終わってしまって少し寂しくなっているみたいだ。
「うん、俺もそう思うよ」
「お兄ちゃんも?」
「もちろんさ」
「一緒だね、えへへ」
再びこのメンバーで、とはいかなくとも一緒に過ごすメアたちとどこかに行くことができるように依頼を頑張ってこなしていこうと俺は心に決めたのだった。




