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メアの秘密

「……」


 枕元においておいた小型の目覚ましの振動で目を覚ます。鳴らないようにしていたので音は出ていない。なぜそうしているかというと


「すー……すー……」

「うっへっへ……」


 周りでレオンたちが寝ているように、今は夜中だからだ。窓からは赤い光が差し込んできている。どうやら今日が月に一度、月が紅く染まる日だったようだ。


「よっと」


 素早く着替えてこっそりと部屋を出る。そして月明りで明るい廊下を歩いて別荘の外へと出た。そして玄関で警備している人に断りを入れ、俺はある場所へと向かった。その場所とは


「よし、着いた」


 昼間にレオンたちとやってきた洞窟だ。なぜこんなところにやってきたのかと言えば、中にある湖に月明りが差し込んでいるところを見たかったからだ。

 そんな理由で? と思う人がいるかもしれないが、これは実際にあの光景を見た人じゃなければ分からないだろう。とにかくそう思うほど美しい光景だったというわけだ。


 湿って滑りやすくなっている足元に気を付けながら記憶を頼りに内部をどんどん進んでいく。そして角を右に曲がったところで先にお目当ての場所があることが確認できた。

 そこを目指して歩いていき、あと少しで開けた場所に出るというところで奥から


 チャプッ……


 と小さな音が聞こえた。どうやら何かがいるようだ。

 それを確認するため、足音を立てないよう気を付けて近づく。そして入り口にある岩の陰へしゃがんで隠れ、すっと頭だけを出した。


(えっ……?)


 何がいるのかを確認して俺は驚いた。なぜならそこにいたのは俺のパートナー、メアだったからだ。メアは一糸纏わぬ姿で湖の中へ入って月明りをその身に浴びている。

 ……言葉で言い表せないという言葉は、まさにこういうときに使うのだろう。あそこにある光景はここという場所、そして何よりもメアのもつ魅力が相まって昼間に見た時よりもさらに神秘的なものになっていた。

 しかし驚いたことはそれだけではない。他に俺を驚かせたこと、それは


(あれは……羽?)


 横に向いているメアの背中から黒い羽が生えていた。そのかたちはまさに物語などで語られ描かれる、吸血鬼の羽そのものだった。


(一応羽はあったんだ)


 メアやティナちゃんはもちろん、ティナちゃんに拉致されて吸血鬼の国に行った際に見た他の吸血鬼の人たちも皆、羽は生えていなかった。

 だから吸血鬼には羽が生えていないものだと思っていたが、そういうことではなかったらしい。

 湖を近くで見るためにここに来たのだが、生まれた姿のままのメアがあそこにいてはそれは無理だろう。声をかけるなんてもってのほかだ。

 そう考えこっそりと帰ろうとしたところで


 コツッ……カッカッカ……


「あっ」


 足元にあった石を蹴飛ばしてしまった。石が転がる音が響く。


「だれっ!?」


 当然その音はメアにも聞こえたようだ。黙ってればなんとかごまかせ――


「今すぐ出てこないなら魔法を撃ちこむわ」

「待って! 俺だから!」

「優臣!?」



           ☆           



「どうしてここにいるのかしら?」


 湖のそばに畳んでおいてあった服を急いで着たメアから質問される。それに応える俺の体勢は当然のように正座である。


「昼間に見た時に綺麗だったから夜がどんな感じなのかを見たいなって思って」

「まさかあんたたちの中にそんなことを思う人がいるなんて予想外だったわ……」


 なんかすごく失礼なことを言われている気がする。レオンたちはともかく俺はこんなにも綺麗な心の持ち主だというのに。


「それじゃあ俺も聞くけどなんでメアはここに? それも服を着ないで」

「うっ、それは……その……はぁ。そうね、あなたには話しておかないとね。正座は止めていいわ」


 そう言われて正座を崩す。ふぅ……やっと楽になった。


「私って小さい時に一回倒れているのよ。原因は自分ではよく覚えてないのだけれど、お父様は珍しい病気だったっておっしゃっていたわ」

「それは……」


 それは多分ドッペルのことだろう。本当にメアは覚えていないのか。


「その時にお父様がほとんどの魔力を使って私に一つの魔法をかけたの。それはその病気を抑えるものなんだけどね……その……」


 顔を真っ赤にするメア。


「その魔法の効果を継続させるには月に一回、紅い月の光を綺麗な湖に入って羽を含む全身に直に浴びる必要があるのよ」

「あぁ、そういうこと」

「黙っててごめんなさい」

「良いよ、気にしてないし。……それよりそれ、冬もやるの?」

「そうよ。とても辛いんだから」


 冬もかぁ……そういうところも含めてダンケルハイトさんはどうにかできなかったのだろうか? って、あの人のことだからできてたらとっくにやってるか。


「とにかく! 今日のことは誰にも言わないでちょうだいね」

「分かったよ」


 まぁ別に言われなくても誰かに話す気はさらさらなかったけど。


「じゃあ予定より遅くなったし、俺は帰るね」


 湖を見に来たがそういう気分ではなくなったので戻ることにする。ただ代わりにそれ以上のものを見れたので結果的に満足――


「あっ、ちょっと待ちなさい」


 ん? まだ何かあるのだろうか?


「どうしたの?」

「ねぇ。その……見た?」

「……何を?」

「……裸」

「……見てないよ」

「嘘! その顔は絶対嘘よ! 正直に言いなさい、そうすれば許してあげるわ」

「見ました」

「……」

「……その、とても綺麗だったよ?」

「そう……死になさい!」

「なんで!?」


 正直に言ったら許すって言ったのに! 許すって言ったのに!

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