それぞれの夜の過ごし方
「じゃあ女子会を始めましょう!」
夕食を食べ終えて二つの部屋を分かれた後、パジャマに着替えて私たちの部屋に再び集合したの。広い部屋だからこれだけ人数がいても狭さを感じさせないわね。
そしてリアの言葉で女子会が始まったの。今夜は遅くまで話そうということで、床にはお菓子がたくさん広げられているわ。
「それで何するんだ?」
「私ね、恋バナというものをしてみたかったのです!」
恋バナ……ね。私たちの年頃の女の子たちがよくする、好きな人や憧れの人について話すことよね。私も仲の良い子はいるのだけど、身分が邪魔してそんな話をすることはなかったわね。
リアもそんな感じだったのかしら?
「それでまずは私から話してもいいですか?」
「いい」
「よいぞ」
「ありがとうございます。えっと、私はレオンが好きなのです」
これはリアを見ていれば誰でも分かることだと思うわ。
「どういうところが好きなの?」
「えっと……努力家で優しいところです」
顔を赤らめながら答える。レオンが努力家で優しい? どっちも想像つかないわね……私の中の努力家と言ったら優臣のイメージが強いからかしら。
って、今はあいつのことはどうでもいいことよね。
「でも三年ぐらい前から少しずつそっけなくなっていって……最近は少し寂しいの」
そしてリアのその一言で場は一気に盛り上がったわ。
「だよな。リアがアプローチしても制止するようなことばっかり言うもんな、あいつ!」
「少し冷たいと思う」
「殿方の風上にも置けませんわね!」
「お兄ちゃんがすみません……」
「もしかしてレオンは私が嫌いなのでしょうか? 婚約も実は迷惑に思っていたり……」
苦痛を帯びた顔をするリア。かなり辛そうね……
「いやいや、それはないと思うがの」
「そうっすよ! 今日もなんだかんだ言ってリアを一番見てたっすからね」
「そうねぇ、抱きつかれた時も嬉しそうな顔をしていたもの」
「そうだったのですか? 私は見えなかったものですから」
うーん、それなら嫌ってはないんでしょうけど……レオンが何を考えてるのかさっぱり分からないわね。
「どう思っているのか聞いてみたらどうかしら?」
直接聞くのが一番早いと思って提案したのだけど
「いえ、レオンは嫌なら嫌という人です。私はレオンを信じてます」
断られてしまったわ。それにしてもここまで言えるなんてリアはどれだけレオンのことが好きなのかしら?
「ねぇ、二人は親に言われて婚約したのかしら?」
「そう……なりますね。でも」
リアは眩しい笑顔で続けた。
「私は婚約をする前から彼のことを好きでしたよ」
このセリフを聞いて私は少し嫉妬を覚えたわ。同じ王女という立場でありながらリアは好きな人がいて、さらに婚約をしている。
それに比べて私は吸血鬼でありながら髪が銀色ということで、家族や城に務めている人は変わらず接してくれているけど周りの貴族からは良い顔をされないことも少なくないの。
それを隠して私に接してくる男もいたわ。ほとんどが私の立場目当てだったけどね。
だから私が誰かを好きになることなんてなかったし、できなかったわ。はぁ……私が誰かを好きになる日は来るのかしらね?
「じゃあ次はメアね!」
「えっ?」
心の用意をする前にパスされてしまったわ。
「お姉さま、もしかして好きな殿方がいらっしゃったのですか!?」
「いないわよ」
「そうなんすか。それじゃあ好みのタイプはどうっすか?」
「性格はどうかしら?」
「気になる人は?」
恋バナってこんなに細かく聞かれるものだったの!? リアがさらっと答えたからまったく予想できなかったわ!
はぁ、あいつらも今頃こんな話をしているのかしら……?
☆
「おい、ゲームをするぞ!」
「ゲームぅ?」
夕食の片づけをこの家の使用人に任せ、押せばポヨンと跳ねかえされたベッドのあまりの気持ちよさに溶けていると恭也がそんなことを提案してきた。
ゲームをしようと言っているが、この世界でまだゲームというものをほとんど見たことないんだけど。
「そうだ、ほい」
恭也がマジックボックスから人数分の紙とペンを取り出して配る。なるほど、アナログなゲームのことか。
「自分がホストになったら、相手が自分のことをどう思っているか予想してそれぞれの分を書くんだ。それ以外はホストのことをどう思っているか素直に書けばいい。一番多く一致させた奴の勝ちだ」
「なるほど」
「あっ、でも心にも思っていないことは書くなよ」
「分かった」
「じゃあ、順番はじゃんけんで決めるぞ」
「じゃんけん」
「「「「「ぽん」」」」」
「マジかよ……」
レオンだけグーで他は全員パーだったのでレオンの負けだ。
「じゃあ一分を目安に書いてくれ」
うーん……レオンのことをどう思っているか、かぁ。そんなこと意識したこともなかったな。そうだなぁ、なんども助けられているし『頼りになる』かな。
「じゃあまずはレオンから言ってくれ」
「分かった。優臣とテオは『強い』、恭也は『羨ましい』、エクスは『シスコン』だな」
「あってる奴がいたら手をあげてくれ」
「ちっ」
「えっ」
渋々といった感じでエクスが手をあげた。早速当てるのかよ……って待て待て! なんだシスコンって! そこまで書いていいものなのか!?
「よく分かったな」
「そりゃああんだけ言い合えば覚えてるさ」
「なるほど」
「それで他のやつらはどうなんだ?」
「僕は『妹思い』だね」
「俺は『滅べ』だ」
「『頼もしい』だね」
「なんだ、滅べって!?」
「うるせぇ! 婚約者がいるお前なんて滅べばいいんだ!」
「まぁまぁ」
「それで優臣は頼もしい、か」
「ふーん、お前そんな風に思っていたのか」
「まぁこっちに来てから助けられぱなっしだからね」
「そうかそうか」
クソッ、少し正直に書きすぎたか? 次からはもう少しひねって書くか。
それから俺、テオと続いたがとくに変わった回答は出ずにゲームは進んだ。結果は俺もテオも0ポイントで終わったが。
また、テオの番に俺、恭也、エクスがテオに対して可愛いと回答したらテオに「あはは……」と微妙な顔をしながら笑われてしまった。しかしかわいいのは事実なので仕方ないだろう。
「じゃあ次は吾輩だな」
エクスか……こいつといったらこれしかないんだけど。
「それじゃあ早速。全員『ロリコン』だ! これでテオ以外は当たるだろう」
「くっ!」
その言葉にテオ以外が手を挙げた。こいつまさか恥ずかしげもなくそう思われていると書くなんて! 完全に予想外だった。
「お前には恥はないのか!」
「何を言っている? これはどう思われているのかであって事実じゃないんだから恥も何もないだろう」
「でもお前、よく孤児院に行っては相好を崩して――」
「いない」
「いやいや、だってシスターからそういう話を――」
「時として事実は歪められて伝わることもあるということを覚えておけ」
「じゃあそんなに早口で言うなよ」
「うるさいぞ! それでテオはどうなのだ?」
「僕は『かっこいい』かな」
「はぁ、お前らもテオみたいだったら良かったのに」
それは恐らくここにいるテオ以外のメンバーが思っていることだろう。
「それじゃあ最後は俺だな」
恭也か……こいつも答えは一つしかないな。
「それで回答は……全員『天才』だ! これは全員挙がっただろう!」
しかし恭也の期待に反して挙がったのはテオだけであった。というかこいつは本気でそう思っているのか?
「はぁ!? じゃあ他の奴らはなんなんだよ!」
レオンとエクスを見れば目があい、そしてお互いに頷きあった。これは間違いなく答えは『あれ』だろう。
「なんだ、分からないのか?」
「あぁ、分からないな!」
「それなら教えてやろう。俺たちの回答は――」
「「「『バカ』だ」」」
「なんだとテメェら!」
「事実なんだから仕方ないだろ」
「そうだそうだ、ことあればすぐエロに繋げやがって」
「それにお前が一番問題を起こしてるだろ」
「ぐぬぬ……!」
「みんな一旦落ち着こう! ねっ?」
この後だんだんとヒートアップしていき、そしてしすぎた場をテオが収めてこのゲームは終了となったのだった。




