不純で純粋な動機
「やっぱりこれだけ大きいと厨房も広いんだね」
「まぁ作る量が多いから今回は広い方が助かるがな」
現在俺たちは、身体を綺麗にして白く清潔感の溢れる厨房へと踏み込んでいる。なぜこんな場所にいるのかと言えば勝負に負けたからだ。ただし負けた相手はレオンとテオのペアではなく、女性陣の2つのグループにだが。
みんなと合流し、俺たちとレオンたちが採った食材の数を競う前にこんな提案があり
「ねぇ、私たちも2つのグループに分かれて集めてたんだけど私たちとも勝負しない?」
「いいけど負けたらどうするの?」
「負けた2チームが今日の晩御飯を作るのはどう?」
「おもしろいじゃん、俺は良いよ」
「俺もだ」
といった風に話がまとまって勝負が行われたが……結果を言えば僅差で俺たちとレオンたちが負けた。
そういうわけで俺たちがここに立っているのだ。
「まずはこの大量の貝とかを洗わないとだね」
テーブルを見ればいくつかの小さなマジックボックスとイーバーンがのっている。俺たちが採った分だけだとそれほど数は多くなかったがそこに女性陣の分が加わるとかなりの数になる。
「役割分担するか。この中で料理ができないのは誰だ?」
レオンの問いに恭也とテオが手をあげる。
「じゃあお前らは先に魚の鱗とかをとっててくれ」
「へーい」
「はーい」
「優臣、塩」
「ほい」
「おう、ありがと」
隣でシーフードパスタを作っているレオンにソルトミルを渡す。さっきからにんにくとオリーブオイルの良い匂いが漂ってきている。
「よし、良い感じ」
ひっくり返した魚の綺麗な焼き色を見て満足する。これはなかなか美味しそうだ。
「おっ、綺麗に焼けてるではないか」
魚と貝がワインで蒸しあがるのを待っているエクスが斜め後ろから覗いてくる。
「だろ?」
「あぁ、えらく料理に慣れているな。あっちの世界でも日常的にしていたのか?」
「確かにそれは気になったな、どうなんだ?」
追加で作り出したレオンがパスタをオリーブオイルと絡めながら訊いてくる。
「あぁ、作っていたよ」
「やっぱりか」
「珍しいな。あっちから来るやつでお前ぐらいの年齢の奴は、ほとんどが作ってないやつばかりだからな」
「おい、なんで俺を見る! 俺が来たときはまだ小さかっただろ!」
後ろでサラダにかけるドレッシングを作らされていた恭也がレオンに反応する。
「うちは父親が料理好きだったからね。料理本がたくさんあったんだよ」
「なるほど、それで父親と一緒にってことか」
「そうだね。あ、でも一年前までは数人の友達とも作ったりしてたかな」
「そうなのか?」
「うん、あっちでは料理ができる男はモテる要素の一つだからね。だから料理上手くなろうってことで競い合ったりしてたんだよ」
「……」
「えっ? なんでみんなそんな顔でこっちを見るのさ!?」
「いやだってお前、動機が……なぁ?」
「お前もこのギルドに十分適性があったけど、その友達ってのも十分ありそうだな」
「あはは……僕はどんな動機でも結果として上手くなったんならそれでいいと思うよ?」
くっ、失敗したか!? 嘘でも家族のためとでも言っておくべきだったか!
「それでどうだったんだ?」
「ん? なにが?」
「結局モテたのか?」
「……なぁ、知ってるか? 例え披露する技術があってもその機会がなかったら意味ないんだよ」
「あっ……」
「まぁもし機会があったとしても、どっちにしろお前に彼女はできなかっただろうけどな」
「それもそうか」
「なんだとこの野郎!」
ひ、披露してたら間違いなく彼女ができてたはずだから! 最近、どっちにしろ結果は変わらなかったのでは? とか薄々勘づいてきてないからな!
「ねぇねぇ、そろそろ焼けてるんじゃないかな?」
「あっ、そうだね」
危ない危ない、テオに言われなかったら話に夢中になって焼きすぎてしまうところだった。
表面はカリッと、中はふわふわに焼けた魚を大きな皿にとる。そしてこれで人数分を焼き終えたので皿の上いっぱいのムニエルの上にホワイトソースをかける。ふぅ、これで俺の料理は完成だ。
「こっちは終わったよ」
「吾輩はもう少しだ」
「俺もだ。それじゃあ優臣は冷蔵庫から刺身を取り出してサラダを完成させといてくれ。テオはあいつらを2,3人呼んで、できたものから持っていってもらってくれ」
「了解」
☆
「これ、おいしい~!」
「こっちも美味しいわね」
大きなテーブルに並べられた料理をそれぞれが皿に取り分けて口にしている。
「なんか負けた気がして悔しいな……」
「私は美味しかったら気にしない」
反応を見る限り好評のようで安心した。これだけの人数分を一度に作ったのは初めてだったので味見はしたものの少し不安だったのだ。
「優臣、これ美味いな」
「正直ここまでできるとは思ってなかった」
「だろ? そう言う二人のも美味いけどね」
こうしてお互いに感想を言い合ったり、料理に舌鼓を打ちながら一日目の夕食を楽しんだのであった。




