ギルド
昨夜はギルドに対する不安で眠れないかと思っていたがかなり疲れていたらしく、目が覚めると日が昇っていた。
すぐにギルドに向かうと思っていたのだが、レオンによると多分まだ早いだろうということだ。よって時間がくるまでレオンとサナちゃんに魔法やこの世界について簡単に教えてもらった。
☆
「ここがギルドかぁ」
そして今レオンに連れられて街の端の方にある他より大きな建物の前にいる。サナちゃんはというと留守番を頼まれていた。
「そうだ、それじゃあ中に入るか。っと、その前に優臣は少し下がってろ」
「? 分かった」
そう言ってレオンが扉を開け、中に入ると
「お帰り坊ちゃん!」
「帰ってきてさっそくだが!」
「くたばれ!」
と叫びつつ、男三人が笑顔でレオンに殴り掛かった。急な出来事に俺は動くことができなかったが、レオンは拳をかわして正面の男に突っ込み、くるりと体の向きを反転して背負投を決めて男を床に叩きつけた。
うわぁ、いい音がしたなぁ……
すぐに残りの二人が再び殴り掛かるがレオンは攻撃を防いだり、いなしたりしながら片方の男の腹に打撃を打ち込んで膝をつかせ、もう片方の男を抑え込んだ。
「優臣、入ってきていいぞ」
☆
「くっ、殺せ!」
現在レオンの前で先程殴り掛かった男三人が正座させられている。
「あんたらなぁ、こいつを巻き込んでたらどうするつもりだったんだ?」
「安心しろ、そうならないよう対策はしてあったぞ。もちろんそっちのが先に入ってきた場合の対策もばっちりだ」
「そうかよ……それでなんで殴り掛かってきたんだ?」
「やだなぁ坊ちゃん、あれはハグだぜ?」
「そうだそうだ! 久しぶりに会ったから嬉しくてな、あれはお帰りのハグだ」
この世界のお帰りのハグはあんなに危険なのだろうか?
「俺はくたばれと言いながらするお帰りのハグは初めて聞いたが。それにどう見たってグーだったぞ?」
どうやらレオンも初めて聞いたらしい。
「お帰りのハグならぬ、お帰りはグーってか」
「流石坊ちゃん、うまいこと言うなぁ!」
「「「はっはっは」」」
「ミラ姉」
「「「悪かった!」」」
レオンがミラ姉の名前を出した途端、男たちが謝った。あの人、どんだけ恐いんだよ……?
「優臣、巻き込んですまなかったな。こいつらは今度、優臣のために動く的になってくれるそうだから許してやってくれ」
「えっ」
おもわず俺と男三人の驚きの声がハモった。そりゃ急にそんなこと言われたらお互い驚くよ……
用事は済んだとばかりにレオンは受付に向かい、一人の女の子に声をかけた。
「こいつはお前と同じ異人だし任せていいか?」
「レオン久しぶりだな、もちろん任せろよ。オレは長村あい、このギルドの受付をやってる、よろしく」
「俺は倉田優臣です、よろしく」
「じゃあまずはそうだな」
「まずは優臣にギルドの登録とかをさせたらいいんじゃないか?」
「あっ? ……あーなるほど。それじゃあ優臣、あっちで座ってやろうぜ」
「俺は今から準備をしないといけないことがあるから、ギルド内の案内はあいにしてもらってくれ」
「オレは5年前にこっちに来たんだ」
案内の前にギルドに所属するための手続きが必要らしく、あいと話しながら作業をしている。
彼女は俺と同じところから来た異人なのだが、耳が少し長く尖っているハーフエルフという種族になっているということだ。なぜハーフエルフになったか聞いてみたのだが「まあいろいろあったんだよ」と言葉を濁らされた。
「優臣は混沌という称号なのか、初めて聞いたな。そういえば称号ならスキルを最初から1つもってるはずなんだが、何だったんだ?」
「スキル? 蓮二さんは特に何も……あっ」
そういえばあの時、蓮二さんは質の悪い瞳だからできないことがあると言っていたがこのことかな?
このことを彼女に伝えると
「あ~、きっとそうだな、あの人は何をやってるのやら……それならスキルを確認しておくか」
そう言うと彼女は受付の方へ戻り、先日見た瞳より澄んでいるものを持ってきた。
「使い方は分かるだろ?」
「もちろん」
瞳に魔力を流すと、称号の下に新たにスキルの欄が映し出されており召喚術とあった。
「召喚術だね」
「へー、召喚術か……おっ、ちょっと待て。準備ができたらしいな」
受付から呼ばれたあいは何かを受け取って戻ってきた。見れば薄い金属の板を持っている。
「これにさっき書いてもらった情報が入っているからこれにも魔力を流せ」
言われたとおりにすると渡された金属の板が、真ん中から縦半分に割れた。
「これはギルドと優臣で半分ずつ所有しておくことになるけど大切なものだからなくすなよ。それじゃあギルド内の案内でもするかな」
「ここはショップだな、ここでポーションなどを買うことができるぜ。うちには優秀なやつがいるから同じ値段でも性能は他の所より良かったりするんだな」
薬ねぇ……ということは恭也とかいうやつもよく利用してるんだろうな。と不意にあいが首から下げていた金属板が光った。
「おっ、準備できたみたいだな。優臣、案内はいったん中止にするぞ」
「どうしたの、何か用事?」
「ああ、今からギルドマスターに挨拶しに行くぞ」
「えっ」
いきなり偉い人に挨拶するのか、嫌だなぁ……
「そんな緊張しなくても大丈夫だろ。ほら、行くぞ」
あいに連れられて二階にあるギルマスの部屋にやってきた。
「じゃあ入るぞ」
あいが扉を開けると、椅子は後ろを向いていて背もたれが見えた。
「連れてきたぞ」
「ありがとな」
「……何やってんの?」
椅子が回転して正面を向くと、そこには少し豪華な服を着たレオンが座っていた。本当に何をしているんだろうか?
「あい、ギルドマスターはどこにいるの?」
「オレはギルドマスターに挨拶すると言ったよな。そしてその部屋に案内して目の前に偉そうに座っているやつがいる、つまりそういうことだ」
「……本当に?」
「そういうことだ。俺が『エルピリア』のギルドマスターだ」




