閑話 勇者捜索
この世界には勇者は二人いるのが常だった。初めからこの世界の住人の勇者と異世界から来た異人の勇者。
しかし一年前にこの世界に勇者はいなくなった。いや、正確にいうならば違うか。この世界の住人の勇者は完全にいないが、異人の現勇者は行方不明なのだ。だからもしかしたら異人の勇者はまだいるのかもしれない。
「ここも駄目か……」
手に入れた情報がハズレだったので肩を落とす。
「あなた、落ち込まないで」
「そうだね、ありがとう」
そのことに妻が慰めてくれた。そうだ、自己紹介がまだだったね。僕は鷹松晋冶、元異人の勇者だ。そして僕は現在、行方不明になっている今代の勇者を探す旅をしているんだ。
僕が探しているそんな今の勇者は僕の七代後の勇者でとても怖がりなんだ。それでもやるときはしっかりやるんだけどね。
もし現在も勇者なら五年目になるのかな? 歴代の勇者の中でもそこそこの長さになるだろう。なんせ僕の一代から六代後の勇者たちは一、二年で消えてしまったからね。
「あなた、私はもう少し聞き込みをしてくるから休んでてちょうだい」
「いや、でも」
「いいから」
妻は無理やり僕を近くにあったベンチに座らせ、すぐに離れていってしまった。やれやれ、彼女にはかなわないなぁ。
あぁ、話の途中にすまないね。
それでなぜ消えてしまったかが分かるのかと言えば各国の巫女に神託があったからさ。勇者が消えると必ず神託があるんだ。そこで問題になるのは現在の異人の勇者に関しての神託はまだないということだ。
つまり現在の勇者は少なくとも生きているということになる。だから行方不明というかたちになっているんだ。
……ところで話は変わるがレオンは知っているかい。ん? 話が変わりすぎだって? まあまあ、聞いてよ。
そう、僕の息子でエルピリアのギルマスのレオンだ。実はね、僕はあの子に嫌われてるんだ。なぜかって? それはね、僕がサナたちに寂しい思いをさせているからなんだ。
前にあの子に言われたよ。俺が子供のときにしたあの気持ちをサナたちにはさせないでやってくれって。
僕には元勇者という立場からか、国から厄介な依頼が舞い込んでくるんだ。なぜなら元がついても勇者のときに獲得したスキルなどはそのままだからね。
これがなかなかに厄介でね。誰が言いだしたかは知らないけど『勇者』という称号は呪いみたいだと言われることがある。それが『元』勇者になっても邪魔するのだからあながち間違ってないのかもしれないね。
でも国からの依頼は今回を最後に受けないことにしたんだ、それも今回は期限付きだ。王のあいつに話したら「これまですまなかった」と謝られたよ。ただ僕も友達だからと依頼を受けてきたのだから僕も悪いんだろうけどね。
とにかく期限が来たら家に帰って家族で過ごすつもりさ。
「あなた、勇者の情報があったわよ」
「本当かい!?」
「えぇ、どうやらこの街を出るときに、次はここから東にある今は名も忘れ去られた村があった場所に行くって言ってたらしいの」
「そうか、じゃあ次はそこに行こうか」
すまないね、まだまだ話したいことがあったんだけどここで終わりだ。また何か機会があれば話したいものだよ、それじゃあ。
あぁ、そうだ。誤解している人が多いから の名誉のためにも言っておこうかな。元勇者の僕しか知らない貴重な情報だよ。
勇者を消すのは神だと世間では言われているけどそれは違う、本当はこの世界そのものが消しているんだ。その時の勇者の個体が役に立たないと判断したらまるでゴミを捨てるかのように消すんだそうだよ。
ん? どうやってそれを知ったのかって? それは神様である に直接教えてもらったからだよ。
ふふっ、驚いたかな? 神は実在するんだよ。




