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夏の準備 ○

 梅雨に入ってから一週間経った。その間に刀の強化は終わって自分のもとに返ってきたが、魔石はまだ完成していない。とは言ってももう二、三日で完成するようなので受け取りに行くことになっているのだが。

 まぁそんな話は置いておくとして、梅雨はまだ明けておらず今日もまた雨が降っている。しかしこの梅雨ももう終わるそうなのだ。 

 そうなれば海で泳ぐこともできるようになるがそのためには準備が必要である。それは――


「おはよう」

「おう」

「まさかこんなことに誘われるとはね」

「大方リアの提案なんだろ、クソッ」

「そんなに嫌なら断ればよかったのに」

「優臣知ってるか? 世の中には脅しというものがあることを」

「……ごめん」


 もうこいつはリアに勝つことはできないのではなかろうか? 


「おはようございます」


 ギルドの一階で話しているとリアを先頭にメア、クロ、あい、シルティ、そしてティナがやって来た。


「レオン、今日は私の水着を選んでくださいね」


 ――水着選びだ。



           ☆           



「それにしてもミーナたちが来れないのは残念ね」

「仕事だったらしいからのう」


 メアたちが話しているように今回の水着選びに他によく一緒にいる恭也、テオ、エクス、ミーナ、マヤの5人はいない。

 この話に誘われ、そして行けないと分かった時の恭也の顔は必見であった。エクスも非常に残念そうにしていたが恭也はその比ではなかった。きっとあれが人間が絶望した時の表情なのだろう。


「着いた」


 ティナちゃんが初めて会う他のメンバーに挨拶をしたり、夏に何をしたいかなどを話しながら移動しているとあっという間に水着を売っている店へと到着した。

 カランコロンとドアベルを鳴らしながら店に入ると目にはカラフルで様々な水着や他にも海で遊ぶためのものが目に飛び込んできた。


「じゃあ俺たちはここで水着を選ぶからお前らはゆっくりと二階で選んでくれ」


 一階は男物、二階は女物と分かれているようで入って早々レオンはそう提案した。恐らく水着選びから逃れるためだろう。しかし


「それなら私はレオンが選び終えるまでここで待ってますから、皆さんは先に選んでてください」


 微笑みながらそうはさせまいとするリア。ここに来た以上どうあっても逃れられないのだから諦めれば良いのに。というか水着姿を見られるのだから素直に喜べばいいものを……

 俺? 俺はもちろんここで水着姿を見る権利など与えられていないのでレオンが戻って来るまでは一人だ。


「くっ……分かった。ついていくから皆と選んでくれ」


 無理だと悟ったのか早々に諦めるレオン。


「だが条件がある。それはこいつも連れて行くことだ。流石に女物の水着の場所で男一人は辛いから勘弁してくれ!」

「えっ?」


 俺を見ながら条件を提示するレオン。おいおい、流石にそれは無理があるだろ。


「私は良いわ」

「我も良いぞ」

「私も」


 即答するリア、クロ、シルティ。


「ちっ、仕方ねぇな」

「そうね、リアが楽しみにしてたもの」

「お姉さまが良いのなら私も良いですわ」


 初めは渋っていたが、リアが水着を選んでもらうことを楽しみにしていたことを考えて遅れて承諾するメアとあい。とメアが承諾したから承諾したティナ。

 あれ、何で誰も断らないの? 普通は嫌がると思うんだが!?


「みんなありがとう」


 嬉しそうに笑うリア。


「それじゃあ上に行きましょう」




 最初は女性陣だけで選ぶということで水着が飾ってある所から少し離れた位置にある椅子に座って俺とレオンは待つこととなった。


「おい」

「なんだ」


 隣に座っているレオンに声をかけると無表情で返事が戻ってきた。


「テメェよくも俺を巻き込みやがったな! こんなところにいたら恥ずかしさでいたたまれないわ!」

「当たり前だ、だから巻き込んだんだよ! 一人だけ助かろうとするなんてそんなの仲間のすることじゃないよなぁ?」

「この野郎……!」

「それに……」


 声を小さくするレオン。


「そんなこと言いつつ、本当はあいつらの水着姿が見られるかもと内心喜んでるんだろ?」

「それはもちろん」


 彼女たちはほんとうに美人美女の集まりであるのだから、そんな彼女たちの水着姿を見ることが出来るかもと期待してしまうのは無理もないことだと思うのだが。


「それは嬉しいのう」

「「!?」」


 いつの間に!? こっそり話していたらいつの間にかクロが目の前に立っていた。


「ど、どうしたの?」

「いやなに。お前たちがなにかこそこそ話しておったから気になったてな」


 にやにやと笑いながら答えるクロ。


「ところで優臣、見るなら誰の水着を最初に見てみたいかの?」

「えっ!?」


 急にそんなことを聞いてくるクロ。何を考えているんだ!?


「なんでそんなことを?」

「我が興味あるからじゃ。ほれ、誰じゃ?」

「……それ、答えないとだめなの?」

「当然じゃな。もし答えなかったらあやつらにお主のあることないこと言ってしまうかもしれんのう」

「くっ」


 クロは情報屋であり、仕入れてくる情報は驚くほど正確であるためそんなクロにないことをもし言われたら否定するのに苦労することになってしまう。それなら素直に答えた方がましだろう。


「うーん」


 しかしそうは言ってもみんな可愛いため非常に悩ましい。そうだなぁ……


「メア……かな」

「ほう」


 答えを得られて満足したのかメアたちのところへとクロは戻っていった。


「なんだったんだ……?」

「さぁ」


 相変わらず不思議な人物である。


「ところでなんでメアなんだ?」


 今度は隣の男がにやにやと笑いながらそんなことを尋ねてきた。


「理由なんてないよ。ただあの中だったらメアかな、となんとなく思ったぐらいさ」

「なんだ面白くねぇな」


 一転してつまらなさそうな顔になるレオン。こいつはいったいどんな理由を期待していたんだ?


「レオン、リアが一番左の更衣室でお主を待っておるぞ」

「はいはい、行きますよ」


 再びやって来たクロに知らされ、更衣室の方へ向かうレオン。

 クソッ! こいつは今から水着姿を見ることが出来るのか。羨ましすぎて目から赤い涙が零れるかもしれない。


「優臣、お主に見せたいものがあるんじゃが」

「えっ、なに?」

「いいからついてくるのじゃ」


 言われるがままにメアについていく。そのメアが向かっている先は更衣室の方向である。まさか――


「開けてもよいか?」

「良いわよ」


 確認をとってシャッと更衣室のカーテンを開けるクロ。すると水着に着替えたメアが中から現れた。


「あれっ!? なんで優臣が!? 他のみんなは!?」

「他は水着を見ておるぞ」

「そうなの!? てっきり私はみんな揃ってきたのかと思ったのに……って優臣、あまり見ないでくれるかしら? その、恥ずかしいわ」

「ご、ごめん!」


 頬を赤らめ身体を手で隠しながらメアに言われてすぐに顔を横に向ける。ただ言い訳をさせて欲しい。

 中から現れたメアは瞳の色と同じ赤を基調とした、上部に白く細い線が一本入ったパレオ付きのビキニタイプの水着を着ていた。白い肌にお世辞にも大きいとは言えないがだからと言って全くないわけではない胸、細い手足にキュッとしまっている身体。

 普段よりも可愛さ、そして美しさが増しているメアを思わず見つめてしまうのは仕方がないと思うのだ。


「もう……いいから座って待っててちょうだい。クロはみんなを呼んできて」

「はい」

「うむ」


 くるりと体の向きを変え、先程座っていた椅子に再び座りなおす。


「びっくりした……」


 まさか水着姿を見れるとは思っていなかったのでかなり驚いたし正直嬉しい。ただメアはかなり恥ずかしがっていたので後できちんと謝っておこうかな。



           ☆           



「今日は楽しかったわね」

「そうじゃな」


 水着選びを終えた俺たちは店を出た。女性陣がわいわいとしているのに対し、隣の男はげっそりとした表情である。


「どうしたの?」

「どうしたもこうしたもあるか。俺はずっとリアの水着選びに付き合わされたんだぞ」


 そう、この男はリアが選んで着替えるたびに感想を求められていた。また俺たちはパッと水着を選んだが、女性陣はじっくりと選んでいたため待ち時間が長かったというのもあるだろう。ただ女性は買い物などに時間がかかるとよく耳にしていたので予想通りではあったが。


「まぁまぁ、リアのいろんな水着姿を見れたんだしそれでいいじゃん」

「……」

「レオン?」

「ん? あぁそれもそうだな」


 なんだ今の微妙な間は?


「なぁ、レオンは――」

「お前ら、まだ時間はあるか?」


 気になることがあり、レオンに聞こうとしたらあいが尋ねてきた。


「えっ、うん」

「あぁ」

「それなら花園にデザートを食べに行かないか?」

「いいね」

「そうだな、俺も今は甘いものが食べたいから行こう」

「分かった。おい、こいつらも行くって」

「それじゃあ早速行きましょうか」


 パッと話がまとまり花園の方へと歩き出す女性陣。そしてその後ろをついていく俺とレオン。


「おい、なにか言いかけなかったか?」


 さっき俺が言いかけていたことが気になったのかすぐにレオンは聞いてきた。


「あぁ、いや、なんでもないよ」


 その問いに対して俺はそう答えた。確かに気になることはあるがそれを俺が聞くのは今はまだ早いのかなと思い直したからだ。


「なんだ、変な奴め」

「二人とも離れてないでこっちに来たら」

「私もそう思う」

「ごめんごめん」


 前を行く女性陣に言われて距離を縮める。


 さぁ、水着も買ったし夏を満喫する準備はできた。梅雨が明けるのが待ち遠しいなぁ。

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