素材調達Ⅱ
「来たぞ」
重ねられた干し草の束の陰に隠れながらレオンが呟いた。俺たちが監視していた方角の空から朝焼けを背に緑色の大きな生物が飛来し、地面が剥き出しになっているところへと降り立った。
あの部分も元は豊かだったらしいが今はそんな面影はなく、目の前にいるシュバントによって向こう側からどんどん食い尽くされてしまったということだった。
そのシュバントといえば四足でのしのしと歩き、呑気に牧草を食べ始めている。
「準備はいいか?」
余剰な魔力はレオンに渡しているのでばっちりだ。
「あぁ」
「じゃあやるぞ」
レオンのその言葉とともに魔法を発動してシュバントへと放った。
「GUOOOOO!」
狙い通り大きな翼の付け根へと命中し低く大きな鳴き声を上げた。そしてこちら側を向き、俺たちを認識すると同時に突進してきた。
「ふっ」
それを軽く避けてがら空きの背後へと再び魔法を撃ちこむ。あの巨体の割には速いと思うが避けられないことはない。よし、これならいけそうだ。
奴の攻撃方法は大きく二つ、突進と踏みつけだとレオンが言っていた。遠距離攻撃がないならそれほど怖くはないな。
通り過ぎていったシュバントが大きく反転して再び突進してくるがこれも同じようにかわして少し離れた位置でサポートしているレオンとともに魔法を放つ。
「GURURU!」
鳴き声をあげているのを見るに俺たちの魔法はしっかりとダメージを与えているようだ。そして三度突進してくるシュバルツ。これもしっかりとかわして
「えっ?」
魔法を撃ちこもうと思ったのだが、俺の直前で大きく羽ばたいてスッと俺の目の前で止まった。
「わぷっ!」
羽ばたきによる強い風圧が全身にかかり吹き飛ばされないようにその場に踏ん張る。突進じゃないのか?
「GUOOOOO!」
まるでその答え合わせと言わんばかりにシュバントが上体を大きく持ち上げ、そして勢いよく地面を踏みつけた。
「ぅおっとっと!?」
それにより地面が大きく揺れバランスを崩して地面に膝をつく。これはマズイ!
「障壁を展開しろ!」
レオンの声が後方から響いてくる。言われなくても分かってるよ!
膝をついた状態のままではあるがすぐさま障壁を展開させる。それと同時に上部で大きな音が響き、そしてビリビリと障壁が震えた。見上げればシュバントの足の裏を確認できることから踏みつけられたようだ。
「クソッ!」
すぐにこの場から離れて体勢を整えたいところだが障壁の展開を維持しているため行動を制限されて動けない。やっかいだな、この連続踏みつけは! 魔力にはまだまだ余裕があり、障壁もまったくの無傷であるので問題はない。
レオンは今回できるだけ手を出さないと言っていたし援護は期待できない。となるとこいつが疲れるまで耐久し続けるか。
「ん?」
そう考えた矢先にピタッと踏みつけが止んだ。もしかしてもう疲れたのか?
「バカ野郎! 今すぐその場から逃げ、いや、魔力を込めろ!」
レオンが早口に指示を出してきたのですぐさま従う。それに少し遅れてシュバントがゆっくりと顔を近づけてきて、そして口を大きく開いて噛みついてきた。
「くっ!」
障壁が平らで太い歯に擦られてゴリゴリという嫌な音をたてている。ヒビなどは入っていないが削られた部分の修復に、そして潰されないように先程までよりもさらに魔力を込めているので魔力の消費が激しくなる。
魔力はまだ多少は余裕があり、さらにはポーションもいくつかあるので問題ないが……チッ、めんどうなことに――
「おらぁ!」
「GYAAAAAAA!」
「レオン!」
横からスッと現れたレオンがシュバントの顎を蹴り上げた。
「今だ! こいつの頸元をやれ!」
仰け反って柔らかい腹側が露わになったシュバントへと身体強化をして飛び上がり頸元を斬りつけた。
「どおおおりゃぁああああ!!」
ズシンとした、これまでで一番の負荷が腕にかかり押し戻されそうになるがまだまだぁ!
さらに身体強化、そして刀へと纏わせる魔力の量を増やす。
「ああああ!!」
不意に腕が軽くなり着地すると同時に、横でズンという鈍い音をたててシュバントが倒れた。どうやら頸を切り裂くことに成功したようだ。
「よし!」
「まだ安心するのは早いぞ」
「分かってるよ」
死んだのかをしっかりと確認しないとな。
「それより思いっきり蹴り上げてたけど足は大丈夫なの?」
「あれぐらい何ともねぇよ。それよりお前の方が大丈夫なのか?」
「まったく問題ないよ。障壁にまったくひび入らなかったし」
「は、本当か? お前の魔力量どうなってんだ?」
「さぁ?」
「はいはい、そういう反応をするのは分かってたさ。さて、こんだけ血を流せば死んでるだろ」
そう言って横たわっているシュバントにレオンは近づいた。
「だな、じゃあこいつをアイテムボックスに入れて村に戻るぞ。依頼完了だ」




