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素材調達Ⅰ

「手伝ってくれ!」

「何だお前急に!?」


 蓮二さんと話し終わった後、俺はすぐにその足でギルドに向かいレオンにドラゴン討伐の手伝いを頼みこんでいた。



           ☆           



「なるほど、そういうことか」


 俺の説明に納得したようにレオンが頷く。魔力をどうにかできるかもしれないという事実に興奮して内容を伝える前に頼み込んでしまったので不審がられたが、しっかり話すとどうやら納得してもらえたようだ。


「ドラゴンならなんでもいいんだよな?」

「あぁ」

「ふーん……それならアレにするか。ついて来い」




「あい、確かドラゴンの依頼がまだあったよな?」

「あ? あぁ、シュバントの依頼か。それならあるぜ」

「それを受けたいんだが」

「へいへい、受けるのはレオンと優臣とテオとエクスか?」

「いや、俺と優臣だけだ」

「ん? じゃあそいつらは?」

「こいつらは暇そうにしてたから声をかけたらついてくるって言ったやつらだ」

「なるほど、分かった……よし、お前らの名前を書き終わったから行っていいぞ。お前ら気を付けてな」

「あぁ」




「じゃあ早速向かうか」

「いや、ちょっと待て!」


 目的地に向かうために大人数用の馬車がある方へ行こうとしたレオンを引き留める。


「なんだ?」


 めんどくさそうに振り返るレオン。なんだ? じゃないだろ!


「もしかして今から行くの?」

「当たり前だろ」


 何を言っているんだという顔でこっちを見てくる。


「いやいやいや、ドラゴンだろ!? そんな準備もなしにそれは無理があるだろ!」

「そうか? シュバント程度ならお前一人でも狩れると思ったが」

「えっ? それって」


 俺が強くなったということだろうか。


「なんせシュバントはドラゴンの中で最弱だからな」

「あっ、そういう」

「とはいってもある程度強くないと一人で狩れないから優臣は強くなってるよ」


 すかさずフォローを入れてくれるテオ。


「ありがとう。でも急すぎない? 泊まりになるってメアたちに言ってないし」

「そんなのは連絡で良いだろ。急いでる訳も馬車で話してやるから行くぞ」




「そろそろ梅雨の時期だからな。巣穴にこもられたら面倒だからな」


 角の生えた馬がそこそこの速さで引く馬車に揺られながらメアに今日は帰らないことを連絡をし終え、急いでいる理由を聞くとそんな答えが返ってきた。


「なるほど……ところで今回の依頼ってどういう内容なの?」

「牧草を食い荒らすから討伐してくれってものだ」

「牧草? 牛とかじゃなくて?」

「シュバントは草食だからな。そしてドラゴンというだけあって食べる量は半端ない」

「へー……あっ、ところで報酬はどうするの?」


 今回は手伝いというかたちでレオンに頼んだが依頼を受けたのは俺たち二人。ということはやっぱり全て二等分だろうか。


「あー、報酬金は別にいらねぇよ。ただシュバントを半分ほど貰おうか、あれの肉は美味いしそれにそこそこの値で売れるからな。もちろん魔石はお前のだ」

「分かった」


 シュバントの肉美味しいのか。持って帰ったらエラたちは喜んでくれるだろうか?


「それで声をかけてついて来たお前らは何するんだ?」


 レオンがテオとエクスに尋ねる。


「僕は村でチーズとかを買おうかな。あそこの乳製品、味が良いんだよね」

「吾輩はあの周辺でしか採れないものを採集しようかなと」

「チーズか……良いよな、あそこのチーズ。俺も買って帰るかな」


 そんなに言われるものなら俺もお土産に買って帰ろうかな。


「それじゃあ今度は僕が聞くけどなんで優臣はドラゴンの魔石が必要なの?」

「あぁそれはドラゴンの魔石を素材にした魔石があれば一人でも俺の魔力をどうにかできるかもしれないからなんだ」

「えっ、それは良いね! いつも苦労してたもんね」

「魔力が少なくて苦労するということはよくあるが多くて苦労することもあるんだな」

「だな。俺たちは多い方じゃないから羨ましく感じるぜ」

「でも完璧に扱えないと逆に不便だけどね」


 魔力が急激に増える前のきちんと魔力を制御出来ていた頃を思い出す。あの時はこんなことになるなんて微塵も思ってなかったなぁ。


「まぁそこはお前次第ってこった。頑張れよ」

「おう」



           ☆           



「やっと着いたー!」


 時間を確認すれば休憩などもあったが四時間近く馬車に乗っていたことになる。ただ乗っていただけなのに疲れた……


「それじゃまずは依頼主である村長に挨拶に行くか」




「はぁ……落ち着くなぁ」


 村から少し離れたところで馬車が停まったので歩いて向かっているのだが辺り一面緑に覆われており、そして広々とした敷地で動物がくつろいでいる。

 たまにこういうところに来るのもありだな……遠いけど。


「よくぞいらっしゃいました」


 村の入り口で優しそうな雰囲気のお爺さんに声をかけられる。誰だこの人?


「儂はこの村の村長のジトです」

「俺はエルピリアのレオンだ。それでこっちが」

「同じくエルピリアの優臣です。今回はよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくですじゃ。さぁ、詳しい話は儂の家でお話ししますのでこちらへ」


 村と聞いていたから小規模化と思っていたがここから見える範囲でもかなり広く、そしてそこそこ大きい建物もいくつかある。人の出入りは頻繁に行われているのだろう。


「おい、あれって『凶乱』のレオンじゃないか?」

「あぁ、そして『妖精姫』に『ファントム』だな。村長の言ったとおり、本当にエルピリアが来てくれたのか」

「だな……ところでもう一人は誰だ? 初めて見る顔だが?」

「さぁ? 偶々居合わせた……とかじゃないか。エルピリアって言ってたし」


 失礼な! 俺もちゃんとしたエルピリアのメンバーだよ!


「ここですじゃ、さぁどうぞ」



           ☆           



「あぁ疲れた」


 宿を借りて部屋にてベッドに倒れこむ。シュバントをまだ討伐してないにも関わらず疲れた。


「おいおい、明日大丈夫かよ」

「頑張るさ」


 村長の話によればシュバントは一頭で行動しているらしい。レオン曰くシュバントは二、三頭でいることもあるため今回は楽な部類に入る依頼であるらしい。


「それにしても『凶乱』ねぇ」


 ぼそっと呟くとレオンの動きがピタッと止まった。気になって村の人に話を聞いたのだが、『狂乱』ではなく『凶乱』と呼ばれているらしい。そんな呼び方をされるなんてこいつはいったい何をやらかしたんだ?


「そして『妖精姫』に『ファントム』か」


 さらにテオとエクスの動きが止まる。


 妖精姫はテオ、ファントムはエクスのことのようだ。よく二人のことを表しているのではないだろうか?


「優臣」

「なにってうわ!」


 気付けばレオンが目の前に来ていた。


「世の中にはな――」


ピピピッ! ピピピッ!


 レオンが何かを言おうとすると同時に魔報が鳴り響いた。確認すればかけてきたのはメアである。


「メアからだ。悪いけど出ていいか?」

「お、おう」


「もしもし」


 部屋を出てメアからの魔報に出る。


「お兄ちゃん!」

「アリス?」


 メアからの電話と思ったが出たのはアリスだった。


「この子たちがあなたと寝る前に話したいって言って聞かなくて……今大丈夫かしら」

「そういうことなら今は問題ないよ」

「ほんと!? お兄ちゃん! えっとねえっとね、今日は――」

「アリスばっかりずるいです。私にも話させてください」

「二人とも落ち着いて! ちゃんと話聞くから」




「おう、お帰り。えらい話してたな」

「まぁね。可愛い二人の話だったからむしろご褒美だよ」

「あぁ、エラちゃんとアリスちゃんね。二人とも君によく懐いてるね」

「嬉しい限りだよ」


 初めて会ったあの時の面影は二人にもうない。本当に良かった。


「それでさっきは何を言おうとしてたんだ?」

「あぁ、それは……いや、もういい。それにしてもお前が羨ましいな。最近のサナたちは……」

「何? 仲悪いの?」

「俺たちに限ってそんなことあるわけないだろ!? ……ただ話を聞いてくれるか?」

「はいはい、どうぞ」


 夜はまだ始まったばかりだ。明日に支障が出ない程度に楽しもうじゃないか。

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