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チームワークⅢ

「「すいませんでしたぁ!」」


 闘技場の中央でレオンとエクスが土下座をしながら謝った。二人は下を向いて小さく震え、まるで何かに怯えているように見える。

 どうしたのだろうか? 二人の前にはこちらに背中を向けているテオがいるがあの天使が二人に恐怖させるとは考えられないし……うーん。


「なぁ」

「ん?」

「レオンのあの土下座って……」

「あっ、分かった?」


 あいが苦々しい顔をしながら俺に聞いてきた。なぜそんな顔をするのかさっぱり分からないが聞かれたからには答えるべきだろう。そうあれは――


「頼まれたから綺麗な形を教えたんだよ」

「やっぱり……」


 理解できないという顔をするあい。


「ていうかなんで綺麗にできるんだ? 初めからか?」

「いや、練習したからだね」

「……」


 まるでバカを見るかのような目を向けてくるあい。

 自分でも今となってはばかばかしく思うのだから他からは余計にそう感じるのだろう。だが待ってほしい、そんなものでも今の俺にとっては数少ないかたちある元の世界の思い出である。

 そう、この土下座の型(思い出)は友人らと競い合い高めあったという俺の青春の1ページ……には加えたくないな、うん。これはただの思い出に留めておくとしよう。


「最初はまともなやつだと思っていたんだけどな……オレが間違っていたよ、お前もやっぱりこのギルドのメンバーだな」

「えっ!?」


 それはつまり俺が変人ということで……

 フランヴィーレ側の待機所にいる先程まで土下座をしていた二人、そして隣に座っている恭也をちらりと見る。

 俺がこいつらと同じだと? 不名誉も甚だしい、名誉毀損で訴えれるレベルである。


「さすがにそれは嫌――」

「そんなことより会場はすごい盛り上がってたな」


 露骨に話を逸らすあい。俺にとっては全然そんなことで済む話ではないんだが? まぁ後でじっくりと誤解を解けばいいか。


「そうだね、みんなノリが良いというか……」


 そう、あいが言ったようにレオンとエクスが戦い始めてから会場はさらなる盛り上がりを見せていた。止める声は少なく、それどころか「やれー!」などと煽るものがほとんどであった。

 まぁそんな声はテオが大剣を投げ飛ばすと同時にピタリと止んだのだが。恐らく驚きで声が出なかったのだろう。


「むっ、お主たちの試合はもう終わったのかのう?」

「あっクロ。そうだね朝一番に終わったよ」


 後ろから声をかけられ振り向けば朝からここにはいなかったクロが立っていた。


「朝一番じゃったか……あとで確認するとするかの」

「クロは試合に出ないの?」

「前にも言ったが我はギルドに所属しておらぬのでな。それにさっきまでいろいろとやっておって大変じゃったから遠慮したいのじゃ」

「そうなんだ、お疲れ」

「うむ」


 顔には出ていないが疲れていたらしい。クロのことだ、大方危ない所に行って情報収集なりなんなりしていたのだろう。それならそっとしておくほうが良いというものだ。


「んっ、クロじゃねぇか」

「本当だ、来てくれたんだね」


 そして現れるさっきまで試合をしていた三人組。


「お疲れー」

「お、おう」

「う、うむ」

「うん、ありがとね」


 三人を労ったのだが何故かしどろもどろに返事をする二人。やはり闘技場でなにかあったのだろうか?


「さ、さぁ! これで全部の試合が終わったことだし外に行くぞ」

「外に? 何しに?」

「やれやれ、お前はまだ馴染んでないのか。そりゃあやることやったんならその後は――」

「「「祭りだ!」」」



           ☆           



「肉だ! とにかく肉をよこせ!」

「……」

「おいエクス! それは俺が大事に育ててた肉だぞ!」

「むっ、そうだったのか? 知らなかったから許せ」

「嘘いうな! テメェこっちを確認してから食ったじゃねぇか!」

「普段は気付かないくせにこういうときだけ鋭いよな」

「はいはい、まだ肉はあるから落ち着いて」


 闘技場の外にある広場を使ってフランヴィーレとの合同の打ち上げが始まった。各々ギルドに関係なくいくつかのグループを作って今日の試合の感想などを言い合っている。

 そして俺のいるグループはレオン、テオ、エクス、恭也と俺たちと試合したフランヴィーレの男の面々で構成されている。

 メアたち女性陣はまた別のグループを作っておりそこにはエラとアリス、そしてサナちゃんとサラちゃんの姿もある。俺たちだけで食べて帰るというのは悪いと思ってメアと共にレオンにそのことを話すとここに連れてくることを快く承諾してくれた。そのときにサナちゃんとサラちゃんも一緒にと頼まれ、学校が終わって校門から出てくる四人をここに連れてきたのだった。


「この肉美味しいね、何の肉?」

「それはドラゴンだな」

「へー、ドラゴン……ドラゴン!?」


 ドラゴンって食べられたのか……


「ねぇ優臣君、ちょっといいかな?」

「ん? どうしたの?」


 ドラゴンが食材という事実に慄きつつ味わっていると俺に話しかけてきた男がいた。


「少し話がしたいんだけど」

「どうぞ」

「いや、少し場所を変えよう」


 場所を変えての話って……レオンたちに聞かれたくない話なのだろうか?




「それで話って?」


 集まりから少し離れたところで彼は足を止めた。


「率直に聞こう。君は今日の戦い手を抜いて本気じゃなかったよね?」

「えっ?」


 この言葉に少し困惑してしまう。少なくとも俺は本気で戦ったと思っている。


「だって君は前回戦ったときはあんなに魔法を使ったのに今回はまったく使わなかったじゃないか。それに使ったかと思えば自滅して終了。僕は君に負けてからまず君に勝つことを目標にしてたんだ。そして今日勝ったけどあれは僕の望んだ勝ち方じゃない」


 あぁ、なるほど。つまりこの男は俺が魔法を使わなかったから手を抜かれたと感じたのだろう。確かに俺が反対の立場だったらそう思うかもしれない。


「どうして本気を出さなかったんだい?」


 ただそれはこちらの事情を一切知らないからそう言えるのだ。


「いや、それは……」


 レオンが勝手に決めてきたルールのせいと言おうとして口をつぐむ。

 確かに今日俺が魔法を使えなかったのはルールに縛られたからかもしれない。いつもなら誰かに魔力を譲渡することで調整できる。だが常に誰かと行動している、できるわけじゃない。そう、例えばディスパールの結界に捕らわれたときのように。そうなると俺は一気に力を削がれるだろう。


「優臣君? 急に黙ってどうしたんだい?」

「……」


 これは俺が他人に頼りすぎから起きた俺の結果だ。人に頼ることが悪いこととは思わないが俺は依存というレベルになっていたかもしれない。そんな自分の実力不足をルールの、レオンのせいにするのはいかがなものだろうか?


「いや、今日の俺は間違いなく本気だった」

「じゃあ――」

「ただごめん、それと同時に全力じゃなかったのも事実だよ。俺は今少し事情があって魔法を上手く扱えない状態なんだ」

「そうだったんだ……」

「うん、だからどうにか俺はこの状態を克服する。だからその時にまた戦おう、()()()()

「……あぁ! その時はよろしく頼むよ、優臣君!」

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