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惨敗

「じゃあ早速始めようか」


 待機所を出て廊下を歩いていくと広い場所に出た。周りの席には大勢の人が座っており、そしてリヴォルと他5人がいるということはここで試合を行うのだろう。


「あぁ、そうだな。今日はよろしく」

「こちらこそ」




 レオンとリヴォルが軽く言葉を交わした後、俺たちも軽く挨拶をしてから闘技場内の選手待機場所へと移動した。


「それで出る順番だが1番は恭也、2番は優臣でそれ以降は自由に決めてくれ」

「えっそんな適当でいいの?」

「事前に言ってあるからな。さて、それじゃさくっと三勝して終わらすか。恭也、行って来い」

「大きく出たじゃねぇか、レオン。任せろって」


 急に出場が決まりさらには一番手だというのに恭也は気負った様子は見せず、それどころか「グッ」と親指を立てて中央へと向かっていく姿はいつもの恭也とは違ってかっこよく俺の目に映ったのだった。



           ☆           



「全身がいてぇよ……辛い……」


 俺の目は節穴だったようだ。

 かっこよく出ていったはずの恭也は現在、椅子に寝っころがって涙目ながらにポーションを飲んでいる。あの時俺はきっと幻覚でも見ていたのだろう。

 それにしても恭也の試合内容はなんというか……うん。恭也の対戦相手には悪いが途中から弱いものいじめをしているようにしか見えなかった。

 初めは応戦していた恭也だがすぐに魔力が切れたのだろう。途中からは逃げることしかできず、そして少ない体力が尽きたところに魔法が命中して第一試合は終了した。


「くそっ……こんなことなら試合開始と同時に降参――」

「してたら俺がお前の全身の骨を折っていたがな」

「するのは男らしくないよな! なっ、レオン? 俺はきちんと最後まで戦ったぞ!」


 この男そんなことを考えていたのか。それに戦ったというより逃げていただけのような……


「やれやれ、それじゃあ優臣行って来い。こいつみたいにはなるなよ」

「任せなって、まずは俺が一勝してくるよ」




「よろしく優臣君」

「こちらこそよろしく、バイン」

「いや、だから僕はバイゼルだって」


 どうやら俺の対戦相手はバイン……ではなくバイゼルのようだ。


「あの大会では負けたけど今度は僕が勝たせてもらうよ」

「挨拶は終わったかな? それじゃあ二人とも距離をとって……第二試合、開始!」


 放送で流れた審判の合図とともに俺は一直線にバイゼルへと突っ込んだ。魔法をまともに使えない今、距離をとられるのはマズイと判断したからだ。

 対してバイゼルは前回と同じく様子見で魔法を放った。その魔法を刀で斬り落とし、速度を落とさずにバイゼルを横に斬り払う。だが――


「くっ!」


 ガキンという音をたてて防がれてしまった。最速でいったはずだがバイゼルの障壁が間に合ったようで、その障壁には大きなひびを入れただけだった。


「ちっ」


 だが俺は知っている、障壁を展開すると行動を大きく制限されることを。障壁を展開しているときはこれに魔力をもっていかれるため魔法を上手く使うことが出来ないのだ。他にも他人を障壁の内側に入れ、その人が魔法を放っても障壁の内側にぶつかってしまうなど、障壁は万能そうに見えて意外と制限があるのだ。

 そしてその経験通り、バイゼルは障壁を展開してからほぼその場から動けていない。

 衝撃で少し痺れる腕ですぐさま二撃目をひびの入ったところに打ち込み、刀が障壁に触れるというところで――


「っ!?」


 障壁が消え、そしてバイゼルはすぐに魔法を放ってきた。対して俺は刀を振りきった直後であり、魔法を斬り伏せることができないため


「ぐっ……」


 顔から胸にかけての魔法を左腕を使って防ぐ。しかし当然ではあるがそれでは防ぎきることはできず、肩や脚に数発くらってしまった。そしてさらには腕に纏わせている魔力も安定していないため、魔力が薄かった部分に痛みが走る。

 魔法によって後ろへ押しずらされてできた隙を見逃してくれるはずもなく一転攻勢、バイゼルは魔法を連続して使用してきた。

 くっそ! 障壁が使えたら防ぎきれるのに!


「優臣君!」


 どうにか再び接近戦に持ち込みたいがこの雨のように降ってくる魔法でなかなか近づけず、逃げ続けているとバイゼルが声を上げた。

 くそっ、なんだよ! こっちは逃げるのと隙を見つけるのに必死なのに!


「どうして障壁で魔法を防がないんだい! 君ならできるんじゃないのか?」


 普段ならそうしてるよ! そう叫びたいが疲労と痛みでそんな反論をする気力は残っていない。


「がっかりだよ! 僕は再び君と戦えるのをとても楽しみにしていたのに」


 ……がっかりだと? その言葉に俺はピキッときた。勝手に期待しておいてその言い方はないだろう。さらにこっちはルールによってまともに戦えていないのに。


「……かい……やる」

「ん? 何か言ったかい?」

「後悔させてやると言ったんだ!」


 普段ならこんな行動をしなかっただろう。だが俺は防戦一方ならぬ逃げ一方、さらには魔法をまともに使えないという状況でイライラしていたのだ。


「これが俺の全力だ!」



           ☆           



「全身が痛い……辛いよ」

「はぁ……ったくお前らは」


 椅子に寝っころがって涙目ながらにポーションを飲んでいるとレオンが呆れた声を出した。

 結局試合は俺の負けとなった。……敗因は俺の自爆で。


 俺はほぼ最大の魔力量の状態で魔法を使おうとたが案の定というべきか暴発してしまい、刀を持てる状態ではなくなってしまったため闘技場に設定された結界によって敗北認定されたのだった。


「くそっ、こんなルールさえなければ」

「そうだそうだ」

「あのなぁ、お前らにこんな明確な弱点がなけりゃこうなってないんだよ。優臣はともかく恭也はもう少しはどうにかしろ」

「「くっ……」」


 正論を言いやがって……言い返せないだろ!


「まぁここまでは予想できた展開だ。じゃあここから三勝していくか」

「おい待てレオン」

「なんだ恭也」

「てめぇ俺たちが負けると思っていやがったな!」

「当然だ。だから俺は最初に言っただろ? さくっとお前たちが負けて残りで三勝して終わらすと」

「あれはそういう意味だったの!?」

「やれやれ本当にうるさいやつらだ。さて次からは誰が行っても良いぞ」

「じゃあ私が」


 面倒くさそうにレオンは話を切り上げると次に出るメンバーをメアたちに聞き、そしてすぐに決まったのかシルティが三番手となった。


「それじゃ時間がくるまでもう少し待機だな」

「了解」

「おい優臣」

「なーにー?」


 休んでいるとレオンが声をかけてきた。どうしたのだろうか?


「前回と比べてどうだった?」

「なにが?」

「バイゼルだ」

「うーん、強くなってた、かな」


 近接だけなら前回よりさらに俺が強くなっていると思う。だがそこに魔法が入ってくるとその差は一気に縮まるだろう。

 あの広範囲に魔法を展開するほどの技術はまだ俺にはないものだからだ。


「そうか、ちなみにあいつはお前に勝つことを目標にしているみたいだぞ」

「……ふーん」

「おっ、合図があったな。じゃあシルティ、このバカどもの仇をうってきてくれ」

「任せて」


 どうやら第三戦の合図があったようでシルティは闘技場の中央へと向かっていった。

 ……それにしてもなるほど、だからバイゼルは試合中にあんなことを言ってきたのか。わかったわかった、バイゼルね。もう彼の名前を間違えることはないだろう。

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