それぞれの弱点
「それじゃあ準備をするか」
施設の中にある待機所に入ると早速レオンがそのように言ってきた。
「まず用意した助っ人だがそれは恭也だ」
「……」
「おい恭也、寝てないで起きろ」
「んあっ!?」
「お前が、この試合の、助っ人だ」
「はぁああああ!? 初めて聞いたが!?」
「そりゃ言ってなかったからな」
なるほど、だから恭也が俺たちと一緒にいたのか。
「というかなんで俺なんだよ」
「そりゃあお前が弱いからだな」
「なるほどなぁ」
ばっさりとレオンに弱いと言われたにも関わらず怒るどころか納得した様子を見せる恭也。お前はそれで良いのか……?
「それで次にルールの追加についてだが――」
ぶつぶつと文句を言いつつ準備をする恭也を横目にレオンは話を続ける。というか以前言っていたようにルールの追加がやっぱりあったのか。どんなのだろうか?
「まず召喚者と被召喚者はそれぞれ個人で出場すること」
「えっ?」
「んっ? ねぇ、レオン。それって」
「そうだ、つまり優臣とメアは別々に出るということだな」
「なんだそれ!?」
「あらら」
メアはあまり気にした様子を見せていないが俺にとっては死活問題である。それはつまり魔力譲渡ができないということで、すなわち魔法がまともに使えないということに他ならないからだ。
「ふははははは!」
床に膝をついた俺を見て指をさして大笑いをする恭也。てめぇこの野郎……!
「――またテイムした魔物の参加も禁ずる」
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!?」
「あははははは!」
そのルールに今度は恭也が絶望の声を上げて隣に崩れ落ちる。今のルールだと恭也はエリムの参加を禁じられたことになる。人の不幸を笑うからそうなるんだよ! きっちり笑い返してやるぜ!
「おい、お前ら。まだあるから椅子に座りなおせ」
レオンに言われ椅子に座りなおす。
それはそうとよく考えればこのルールは俺にあまり影響がないことに気付いた。メアがいないことで戦力は下がるが魔力譲渡は別に試合中にする必要がないのだ。試合の直前にメアに渡せば俺は魔法を普通に使うことが出来るのだから。まったく……焦って損したよ。
「次に試合前、試合中を問わず魔力の調整やポーション等によるドーピングを禁ずる」
「「ああああぁぁぁぁ!?」」
再び椅子から崩れ落ちる俺と恭也。なんでそんなドンピシャに俺たちを狙い撃ちにしたルール追加なんだよ!?
「ねぇレオン? 俺は以前こう聞いたはずなんだ。『ルールには多少追加があるだろう』って。これのどこが多少なんだよ!」
「落ち着け優臣、前に配った紙は持ってるか?」
「えっ、うん」
「じゃあほら。お前らにも」
そう言って俺たちに紙を渡すレオン。これは……新たにルールが追加されたものか。見れば下にあった空白のところにルールが追加されている。
「よく見比べてみろ、いくつかあるルールに新たに2つ追加されただけだぞ。なら多少だろ?」
「数でしか把握できないのかよ! 内容が多少どころじゃないんだよ!」
「やれやれうるさい奴め。そのルールはフランヴィーレにも適用されるんだか文句を言うな。それにお前らは向こうからどんな奴が出てくるのか知っているのか? もしかしたらお前らと同じような奴がいるかもそれないだろ」
「くっ」
そう言われるとそうだ。俺たちを狙い撃ちしているのかと思ったがそういうわけでもないかもしれない。
「そう言われるとそうだな」
「だね。俺たちが早とちりしてたよ。ごめんレオン」
「良いってことよ。なんせルール追加は俺が言い出したことだし内容も俺が決めたからな。もちろんこの2つは完全にお前たちをターゲットにしたものだ」
「「てめぇこの野郎!」」
レオンに殴り掛かった俺はシルティに、恭也はレオンに止められてしまった。
「離してくれないかな、シルティ?」
「落ち着いて」
「あんたたちねぇ……でもレオン、どうしてこんなルールを追加したのかしら?」
冷めた目でこちらを見ながら冷静に質問するメア。
「そうだそうだ!」
「これは嫌がらせかぁ!?」
「おいおい、俺がそんな理由でするわけないだろ?」
「いいや、お前ならするね!」
「……お前たちは弱いと言ってもそれはこのギルド内に限った話で、他から見れば少なくとも初心者の領域は出ている(と思いたい)からな。お前らが圧倒してすぐに試合が終わったらお互いにどのくらい強くなったのか分かり辛いだろ?」
「なるほど」
「そうだったのか」
そんな考えがあって……また俺は勘違いをしていたようだ。
「……こいつらやっぱりちょろいな」
「ん? 何か言った?」
「いいや、なんでもないぞ。それよりもそろそろ時間だ、行くぞ」




