企み
「クククッ」
「……」
「アッハッハ!」
「……随分楽しそうだね」
目の前でこっちを向いて大笑いしているレオンに少し気分を悪くしながら声をかける。今朝話があるという連絡があって集まったのだが、そのレオンは俺が来てからずっと笑っている。どうせ昨日の恭也との騒動を思い出して笑っているのだろう。
「すまんすまん、そんなに怒るなって。それじゃあ全員集まったし始めるか」
☆
「フランヴィーレと試合?」
「そうだ」
レオンから聞かされたのはフランヴィーレとの試合を一週間後に行うというものだった。
「毎年……いや、去年はやらなかったらしいがこの時期になるとやるのさ。それも観客をたくさん集めてな」
「なんでそんなことを?」
「そりゃあ宣伝するためだ。うちのギルドにはこんな奴がいるぞ。とか、どのくらい強くなったぞ。とかな」
「ふーん……」
「おいおいメア。そんな興味なさそうな声をあげているがお前たち新人はこの試合の目玉なんだぞ」
「えっ?」
何それ、俺たちそんなに注目浴びるようなことあったっけ?
「あの大会からどれだけ強くなった見るのは当たり前だろ。ただ今回はいつもと少し違う注目の浴び方だけどな」
そう言ってシルティとリアの方を見るレオン。
「今回はうちのギルドに大会の優勝者が二人同時に加入したからな。それに美人ときたもんだ。その二人を一目見ようと大会を見に来なかった奴ら、つまり冒険者以外がたくさん来るみたいだ」
「美人……嬉しいことを言ってくれますね、レオン」
「……リア、俺は世間の一般的な意見を言っただけだ」
「そういうことにしておきますね、うふふ」
「ちっ」
リアの嬉しそうな態度に反して悪態をつくレオン。本当にこの男は……
「それで向こうと話し合って大まかなルールを決めたから紙を見ておいてくれ」
そう言ってレオンは俺たちにルールが書かれた紙を渡してきた。どれどれ……
「今のところはこんな感じだな。多少はルールの追加があるだろうがそれは楽しみにしておいてくれ」
見れば行う場所や人数が書かれている。なるほどなるほどって、うん?
「レオン」
「どうした?」
「5対5の団体戦って書いてあるけど俺たち以外に誰が出るの?」
ここには3人、というより3組しかいない。まず召喚術ということで俺とメアはペアであり、他にはシルティにリアである。
そう尋ねるとレオンはニヤリと笑った。
「安心しろ。助っ人は一人用意してあるからな」
「ふーん」
まだ一人しか用意できてないようだろうけど大丈夫だろうか?
「この私たちが魔法の使用禁止というのは?」
シルティがレオンに尋ねる。そう、下に少し空白のある紙に書かれたルールの最後にはメア、シルティ、リアは魔法の使用禁止と記されていたのだ。
「あぁ、それは仕方ないな。お前たち三人は新人と呼ぶには強すぎるからな。俺も当然だと思って了承した。問題ないと思うがどうだ?」
「分かった」
「そうね」
「レオンがそう言うのでしたら」
三者三様の言葉で返す三人。まったく動じた様子を見せないのは自信があるからだろう。俺もそんな風に返せるぐらい強くなりたいものである。
「他に何かあるか? ないなら解散だな」
それに対しとくに質問などは出なかった。
「じゃあ解散だ。後々気になったことがあったらまた質問してくれ」
それを聞いて椅子から立ち上がった。さてそれじゃあ――
「優臣」
依頼を選びに行こうとしたらレオンに呼び止められた。
「なに?」
「一週間後が楽しみだな」
振り返って返事をすると、レオンはにこやかに笑いながらそう言った。なんだ、その胡散臭い笑顔は。
「いや全然」
「そうか、俺はとても楽しみだったんだがな……呼び止めてすまなかったな。行っていいぞ」
……なんだったんだあいつは?
「じゃあメア、今日の依頼を選びに行こうか」
レオンの不可解な行動を不思議に思いつつもメアに声をかける。
「そうね」
こうして俺の一日がまた始まるのだった。
☆
「おはよう」
「あぁ、よく眠れたか?」
そしてあれから一週間が経ち、フランヴィーレとの試合当日になった。そして集合場所になっていたこの街の闘技場がある施設にて、その前で待っていたレオンたちに声をかけ合流をする。
集合時間より早めに来たのだがみんな……いや、恭也以外集まっている。
「まぁまぁかな」
「そうか。あとは恭也が来れば――」
「おは……よう」
噂をすれば――というやつだろう。眼鏡の下の目を擦りながらエリムと共に恭也がやってきた。大方夜遅くまで実験をしていたのだろう、かなり眠そうである。
「おいおい、昨夜は早く寝ろと言っておいただろ……まぁ、いい。お前が辛いだけだしな。じゃあ揃ったことだし中に入るか」
この時、俺たちは予想していなかった。まさかこいつの企みに嵌められてしまうということを……




