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混沌Ⅱ

 称号は……『混沌』? なんだこれ?


「なあ、レオン」

「どうした? 何か気になるものがあったか?」

「称号っていうのは――」

「まさか『勇者』か!?」

「いや違うけど……なんで勇者だと思ったんだい?」

「……少し勇者について話をするけどいいか?」

「もちろん」

「この世界には勇者が二人いる、この世界の生まれの勇者と異人の勇者だ。確か最初の異人の勇者は100年ぐらい前から現れたんだったかな? まあそれはいい、勇者はその役割を終えるか死ぬと勇者の称号を失う。そして勇者がいなくなった時だがこの世界の勇者の場合は新たに勇者の称号が出現し、異人の場合は異人がいろいろな方法でやってくる」


 へー……って、うん? 待てよ。


「俺に『勇者か?』 と聞いたということは、異人の勇者が今はいないってこと?」

「……この世界の勇者は一年ぐらい前に、その時の勇者が称号を急になくして以来現れていない。そして異人の勇者も同じく一年ぐらい前から行方が分かっていない、その仲間もな。だから異人の勇者に関してはなんとも言えないがな」

「そうなんだ」

「まあ称号が勇者じゃないならいいんだ、安心した。あれは呪いみたいなものだからな」


……勇者の称号が呪い?


「勇者の称号が呪いってどういうこと?」

「それはだな、勇者になった本人だけは何かしらの情報を得るらしいが、称号『勇者』については謎が多すぎる。これだけ何故か最初から『勇者としての正しい行動をし、勇者であらねばならない』と瞳に説明が映るらしい。説明は本来、その称号を本当に理解して受け入れ、極めたときに初めてなされるものだ」

「へー」

「そして勇者の称号の説明はそれだけでその中身について詳しいことは分からない。何が勇者として正しい行動で、勇者としてあらしめるのか。具体的なことが全く分かっていない」

「でもそれだけなら呪いと言うほどでもないんじゃ?」

「これだけならな、勇者には大きな困難が必ず降りかかる。他にも勇者として間違った行動をとったと判断された場合は死だ。過去に何人もの勇者が原因不明の死を迎えたり行方不明になっている。これらから何が間違っているかなどの情報を勇者は得られていないだろうと思われる」


 間違った行動をすると『死』……って、そもそも


「誰がそんな判断してるの?」

「多分女神だろうな。昔、各国の巫女に女神から勇者についての神託がいくつかあり、それを守らなかった国は一夜にして滅ぼされたらしい。ここ数十年は神託がないようだけどな。他にも女神は勇者やその情報管理にはいろいろと厳しく制限をしていて、勇者本人も自分の称号について語るのを禁じられている。その理由は分からないがとにかく勇者について未だに分かっていないことが多い」


 勇者は女神に管理されているってことか? 確かに今の話を聞いたら呪いのようなものとしか思えない。


「勇者についての話はこれで終わりだな。それで結局、お前の称号は何だったんだ?」

「えっと、『混沌』だったんだけど」

「混沌だぁ? そんな称号は初めて聞いたな」

「……というかそもそも称号って何? 職業と何が違うの?」

「まず称号と職業はまったくの別物だ。職業は適性を示されるだけというのに対して、称号は本人が現在抱えている本質や想いを反映したり、はたまた未来を表すものとして現れることが多い。そして大体がプラスだが稀にマイナスということもある。他にも称号を選んだ場合、別のものに変える際に何かを失わなければならないのがほとんどだ」


 いろいろと気になることを言ったが、まずマイナスってなんだ!? 怖くて聞きたくないんだけど!


「へ、へー。称号って例えばどんなのがあるの?」

「そうだなぁ……『臆病』や『探求者』、『源』とかだな」


 臆病ってそれ絶対馬鹿にされてるだろ。


「例えば今挙げた『源』は自分を中心に様々な効果を発動するのが主だな。プラスの場合はありがたいがマイナスの場合、自分の意思に関係なく悪い効果を周りに撒き散らしてしまうことがある」


 ふむふむ……あれ? それって混沌の意味を考えるとマイナス方面な気がするんだけど?


「それでレオンはこの『混沌』について正直どう思ってる?」

「……さぁ、なんとも言えないが『混沌』と聞いていいイメージをもつ奴はいないよな」

「……だよね。『混沌』は選ばないことにするよ」

「それが良いだろうな。それなら職業は何にするんだ? 何か気になるものや気に入ったものはあったか?」

「特にはないかな、何かオススメはある?」

「それなら剣士か魔法使いがあればそれがおすすめだな。この二つは冒険者の中でも特に多いからいろんな人から学ぶことが出来るし、他の職業へ派生する種類も多いからな。それに職業なら自分に合わないと思ったらリスクなしに変えられるから、ドッペルを倒すまではこのどっちかが良いと思うぞ」

「なるほど、アドバイスありがとう。それなら……あっ、剣士って魔法使えるの?」

「もちろんだ」

「じゃあ剣士にしようかな」

「……そんな簡単に決めていいのか?」

「俺には剣士とか魔法使いとかの知識がないから、それならレオンのアドバイスに従った方が正しいかなって。それでどうやって選択すればいいの?」

「それなら剣士のところを押せば良いぞ」

「ほーい」


 剣士のところを押して……? 押して……押し……

 なんの反応もないんだけど!?


「レオン、反応しないんだけど」

「あん? おかしいな、壊れてるのか? ちょっと見せてみろ」

「あぁ……って、あっ!」


 何も反応を示さなかった瞳だったが、急に映っていた文字がごちゃまぜになりだし強く光りだした。

 すっごい眩しいんだけど! 何が起こってるんだ!?


 瞳から目を逸らし、少しすると光が収まった。何だったんだ?


「なんだ、普段より光がかなり強かったが反応してるじゃねえか。瞳を見てみろ、自分の名前や職業が表示されてるはずだ」

「どれどれ」


 レオンに言われ瞳を見てみると



 倉田優臣  称号:混沌



 と表示されていた。


「はあぁぁぁ!? なんじゃこりゃあ!? なんで……なんで『混沌』になってんの!?」

「なんだと? おい見せてみろ! ……まじだ」

「なんで? なんでこうなってんの!?」

「……分からん。間違えて押した、ってそれはありえねえか。何かおかしなことはなかったのか?」

「映っていた職業などがごちゃまぜになりながら強く光ったぐらい――」

「は? そんなの初めて聞いたぞ」

「……」

「おい、優臣。げっ、顔色が悪いぞ。少しそこのソファで横になれ! 構わないよな、蓮二さん」

「あ、あぁ。うわっ! ちょっとリーン君、今すぐ来てくれるかい?」



           ☆



 リーンさんに何かの魔法をかけてもらい少し落ち着いてきた。……ここまで気分が悪くなったのは初めてかもしれないな。


「すみません、取り乱してしまって。リーンさん、ありがとうございます」

「いえいえ、急に来てくれと連絡があったので驚きましたよ。また何かあったら遠慮せずに呼んでくださいね」


 そう言ってリーンさんは退出していった。何度も行き来させてなんか悪いなぁ……


「それで優臣君、もう大丈夫かい?」

「はい」

「とりあえず違う瞳でもう一度剣士を押してみよう。もしかしたらさっきの瞳に何か不具合が起きたのかもしれない。それに『混沌』になっていたとしても、失うものの条件次第ではすぐに変えられるかもしれないからね」



           ☆



「まさかこんなことが起きるなんてね……僕もびっくりだよ」


 あの後いろいろと試してみたが『混沌』から変えることはできなかった。変えようとする際失うものが表示されるはずらしいのだが、何も表示されることはなかった。イメージから多分『混沌』はマイナスだろう、最悪だ……




「優臣」


 部屋の隅で丸くなっているとレオンが声をかけてきた。声から察するにかなり心配しているようだ。


「大丈夫だよ、レオン。気持ちの整理はできた。それで? これからどうすればいいんだ?」


 本当はまだまだ部屋の隅で丸くなっていたいし、ものすごく不安である。だがここでこんなことをしていても何も変わらないのは分かりきっている。それなら今自分にできることをして少しでも前に進み、称号に頼らずにこの世界を生き抜いてやる!


「これで用事はほとんど終わったはずだ。そうだな蓮二さん?」

「うん。そうだ優臣君、良ければ君の持っている携帯などを売ってくれないかな? 研究に使おうかなって思ってるんだけど」

「だめです、だめです! これにはシークレット情報が――!」

「無理やり取ったりしないから落ち着いて!?」


 焦って言った俺に落ち着くよう言いながら藤堂さんは引き出しから袋を取り出した。


「それなら携帯は諦めて……支援のお金を渡そうかな。とりあえず1ヶ月分の銀貨15枚だね、普通に生活すればやっていけると思うよ。それとこの支援は1年続くけどその後は少しずつ返していくことになるからね」

「ありがとうございます。そういえば藤堂さん、その袋って何ですか?」

「これかい? これは袋だけどアイテムボックスといってね、便利なんだよ。ある生物の革をなんやかんやしたものに魔法をかけてるんだったかな? 上限はあるけどこんな小さな袋に物をたくさん入れることができるからね。使い方はこの袋に入れるものを大まかに一種類設定するんだ。例えばこれはお金、あれは袋はあっちの世界の物、みたいな感じでね。一つの袋に何種類も設定できたら便利なんだけどそうすると混ざっちゃうんだ……。今後の職人や魔研の研究に期待したいところだよ」


 やっぱり魔法の袋らしい。聞いた感じ今のままでも十分便利だと思うけどなぁ。


「そういえば優臣君、君はドッペルに襲われてこっちに来ただろ? そうなると服がボロボロになっていて着られないと思うんだけど、よければこっちで処分しておこうかい?」


確かに血だらけで破れていたからもう着ることはないだろう。


「じゃあお願いしてもいいですか?」

「もちろん。じゃあ次は優臣君が住む場所だけどこれはレオン君所属のギルドの寮になるね。ここにはレオン君が連れて行ってくれるよ」

「おう、任せろ」

「他には……あっちとこっちではルールが全然違うからそういったところは気を付けてね。現在僕が話しておくべきことはもうないかな……? よし! 優臣君、以上だ! 分からないことや困ったことがあったらここに来るかギルドのメンバーに聞くこと。初めての場所での情報は大切だからね。相談に来たらもちろんできる限り力になろう」


 藤堂さんは椅子から立ち上がり、手を差し出しながら言った。


「ようこそ優臣君、僕たちにとっての異世界へ。この世界は僕たちには厳しいが退屈することはないはずだ。お互い頑張ろうじゃないか」

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