身近にある死
もう一月も終わりそうですがあけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
何度目かとなる角を曲がるとこれまでとは異なる小部屋が少し遠くに見えた。なにが違うのかといえばその部屋は結界に覆われているのだ。
とくに気にした様子を見せないレオンたちに警戒しながらついて行き、ついにその部屋の前までに着いた。
「この部屋は?」
「まぁ入ってみればわかるさ」
そう言うとレオンは目の前の結界に描かれている緑色の魔法陣へと腕を伸ばした。するとレオンの身体は結界の中へ入っていった。
「自分たちも行くっすよ」
そしてそれに続いてミーナ、シルティも結界の中へと入っていき、最後に俺が中へと入り目にしたのは……
「えっ?」
大きな街だった。
「おぉ、やっぱり驚いてるね」
「そりゃあダンジョンの中にこんな場所があったら驚くよ。ここはなんなの?」
「ここはダンジョンの層と層の間にある、いわゆる休憩所だな。外にある結界で魔物は入ってこれないから安全だぞ」
「へー……それにしても外から見えたよりもかなり広いように見えるけど?」
「そういえば優臣はまだ比較したことがなかったか。結界の中は外で見えているよりも広くなっているんだ」
「そうだったんだ」
じゃあドッペルやディスパールの結界なども同じようなものだったのだろう。
「さて、とりあえず一層目の休憩所まで来たわけだがこれからどう――」
「やっぱりレオンじゃないか!」
「は?」
「いやぁ、奇遇だね!」
「なんでお前がここにいるんだ」
街の方からやってきてレオンに話しかけた人物、それはフランヴィーレのリヴォルだった。
「なんでってこの時期はだいたいどこも同じだと思うけど。レオンたちも優臣君……だったよね? がパーティにいるってことはダンジョンの案内に来たんだろ?」
「そうだ」
「やぁ優臣君、久しぶりだね」
そしてリヴォルとともにやって来た人たちの中に、俺に話しかけてきた人がいた。そいつの方を向いて顔を確認したが誰なのかいまいち思い出すことが出来ない。どこかで会った気がするんだけどなぁ……
「もしかして君、僕のこと忘れてるんじゃないのかい?」
「いやいやまさか!」
やばいバレてる!? えーっと……誰だったかな。彼は確か
「バイトだよね!」
いやぁ危なかった、なんとか思い出せて良か――
「……僕はバイゼルなんだけど」
「ごめん!」
どうやら違っていたようだ。ただ半分は合っていたからギリギリセーフだろう。
「ところでレオン、もし今暇なら僕と戦わ――」
「ないからな」
「そうか、残念だな……」
「だがこの時期だからな、またアレなら考えてやっても良いが?」
「本当かい!?」
俺が謝ってる隣ではリヴォルに戦いを挑まれたレオンがすぐに断り、代わりに何かを提案していた。提案されたリヴォルはとても喜んでいるけどレオンが言っていたアレとはなんなのだろうか?
「それより少し場所を移さないか? 入り口に俺らがいたら邪魔になるだろ」
「そうだね、じゃあみんな少し移動しようか」
そうしてレオンたちについていって入り口から離れようとしたその時――
「誰か助けてくれ!」
後ろから焦った声が聞こえてきた。振り返れば俺たちと同じ年ぐらいの男が担ぎ込まれて街へと入って来た。担ぎ込まれた男の腹には布が巻かれておりポタポタと血を垂らしている。
「見せてみろ!」
それを見たレオンたちは急いで男たちに近づいた。
「傷口を見るぞ」
確認を取ったレオンは巻かれた布を取って男の服を捲った。
「こいつは……」
傷口を確認したレオンは顔を曇らせた。俺からは傷口の周囲が血で赤く染まっていて詳しくは分からないがどうしたのだろうか?
「誰か回復魔法が使えるやつはいないのか?」
一瞬動きが止まったがレオンは大きな声で呼びかけ、そしてポーションを取り出して傷口のあたりへかけ始めた。
「レオン、病院へは連絡しておいたよ。それで彼の様子はどうだい?」
魔報で病院へと連絡を取ったらしいリヴォルがレオンに近づいて尋ねた。
「……」
「……あぁ、そうなんだね」
「こいつは、ダインは助かるのか!? 助かるんだろう? そうだよな!?」
リヴォルの問いかけに答えなかったレオンを見て不安になったのだろう。彼の仲間が泣きそうな顔をしながら改めてレオンに尋ねた。
「……こいつは――」
「ゴホッ……ガボッ!」
レオンが何かを言いかけたが倒れている男が咳き込んで口から血を吐きだした。
「ダイン!」
それを見てオロオロしていた彼の仲間たちは、彼の顔へ急いで近寄った。
「ダイン、大丈夫よ!」
「そうよ! きっと助かるから!」
彼女たちの言葉に反応して閉じていた目を少し開いた彼であったが、涙を流しながら「ごめんね……」という言葉を弱々しく吐き出して再び目を閉じた。そしてかろうじて上下していた彼の身体はぴたりとその運動を止めてしまった。
「ダイン! おい、ダイン! 起きろって!」
「いやああぁぁぁぁ!」
「なんで……どうして……さっきまで元気だったのに……」
それを見た彼らは死んだ彼の隣で、膝をつき顔を覆って泣き叫ぶのだった。
☆
俺はこの世界に来て何度も死にかけたが死ぬことはなくなんとか生き残ってきた。
だからだろうか? 戦いでピンチになってもなんだかんだ死ぬことはないのだろうと、もしかしたら心のどこかで思っていたのかもしれない。
だが彼が目の前で実際に死んで、それを嘆く彼の仲間たちを見て俺は実感することになった。死とはこうも身近にあるもので、それがいつ自分に降りかかるかは分からないものなんだと。
更新がすっかり遅くなってしまいました。もし待たれていた方がいらっしゃいましたら遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
次話は今回よりは早く更新したいところです。




