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ダンジョン

 ダンジョンというものを知っているだろうか? そう、ゲームなどで度々耳にすることのあるあのダンジョンである。

 ただダンジョンと一言で言っても様々な違いはあるものだ。階層ごとに景色が変わるもの、最終エリアにボスと呼ばれるものがいること、ダンジョン内で死んでも復活できるなど。

 そのダンジョンがこの世界にもあるようなのだ。ではこの世界のダンジョンがどのようなものかというと……



           ☆           



「ほえー、思ってたより中は広いし明るいんだね」


 俺は周囲を見渡しながらそんな感想が漏れた。

 今朝レオンから急にダンジョンに行こうと誘われたときは驚いたが気になったので誘いに乗ってみたのだ。ダンジョンの入り口、というか入り口と呼ばれている魔法陣は街から歩いて15分ほど離れたところにあり、辺りはしっかりと整備されていた。そこで売られているダンジョンの攻略に必要な道具を買い、魔法陣に乗ってダンジョンへと足を踏み入れた。


「ここは入り口にある部屋だからな。それじゃあ早速進むか」




「ほいっと」


 前からスススと現れたスライムに向けて炎の魔法を放つと小さな魔石だけがその場に残ったのでそれを回収する。


「威力を抑えた魔法なら魔力の受け渡しをしなくても使えるようになったんすね?」

「そうだね、やっとだよ」


 一緒に行動しているミーナが尋ねてきたので答えた。そう、俺はやっと魔力の受け渡しなしに魔法を使えるようになったのだ! ……威力が控えめなときという条件付きだが。


「ほう、意外と早かったな。やるじゃねえか」

「えっ、そうかな? へへへ、ってうわ!?」


 レオンの言葉に嬉しくなっているとダンジョンが急に揺れ始めた。なんだなんだ、地震か? 戸惑っているとその揺れはすぐに収まった。


「今のは?」

「ダンジョンの内部が作り変えられるときに起こる揺れ、あまりない。だから来た道を戻ってもまったくの別物になっている」

「えっ!? それって帰り道が分からなくなったんじゃ?」


 シルティのその説明に俺は不安になった。しかしシルティたちはまったく焦った様子がない。


「だから入り口でこれを買った」


 そう言ってシルティは入り口で買った方位磁石のようなものをマジックボックスから取り出した。


「これを見れば入り口までの道が分かる。持ってみて」


 言われたとおり俺も買ったそれを持ってみると光の線が前の道に現れた。


「おぉ、すげぇ!」

「これは入り口の魔法陣に反応している。これはこのダンジョン専用だから他のダンジョンに行ったらまたそこのダンジョンのものを買う」

「へー、なるほど」


 これはなかなか面白いなぁ。あれ? でもそうなると


「もし買い忘れたりしたらどうなるの?」


 そう。これを買い忘れてダンジョンに入り、そして内部の構造が変わった場合どうなるのだろうか?


「……」

「……」

「諦める?」

「えっ」

「今のは冗談。ダンジョン内には誰かしらいるはずだからその人たちと合流する」

「なるほど。……もし合流できなかったら?」

「諦める」

「嫌だぁーーー!」


 なるほど、これは絶対に忘れられないな。ただ万が一ということもあるかもしれないし……


「あっ、そうだ! ダンジョンの壁を壊すというのはどうかな?」


 せこい気もしなくもないが命が危険な状況でそんなことは言っていられない。壁を壊せばいつかは誰かしらと出会えるはずだ。


「「「……」」」


 レオンたちが顔を見合わせて無言になる。どうしたのだろうか?


「天才」

「そんな考えが思い浮かぶなんて流石っすね!」

「あぁ、早速試してみようじゃないか。さぁやってみてくれ」


 疑問に思ったのも束の間、レオンたちは俺の考えを褒めてきた。いやー、やっぱりそうだよね! こんなことを考えつくなんて自分が恐ろしいぞ。


「じゃあやってみるよ」


 レオンたちに促され壁に向かって立つ。壁を軽く叩いてみた感じ、そこそこの強度がありそうだったので自分に反動が来ない程度に強めの魔法を放つ。放った魔法は壁にぶつかり大きな音と衝撃、そして土煙を上げた。


「ぐっ」


 疲労感と痛みを全身に感じてその場に座り込む。使用する魔力量を抑えたつもりだったが、やはり威力の高い魔法を使うと魔法に魔力を引っ張られてしまうようだ。しかしその分威力は想定していたよりも高いものになっている。これなら……


「おっ」


 土煙が少しずつ静まっていき、ダンジョンの壁が見えたが現れたそれはまったくの無傷であった。


「嘘だろ……」

「予想通り」

「まぁそうだよな」

「やっぱり無理っすよねー」

「えっ」


 俺はショックを受けたのに他の三人はこの結果を当然のことのように受け止めている。まさか


「三人とも知ってた?」

「「「当然」」っす」

「先に言ってよ!」


 なんで言ってくれなかったんだ!?


「優臣の魔力量ならもしかしたらと思った」

「逆に聞くがこんなことを今まで誰も思いつかないと思っていたのか?」

「……」


 ……確かに今になって冷静に考えるとその通りだ。この世界に最近連れて来られ、今日初めてダンジョンに来た俺がパッと思いついたものだ。いつからあるか知らないが俺が来るより前からダンジョンはあるのだ。こんなことを考える人はごまんといただろう。

 ダンジョンに興奮していて頭が回っていなかったようだ。


「まぁまぁ、何事も経験っすよ。言われたよりも経験した方が分かりやすいし納得出来るっすからね」

「ミーナ……」

「そうだ、それに何かを思いつくってのは重要だ。それがすでに思いつかれたものであったとしてもな」

「さぁ、気を取り直して出発っすよ!」

「そうだな」

「うん。優臣、立てる?」


 座り込んでいた俺にシルティが手を差し伸べてきた。


「ありがとう」


 その手を掴んで俺は立ち上がり、今からはもう少し落ち着いてダンジョン攻略するように気を付けようと思ったのであった。


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