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孤児院

「クロさんにももう一度、きちんとお礼を言わせてください。あの時は本当にありがとうございました」

「うむ」

「いやぁ、無事で本当に良かったです」


 唐突に現れた女性から建物の中へと案内され、クロとともにお礼を言われた。それに対し俺はニコニコと笑いながら返事をしているが内心はまったくの逆であり焦っている。俺、この女性(ひと)助けたかなぁー!?


 クロと一緒にお礼を言われるということはクロと初めて会ったときに助けた女性なのだろう。しかし待ってほしい、あの時の俺は必死だった上に助けた女性をクロがすぐに送っていったため顔をほとんど見ていないのだ、つまり助けた女性の顔を全く覚えていない。……まぁ仮にしっかりと見ていたとしても今日まで覚えていられる自信はないが。

 だがこの女性はあの僅かな時間だったにも関わらずいつかお礼を言おうと俺のことを覚えており、そして探していたのだ。あっ、なんか申し訳なさがこみ上げてきた……


「あっ、私はエリザと言います。あの……ご迷惑じゃなければお名前をお聞きしてもよろしいですか?」

「もちろんです、俺は優臣です。よろしくお願いしますね」

「こちらこそ!」


 そんな気持ちを隠してエリザと挨拶を交わす。


「エリザから聞いてはいたが優臣だったのか。吾輩からも礼を言わせてくれ、ありがとな」

「困ってそうだったからね。それにしてもエクスはここによく来るの?」

「あれっ? エクスさん言ってなかったんですか? 優臣さん、エクスさんはここの経営者なんですよ」

「えっ」


 エリザからの言葉に耳を疑う。まだエクスとは他のメンバーと比べて少ない期間しか過ごしていないが感じるのだ、こいつは見た目は良いが中身は恭也レベルの変人だと。そんなやつが経営なんてできるはずないではないか。そう思い懐疑的な目をエクスに向ける。


「おい、そんな目を向けるのをやめてもらおうか。吾輩はな、子供が好きなのだ。好きなもののために全力でやるのは当然だろう」

「ふーん」


 キリッとした顔で言ったエクスに俺は謝った。確かにエルピリアに変人は多いがそれと同時にデキる人が多いのも事実だ。いくらエクスが恭也レベルの変人だからといって最初から疑うのは間違いだろう……間違いだよな?


「さて、吾輩は少し話があるからお前らは外にいる年長組と遊んでやってくれないか? 他のシスターは忙しそうだしな」

「オーケー、任せてよ」




「兄ちゃんたちがエリザお姉ちゃんを助けたの?」

「まぁね」

「マジで!? 兄ちゃんたちエリザお姉ちゃんを助けてくれてありがとう。それで……二人とも強いのか?」

「んー、どうだ――」

「こっちはよわよわじゃが我は強いぞ。我に勝てるものがいるなら現れて欲しいものじゃ」


 笑いながらクロが子供たちの質問に答えていく、なぜか極端なかたちで。俺はよわよわじゃなくて弱いであるしクロは自分の強さを盛りすぎではないか?


「えー、お兄ちゃんこの小さな女の子より弱いの? かっこ悪いー」

「「ぐはっ!」」

「ち……小さい……」

「かっこ悪い……」


 女の子の何気ない言葉にそれぞれ傷つく俺とクロ。大丈夫、少しずつ強くなってるから! いつか、いつか必ず強くなれるはずだから諦めずに頑張るんだ俺!



           ☆           



「お兄ちゃんたち助けてくれてありがとね、楽しかったよ! また来てね!」

「優臣さん、クロさん、また来てくださいね」


 入り口でエリザを含むシスターたちには小さく、そして子供たちには大きく手を振られて孤児院を後にした。

 子供たちと話していて分かったことだが、この孤児院にはあのロデスの事件の被害者が入れられたらしい。助け出したときは死んだ目をしていた子供たちが少しとはいえ笑っていたのを見てホッとした。


「どうだった?」

「楽しかったけど疲れたよ」

「失礼な奴らじゃったの」


 エクスに聞かれ思ったことを答える俺とクロ。


「だが可愛かっただろ? 子供ってのは素直で分かりやすくて良いよなぁ。その中でも特に少女は素晴らしいと思うんだ」


 しみじみと語りだすエクス。……なんか普段は感じない深い闇を感じて怖いんだけど。


「凄い話をすれば裏表なしに褒めてくれるし他にも――」

「あっ、ごめん。俺少し用事があるからここで」


 エクスの話を断ち切って別れを切り出す。このあと用事はないくまったくの嘘であるが俺の本能が告げているのだ、ここで逃げなければチラチラ闇を感じるエクスの話を延々と聞かされることになるだろうと。


「むっ、そうか。それは残念だ。じゃあまた明日な」

「あぁ」


 こうして俺はエクスとクロと別れることに成功した。

 ……クロ、ごめん! 心の中で俺はクロに謝った。別れ際に見たクロの恨めしそうな顔、あれは自分の運命を悟ったことによるものだろう。……今度お詫びに花園で何か奢ることにしようかな。




 ちなみに後日、この話を恭也とテオに話したのだが……


「子供が好き? あぁ、やっぱりあいつロリコンなのか」

「いや、多分違うと――」

「捕まらないといいがな」

「だからエクスは多分違うと思うよ?」

 

「エクスが少女について語りだしたから逃げた?」

「それは正しい行動だと僕も言わざるを得ないかな……」


 みたいな会話が行われた。変人の恭也と天使のテオにまでこんな反応をさせるなんて……やはりあいつは恭也レベルだったか!

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