眼鏡姿
「今日はありがとね」
エラたちの学用品などを一通り揃え終わり、俺はシルティにお礼を言った。考えていたより早く終わり、現在ちょうど小腹がすく時間である。
「構わない。私も楽しかった」
「そう言ってもらえると助かるよ、ところでまだ時間あるかな?」
「ある。どうしたの?」
「急な誘いに付き合ってもらったからお礼がしたいなって」
「それは嬉しいけどいつもお金に苦労してるのに大丈夫?」
「うっ!」
シルティの言葉が俺に刺さる。確かに普段なら辛い所だっただろう。だが今の俺は余裕があるのだ! ……少しだけ。
「だ、大丈夫だよ。それでどこが良いかな? 花園とか?」
パッと思いつくところと言ったらやはり花園であったのだが――
「花園は今日は休み」
というシルティの言葉が返ってきた。
「そうなんだ、よく知ってたね」
「よく行っているから」
そんなに行っているのか……シルティは意外と甘いものが好きなようだ。
「うーん……」
しかし花園が休みとなるとどうするべきか。そう悩んでいると
「それなら気になってるところがあるからそこでいい?」
とシルティが聞いてきた。
「もちろんだよ」
あまり他の店のことを知らなかったので正直助かった。……もし次にこんなことがあった時のために他の店をなんこか調べておこうかな。
☆
「ついた。ここ」
どうやら店についたようだ。店の前には小さな花壇があり、外見もレンガでお洒落に感じる。小さな路地裏を抜けたところにあり隠れ家的な感じがする。
「へー、お洒落な外見だね。じゃあ早速入ろっか」
店のドアを開けるとチリンチリンとベルの音が可愛く鳴り、微かに甘い匂いが漂ってきた。
「いらっしゃいませ」
そして俺たちを迎え入れる女の子の声が……
「……」
その女の子を見て絶句してしまった。なぜなら普段とは違って眼鏡をかけているが毎日のようにギルドで会うため見間違えるはずがない、あいだったからだ。なぜ彼女がここにいるんだ!?
「……」
あいもこっちを見て絶句している。が、先程から無表情で何を考えているのかさっぱり分からない。分からないのだが嫌な予感がすることだけは分かる。
俺はクルリと体の向きを変え、店の外に出ようと――
「何名様ですか?」
したのだがあいにガシッと肩を思いっきり掴まれてしまった。あいが何人なのか笑顔で聞いてきたが入った時とは違って作り笑いになっている。
「いや、どうやら間違え――」
「何名様ですか?」
誤魔化そうとしたが肩を掴む力をぐっと強めてあいは再び聞いてきた。やだこの笑顔めちゃくちゃ怖いんですけど!?
「ちょっとなに入り口で立ち止まってるのよ」
俺とあいが入り口でやりとりをしているとメアが横からスッと店の中に入って来た。
「あら、あいじゃない。5人だけどいいかしら?」
「分かりました、こちらへどうぞ」
「お待たせしました」
俺たちが注文したものをもってあいが席にやって来た。そして
「よっと」
俺たちの席に座った。
「あら、座っていいの?」
「ん? あぁ、あいつに言ったら少し休みをくれたからな」
「あいつ?」
「ん」
あいが向いた方を見ればテオが手を振っていた。えっ、テオもここにいるのか。それにテオも眼鏡かけてるし。
「まさかお前たちが来るとは思ってなかったぜ。しかもばれたくないやつにばれちゃったしよ」
そう言ってこっちを見てくるあい。こっちを見ないでくれ!
「なんでばれたくない?」
気になったようでパンケーキを食べながら尋ねるシルティ。
「お前たちは別にいいんだけど同郷の奴にばれるってなんかむず痒いだろ?」
「あっ、別に俺のことが嫌いとかじゃなかったのか。安心したぁ……ってことは恭也も?」
「あいつはオレがいるときはこの店に来ないようにおど……じゃなくて言ってあるからな」
今絶対に脅してるって言いかけたよね!?
「そうなの。ところであなたもテオも眼鏡をかけてるけどそれは?」
「あぁ、これか? ここはテオの親が経営している店の一つなんだけどな、その店のイベントの一つでいろいろと衣装を着たりするんだよ」
「へぇー、目を疲れにくくする魔術具じゃないのね」
パフェを口に含みながら頷くメア。
「あいお姉さんかっこいいです!」
「ん、そうか?」
「うん! アリスもそう思う!」
「そりゃありがとな」
「俺もそう思うよ」
「お前は少し静かにしてろ」
「なんで!?」
褒めたのにこんなの理不尽だ!
「あはははは、あいは照れてるだけだよ」
「あら、テオ」
あまりの理不尽に打ちひしがれているとテオがやって来た。あぁ、眼鏡をかけているテオも可愛いなぁ。
「それにしてもこんな人数でどうしたの?」
「エラたちの学用品を買っていた」
「あぁ、それで僕にあんな魔報を」
これだけで伝わるなんて相変わらずテオは察しが良いと思う。
「ん? テオにも送ったのか?」
「まぁね、テオ可愛いから女の子の好きそうなの分かるかなって」
「いやいや、僕は男だけどね」
「あっ、ごめん」
「ふふ、別に謝らなくていいよ。嬉しいし」
「そうなの?」
「こういう店をやっているとね。それに人から情報を集めるにしてもその方が集めやすいし」
「へー」
なにか少し不穏なことを言っていた気がするがこんなに天使なテオがそんなことを言うはずがないし俺の聞き間違いだろう。
「さぁ、そろそろ仕事に戻ろうか」
「そうだな、じゃあな」
時間が来たようで二人はそれぞれの仕事に戻っていた。二人ともいつもと違った可愛さで大変眼福でした、ごちそうさま。
「じゃあ」
「あぁ、また明日」
食べ終わった俺たちは少し店でお喋りしてからお金を払って店を後にし、ギルドでシルティと別れた。
「お兄さん、今日はありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「ん? お礼なんていいよ。それより学校に不安はない?」
「少しあるけど……大丈夫です!」
「私は楽しみ!」
「そうか、良かった。学校で困ったことがあったら言うんだよ?」
「「はい!」」
もうすぐ始まる学校のことや他にもいろいろなことを話しながら俺たちは我が家へと向かった。




