学校へ通う準備
「お兄さんお帰りなさい!」「お兄ちゃんお帰り!」
家に帰るとエラとアリスが出迎えてくれた。エプロンを着けているのと家の中から良い匂いがしていることから察するに昼食を作っていたのだろう。
「うん、ただいま」
近づいてきた二人の頭をなでながら応える。
「メアはいるかな?」
「はい、私がメアさんを起こした後見てないので部屋にいると思います」
「そうか、ありがとね」
「いえいえ」
お礼を言うとニコッと笑って二人は台所へ戻っていった。さて、じゃあ俺はメアのところに向かうかな。
「メアちょっといいかな?」
「いいわよ」
ドアをノックして尋ねるとすぐに返事が返ってきたため部屋に入るとメアはベッドに腰かけてくつろいでいた。
「それで何の用事かしら?」
「レオンからこの前の依頼達成の報酬を貰ったから持ってきたんだよ」
「あぁ、なるほどね」
そう言ってメアに報酬を手渡す。
「あら、意外ともらえるのね」
メアと同じように袋から出して確認すると中には銀貨が20枚入っていた。
「おぉー……じゃあこっちはどのくらいかな?」
依頼達成の報酬の額が予想より多かったことからディスパールを捕らえた報酬の額にも期待が持てそうだ。俺はレオンから貰ったもう一つの袋を取り出した。
「それはどうしたの?」
「これはディスパールを捕らえたぶんだって」
「なるほど、確かに頑張ったものね」
「さてと、いくら入っているかな?」
わくわくしながら袋を開け、中身を見て
「ん?」
という言葉が口をついた。依頼達成の報酬である銀貨20枚より目に見えて少なかったからだ。俺の予想だと少なくとも同等以上と思っていたんだけどなぁ……
だが中身を見てこれは俺の勘違いだったことが分かった。少しがっかりしながら袋から中身を取り出したがこれらがよく見る銀貨より少し大きいのだ。
「わぉ」
思わず間抜けな声を上げてしまった。そう、袋の中身は大銀貨だったのだ。結果、依頼達成の報酬より五倍多い大銀貨10枚が袋には入っていた。
「あら、凄いじゃない」
「いやー、びっくりしたよ」
思いもよらなかった臨時収入に嬉しくなる。
「これだけあれば買ってもしばらくは余裕があるわね」
「そうだね、じゃあ早速今日買いに行こうか」
普段なら何に使うか、どのくらい貯金するか悩むところだがここ最近はあることのためにお金を貯めているため使い道はもう決まっている。
「お兄ちゃん、メアさんご飯できたよ!」
「分かったよ」
廊下からアリスの声が聞こえる。ご飯ができたことを知らせに来たようだ。それなら伝えるのは昼食を食べながらにしようか。
「エラ、アリスこのあと出かけましょう」
ご飯を食べながらメアが話を切り出した。
「分かりました。どこに行くのですか?」
「買い物よ」
「買い物! 何買いに行くの?」
「あなたたちの学用品よ」
☆
「これなんてどうかしら?」
「うーん……あっ、私これが良いです!」
「私も!」
文房具売り場でエラたちがはしゃいでおり、その横にはメアとシルティがいる。なぜシルティがいるのかというと――
「ついでに私服を買い足しておきたいけど選ぶの自信ないからだれか誘わない?」
今はエラたちはそこまで私服を頻繁に着ることはないがこれからは増えるだろうということで私服を買うことを提案したのだがメアは似合うのを選ぶ自信がないそうだ。ということでテオ、あい、クロ、シルティに連絡し用事が入っていなかったシルティが付き合ってくれることになったのだ。ちなみにテオとあい、そしてクロはそれぞれ用事があるらしく断られてしまった。
そういうことでシルティが一緒にいるのだ。
「じゃあ次は制服のサイズを合わせに行きましょうか」
「はい!」
着替えるところを見るわけにはいかないため離れて待っているとシルティがやって来た。
「終わったから見てみて」
どうやらエラたちが着替え終わったようだ。どんな風に変わったか楽しみにしながらシルティについていくと制服を着たエラとアリスがいた。
「あっ、お兄さん! どうですか、似合ってますか!?」
エラが興奮しながら聞いてくる。
「うんうん、とっても似合ってて可愛いよ」
そう褒めるとエラは赤くなりながら「嬉しいです」と言った。照れてる姿も可愛いなぁ。
「ねぇお兄ちゃん! 私は!?」
「もちろんアリスも可愛いに決まってるじゃないか」
「えへへ」
「サイズはどうかな? 苦しくない?」
サイズがあっているかどうか気になり、エラたちにたずねると空気がピシッと固まった。あれっ、何この空気?
「優臣サイテー! 女の子になんてことを聞くのよ!」
「えっ、ちょっとまっ――」
「今のはデリカシーにかけてる、また外で待ってて」
「……はい」
メアとシルティにダメ出しをくらい店の外へと追いやられた。どうしてこうなった!?
「……」
今は私服を選んでいるとの連絡がシルティからあってから椅子に座って一人寂しく待っている。
……エラたちは勉強についていけるだろうか? ふとそんなことが頭をよぎった。エラたちは一年前までは学校に通っていたらしいのだが母親の体調が悪くなったのを機に通うのが難しくなったそうだ。一年のブランクがあるが大丈夫だろうか?
「お兄ちゃーん!」
ぼーとそんなことを考えているとエラとアリスがニコニコと笑いながら走って来た。……きっと大丈夫だろう、確信はないが二人の笑顔を見て俺はそう感じたのであった。




