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覚悟

「おはようございます、師匠」

「うむ、この一週間しっかり休んだか? もちろん毎朝の素振りはした上でだが」

「はい」


 あの依頼後から一週間、師匠から休みをいただいていたので体をゆっくりと休めることができた、一昨日を除いて。


「ところで師匠。いただいた刀を壊してしまったので新しく買いたいのですがどこで買えばいいですか?」

「前と同じものでよければ今すぐにでも渡すが」

「本当ですか!? 買います!」

「うむ。その前に壊れた刀を見せてくれぬか?」


 師匠に言われてアイテムボックスにしまっていた刀身と柄を渡すと、折れた箇所をじっくりと見始めた。


「……本当に叩きつけたようだな」

「はい……って、え? 師匠には話してないですよね?」

「レオンから聞いたのだ。ったく、刀はそう使うものではないであろう?」

「すみません……」

「まぁ勝つためであったなら仕方ないと思うがな。さて、じゃあ儂は刀をとってくるぞ」




「ほれ」


 戻って来た師匠は、刀と何故か盾を持ってきて台の上に置いた。


「少し確認したいことがあってな。この鎧を斬ってくれぬか?」

「はぁ」


 急なことに困惑したが盾に向けて刀を振るう。立てて置かれた盾は斜めに分かれ、小さな魔石がコロリと転がり落ちた。


「どうですか?」

「うむ……お主はこの盾に見覚えはないのか?」

「?」

「この盾はロデスの館で使用されていたものなんじゃが」

「はぁ……それがどうしたんですか?」

「お主はこの盾を斬れなかったそうじゃな」

「……そうですね。でもあのときは今より魔力量が少なかったし、それに盾も魔力で強化されていたから――」

「だから今も強化していたであろう」


 そう言いながら師匠は盾から外れて転がった魔石を手に取る。


「うっ」

「それに儂の見立てではあの時点で斬ることが出来たはずじゃ。なぜ一度も盾を斬ることができなかったか、分かるか?」

「……」

「お主に覚悟が足りなかったからじゃ」


 俺の目をじっと見て言ながら師匠は言った。


「盾を斬ってその勢いのまま殺してしまうかもしれない、だからお主は心のどこかでブレーキをかけてたんじゃろう」

「だって……」

「儂もギルドの連中も進んで人を殺したいとは思わない。だからといって仲間を危険にさらしていい理由にはならない」

「それは当然です!」

「ならばしっかりとしなさい。敵と仲間、自分にとってどちらが大切かは百も承知であろう。……もしお主が自分の気持ちを優先して行動を誤れば仲間を、大切なものを失うかもしれないと心に刻んでおきなさい」

「……はい」

「うむ……少し厳しく言い過ぎたの。少し縁側に座ってから素振りの練習をするかの」




「今日もありがとうございました」

「ではまた明日な」


 素振りの練習を終え、師匠の家から外に出た。


「……」


 師匠からの言葉を思い出す。


「晋冶から聞いておるがお主らが来たところは普段、命のやり取りは行われない。だから儂ら以上に人を殺すことに忌避感があると」


 師匠によればこの世界の住人も当然、殺人に対し忌避感はある。しかしそんな彼らから見て、異世界の住人であった俺らはそれが少し強すぎるように思うようだ。自分ではそう思わないがこれが世界の違いというやつなのだろう。


「だから強くなりなさい。そうすれば人を殺す以外にも方法をとることができるかもしれないのだから」


 と、最後に師匠はそう言っていた。


「強くならなきゃな」


 改めてそのように思った俺は、師匠の家の前でそう呟くのであった。

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