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スキルを得た代償

 そう、俺が一番分からなかったこと。それが優臣の属性だ、見れば全部の属性が表示されている。


「いやぁ……どういうことだろうね?」

「俺が聞いてるんだが」


 案の定というかこの男も分かっていないらしい。


「ふむ、吾輩には別段驚くほどのことでもないように思えるが? ドッペルを倒したらこうなるではないか」

「エクス、そうは言うが優臣はまだドッペルを倒していないはずだ。だよな?」

「そのはずなんだけど……」

「だがそうなった原因、もしくはそうなる予兆とかあったのではないか?」

「そうだ、何か思い当たることはないか?」

「うーん……」

「……」


 唸りながら必死に思い出している優臣をじっと待つ。すると「あっ」という声をあげた。


「何か思い出したか!?」

「ほら、俺ドッペルと闘ったときに魔力を流されたって言っただろ? もしかしたらあれかなって」

「あぁ……」


 確かにこいつはそんなことを言っていた。そのあと何も言ってこないためほぼ忘れていたが。


「だがなんで急に――」


 反対の属性が、と言いかけて一つの可能性を思い付いた。スキル『魔力覚醒』の影響だ。

 ドッペルに魔力を流された際、優臣は瞳に反応しないほど少量ではあるが反対の属性の魔力を獲得した。通常ではあり得ないがドッペルはいわばもう一人の自分。ほぼ同質の魔力故にそんなことが起きる可能性は十分ある。

 それが『魔力覚醒』によって底上げされ、結果瞳に反応するまでの量に至ったのではないだろうか。

 ……これは予想でしかないが、大きく外れているということはないと思う。


「蓮二さんに相談だな」


 俺はすぐに魔研支部に連絡をとった。ところが蓮二さん、今日はこの街にいないらしく明日の昼に帰ってくるそうだ。すぐに相談したかったがいないなら仕方ない。

 いや、むしろ急に連絡して明日なら蓮二さんの立場を考えると早い方だろう。


「というわけで明日魔研支部に行くぞ」

「分かった」


 これで目に見える部分で気になったのは片付いたか? じゃあ次は……




「とりあえず普通に魔法を撃ってみろ」


 優臣を連れていつもの訓練所に来た。そして暇なのかクロとエクスもいる。


「『魔力覚醒』でどれぐらい魔力が増えたのか見たいからな」

「ほいほい」


 優臣は気の抜けた返事をしながら出現した的に向かって火の魔法を放った。すると放たれた魔法は的を突き破り、壁にぶち当たった。「ドンッ!」という強い衝撃が全身を襲う。


「……」

「……」


 予想外の出来事に思わず無言になってしまう。そして魔法を放った本人である優臣だが、やつも驚いた顔をしている。


「優臣……お前、頭大丈夫か?」

「なにが?」

「誰も全力で、とは言ってなかったよな? まさか結界の中で戦ったときに強く頭をうったのか? それで普通の意味が分からないほど馬鹿になったのか?」

「馬鹿にしすぎだろ! 確かに頭はうったかもしれないけど流石にそれはないわ!」

「そうなのか? じゃあもう一度『普通』にやってくれ」

「分かってるよ!」


 そう叫んだ優臣が復活した的に再び魔法を放つ。しかし結果は先程より少し弱くなったか? と感じる程度しか変化がなかった。


「……」


 ふざけている時ではないのにも関わらず、さっきとまったく変わらない優臣に注意をしようとするとやつは片膝を床につき、驚いた顔でこう言ってきた。


「レオン、魔力がなくなった」



           ☆           



 普通にしたつもりだったのだが、どこかで魔力を込めすぎていたようでゴッソリと消費しているように感じる。レオンにもう一度やるように言われ、さっきより気を付けたのだが威力、そして魔力の消費量がまったく変わったように思えなかった。

 思うようにいかず焦っていると突然、倦怠感が襲ってきた。この感じは……鍛練中に何度かあった、魔力がほぼなくなったときになるやつか! 現に魔力に意識を向けるがまったく感じることができない。


「レオン、魔力がなくなった」


 唐突に訪れた倦怠感に耐えられず膝をつき、レオンに告げると慌ててレオンたちが近付いてきた。

 買っておいた魔力回復のポーションを飲んで魔力を回復する。しかしこれまでは魔力が満たされていく感覚があったのに、それをまったく感じない。それに両腕、とくに左腕に痛みを感じたので見てみると赤く腫れあがっている。


「大丈夫か!?」

「腕が痛いけどなんとか」

「見せてみろ……かなり腫れておるではないか」

「何やってんだ、お前!?」


 エクスに腕を見せると、一緒にそれを見たレオンに少し怒ったように問いかけられた。だが聞かれても俺も何が何やら分からない。


「俺が知りたいよ! これまで通りにやったらああなったんだよ。二回目なんて気を付けてたのに魔力が勝手にごっそりと流れてったんだよ」

「わざとじゃないのか?」

「こんなときにするわけないだろ」

「そうか……疑って悪かったな。それでマジでどういうことだ?」

「急激に増えた魔力に身体や感覚が追い付いてないんじゃろ」


 俺の腕を見ていたクロがそう言った。


「異常とも言えるほどに魔力が増えて制御ができなくなったんじゃろう。そしてその腕は魔法を放ったときに、魔力による負荷に耐えられなかったんじゃな。じゃから……」


 クロは俺の右腕をとって急に魔力を流し始めた。って


「痛い痛い痛い! ねぇ、痛いんだけど! クロ? クロさん!?」


 俺が悲鳴をあげると流されていた魔力が止まった。


「魔力を流せばこのようにかなりの痛みが襲う」

「なるほど、勉強になるな」

「それ実戦する必要あった!? 言えばいいじゃん!」

「お主みたいに急激に増える例はかなり稀じゃからな、どうなるか見せてやりたかったんじゃ。それにお主も良い経験になったであろう?」

「全然! まったく! 悪い経験だったよ!」

「そうかそうか。我は久しぶりにできて楽しかったぞ、感謝する」

「どう! いたし! まして!」


 こんなことで感謝されてもまったく嬉しくない! 

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