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大切なものを守るために

「優臣よ、人でも物でもよい。お主の大切なものが危険な状況にあったらどうする?」


 いつものように師匠の家へ行くと、唐突にそんなことを聞かれた。


「えっ? 急に何ですか?」

「良いから答えよ」


 ……もし自分の大切なものが危機的状況にあったら。それならば俺がすることはただ一つだろう。


「もちろん守りますよ」

「そうであろうな」


 なんだなんだ……って


「えっ」


 質問の意図を考えていると師匠が勢いよく近づいてきて、同時に持っていた木刀を俺の首のすぐ横で寸止めした。ヒュッという音が首を撫でる。


「今、まったく反応できなかったであろう。大切なものを狙う可能性が一番高いのは同じ人間だ。何かを守りたいと思うなら対人ができなければなるまい。というわけでその鍛錬を始めるがよいな?」

「お願いします」



           ☆           



「ここは……」


 場所を変えると言った師匠について行き、やって来たのはあの事件以降近づかないようにしていたエルピリアの地下の訓練所であった。


「レオンから話を聞いておる。なんでもお主の前に使っておったものが痛覚を90%に設定しておったせいで巻き添えをくらったと」

「はい」


 痛覚などの詳しい話は聞いてないが概ねその通りだろう。


「儂は初めににしておくから安心せよ」

「はぁ……」


 3割と言われてもあまりピンとこない。まぁ半分以下だしそれほどではないだろう。


「では早速始めるかの」

「お願いします」




「し、師匠! ギブ! ギブで、うぷっ」

「なんじゃ、もう終わりか?」


 地面に膝をつき、口を押えて吐くのを我慢している俺を見ながら師匠が問いかけてきた。30%ならと思っていたのが間違いだった。


「少し……少し休ませてください」

「仕方ないのう。ほれ、外に出て休むぞ」


 訓練所から出て倒れこんだ俺の横へ師匠が腰を下ろした。良かった……少しでも休めて本当に良かった……

 休めるという事実にホッとしチラリと自分の左腕を見る。午前だけで何度も経験したが未だに不思議な感覚である、訓練所で確かに師匠に腕を斬り落とされたはずだが外に出ると元に戻っているのだから。


「うーん」

「どうした?」

「この結界を張った訓練所で失った腕などが無事なのが不思議に感じまして」

「ふむ、何やらデータ化がなんとかと言っておったな。まったく、若いもんにはついていけんよ。……それはそうと優臣よ、身体を完全に制御しようとしとらんか?」

「?」

「儂には身体は反応しておるのにそれをあえて抑え、結果ぎこちなくなって動きが遅れているように見えるが」

「そうですか?」

「感覚に身を預けることも戦いでは重要じゃぞ」


 自分ではよく分からないがそうなのだろうか? 考えていると


「優臣、じいさん、いるかー?」


 籠を持ったあいが部屋に入ってきた。


「あれ、どうしたの?」

「鍛錬してるって聞いたからな、差し入れを持ってきてやったぞ」


 渡された籠の中を見るといくつかのおにぎり、そしてきんぴらごぼうといったおかずが数種類入っていた。


「これは?」

「あ? オレが作って来たんだよ」

「えっ、あいが?」

「なんだ、意外か?」

「いや……」


 正解である。普段の言動を見ているとできないのかと思っていたのだが……誰とは言わないが彼女も少しはできるようになってほしいものである。




「ごちそうさま」

「おうよ。ところでじいさん、鍛錬のほうはどうだ?」

「そこそこかのう。技術は叩き込んでおるが動きがのう……どうも身体を制御しようとしすぎておるようでな」

「ふーん……魔力じゃなくて?」

「ふむ?」

「元からこっちの世界の住人には当たり前すぎてよく忘れられるけど、オレら異人にとって魔力の制御は慣れるまで大変なんだよ」

「なるほど、そういえばそうであったな。……優臣よ、お主は魔力についての知識はどの程度あるのかの?」

「どのくらいですかね?」

「やれやれ……いちから確認していくかの」




「属性が6つあることは知っておるの?」

「はい、『主』2つに『副』4つですよね。そういえば『主』っていつ使うんですか?」


 『副』なら想像しやすいのだが。例えば赤なら火で燃やす、緑なら風で切り裂くなど。だが『主』である白と黒はどうだろうか? パッと思いつくものがない。


「『主』ならお主ももう武器や防具の強化に使っておるだろう。ただの魔力を流していたつもりかもしれんが強化は『主』の属性じゃ」


 そうだったのか……魔力の管理は防具に付与された魔方陣がしてくれていたため意識したことがなかったな。


「そして魔法の場合、白なら威力増加、黒なら反転である」

「反転ですか?」

「そうだ。分かりやすい例として回復魔法に白を加えると効果が上がり、黒なら負傷となる」

「ほー……」

「これで魔力について理解したかの?」

「たぶん大丈夫です」

「……不安になる答えじゃのう。とりあえず今から武器に魔力を纏わせるように全身に纏わせてみよ」

「……くっ……ん? ふぅ……あ゛ぁ゛ぁぁ! これでどうですか?」

「できておるが……はぁ。これをすぐ、いつでもできるようになりなさい。できるようになったら次は動きながらじゃな」

「えっ」


 これをすぐに? しかも動きながら? 武器と違ってイメージしにくく、中々うまく纏わせることが出来なかったことを?


「『えっ』ではない、いいから解除してまた纏わせなさい」

「……」


 俺、このスパルタに耐えられるだろうか……?

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