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かわった愛のかたち

「良かった……」


 目が覚めると男に戻っていた。ちゃちゃっと着替えて一階に降りるとエラが朝食の準備をしていた。


「おはようごさいます。あっ、お兄さんに戻っちゃったんですね」


 残念そうに、しかし安心したように言うエラ。昨日一緒に外を歩いて分かったことだが、エラは姉が欲しかったようなのだ。

 というのもエラたちの家は貧しく幼いアリスもいたため、エラはなかなか甘えられる状況ではなかったらしい。

 そして現在は一応メアが彼女らの姉というポジションにはなっているがあれでも王女という立場があるため、とくに外では大っぴらに甘えることはさせてもらないそうだ。

 ということで何のしがらみもない俺がマコとなったことでエラは存分に甘えられるようになったわけだが……昨日のエラは凄かった。何が凄かったってこれまで甘えられなかった分を取り戻すかのように、普段おとなしいこの子がはしゃいでいたのだ。

 外にいる時は腕に抱きついてきて、家に帰ってからはソファに座っていれば膝に頭をのせてきたり……

 これなら可愛いで済むがこのあとが危なかった。覚悟を決めて風呂に入っているとエラが一緒に入ってこようとしたのだ。

 流石にまずいと思ってメアを呼んだことで未遂に終わったが……メアのあのゴミを見るような目で通報しようとした姿を俺は金輪際忘れることはできないだろう。


「おはよう、エラ。俺も手伝うよ」


 そんな社会的死という危機を乗り越えた俺はまた一つ精神的に強くなったように感じたのであった。





「よく来た優臣! さぁ、俺を助けてくれ!」


 ギルドに向かうと後ろに手を組んだリアの前で正座をしているレオンが助けを求めてきた。なんだこの状況?


「えっと……なにこれ?」

「優臣、おはよう。昨日レオンが浮気をしたらしいから問い詰めているの」

「えっ、レオン最低だな」

「違う! 俺はして――」

「今は黙ってて。それで相手なんだけどマコという名前で」


 うん?


「髪の色や瞳の色は……そうそう、優臣と同じだったらしいの」


 それ俺じゃねぇか!

 レオンを見ると顔が説明してくれと訴えているように見える。


「えっと、リア。それ俺なんだけど……」

「レオンも同じことを言うの。でもあなたは男でしょう?」

「いや、そうなんだけど。恭也の薬で――」


 やっぱりそういう反応になるよな。詳しくリアに説明をしようとすると言葉をさえぎってリアが精神攻撃をしてきた。


「あ、わかった。優臣が女装をしていたのね。つまりレオンの浮気相手は優臣ということね」


 俺とレオンが付き合う? ……、…………ヴォェ。

 想像したら朝ご飯をリバースしかけた。見ればレオンも口を押さえている。この王女はなんて恐ろしいことを言うんだ!


「違う! 恭也が悪いんだ!」



           ☆           



「そういうことだったね。もう、レオンったら。しっかり説明しなさいよ」

「いや、俺は説明しようとしたがお前が黙れって言ったんだろ」


 なんとかすべての責任を恭也に擦り付けることに成功し、リアに説明することが出来た。


「そういえばそうだったわね。えっと、ごめんね?」


 リアが謝ると同時にカシャンッと音をたてて後ろに組んでいたリアの手から何かが落下した。あれは手錠……か?


「えっとリア……さん?」

「レオン、どうして他人行儀なの?」

「それはなんですか?」

「……きゃっ」

「そんな可愛く言っても誤魔化せないからな! お前それで何するつもりだったんだ!?」

「えっとね、これは婚約指輪なの。私のレオンって分かるようにつけてあげようかなって」

「そんな婚約指輪があるか! それは手首につけるやつだろ!」

「? 首の方が良かった?」

「首輪でもねぇよ! 普通のにしてくれ!」

「普通のだったら貰ってくれるの?」

「あっ……い、いや、いらないぞ! だいたい俺とお前は婚約者というだけであって付き合ってるわけじゃないからな!」

「そう」


 なんだこのバカップルは。


「良かったなレオン。こんなに愛されてて」


 俺は遠慮したいが。


「お前頭おかしいだろ!? こんな愛され方があるか! 愛について一度調べてこい!」


 やれやれ、人のことをおかしい奴みたいに言いやがって失礼な奴だ。




 バカップルと別れて恭也に男に戻ったことを報告しに行くと、マヤと一緒にいた。


「おはよう」

「おう、男に戻ったんだな」

「あら残念、可愛かったのに」

「勘弁してくれ。二人は何をしてるんだ?」

「あぁ、俺はマヤの手伝いだな。ポーションの在庫が少なくなってたからな」

「へー」


 ポーションか……そういえば手持ちが少なくなってきてたしいくつか買っていくか。


「それならいくつか売ってくれるかな?」

「いいわよ」

「あっ、それとポーション作るところ見ていって良いかな?」

「別に面白いもんじゃないが……それでもいいなら」

「あぁ」


 ポーションを買ってふと、どうやって作っているのか気になったため聞いてみると許可を貰えた。ポーションを買って邪魔をしないように少し離れたところに移動する。


「……」

「……」


 恭也は黙々と何かの植物を切り続け、マヤはその切られた植物に魔法をかけ、できたポーションを瓶に詰めている。こうやって見ていると普段はアホでバカに見える恭也もかっこよく見えるから不思議なものである。


「ふう、今日はここまでにしましょ」

「分かった」


 10分ぐらい見ていただろうか? マヤの合図により調合は終わったようだ。


「どうだったかしら?」

「なんというか地味だけどかっこよかったよ」

「ふふ、ありがとう。そうだわ、マヤお姉さんとつけてもう一度言ってくれないかしら」

「えっ」


 何故かいきなり変なお願いをされる。そういえば自己紹介でもお姉さんと呼べみたいなことを言っていたような。まぁ何か減るわけでもないしいいか。


「かっこよかったよ、マヤお姉さん」

「キャーーーー!!!」


 お姉さんと言った瞬間、マヤが悲鳴を上げた。なんだ!?


「恭也! これはどういうこと!?」

「マヤは俺と同じでミラ……姉の弟子ということは知っているだろ? マヤはミラ姉の影響を変な風に受けてお姉さんと呼ばれることに快感を覚えるんだ」

「えぇ……」


 見た目はおっとりとしていて常識人と思っていたが彼女もやはりエルピリアのメンバーだったようだ。

 このギルドにまともな奴は俺とテオとあいしかいないみたいだ。改めて思うが大丈夫か、このギルド?



           ☆           



「レオン」

「うん? どうした」


 リアがギルドに突撃してくるというハプニングがあったため、夜に遅れている仕事をギルドでしているとテオがやって来た。何かあったのか?


「どうした?」

「エクスから連絡があったよ。一週間後に仕掛けてくるってさ。数は52人でその内一人が未だ不明みたいだよ」

「ふーん……今回の情報はそれだけか?」

「そうだね」

「はぁ……もう少し何か欲しかったな。あいつと直接連絡が取れたら楽なんだが無理か?」

「それが難しい状況なんでしゃない? それで六日後の夜だって」

「分かった。…………」

「どうしたの? ……あぁ、優臣のことで悩んでるんだね」


 こいつは……本当にいつも鋭いな。心の中をよんでいるんじゃないかと錯覚しそうになる。


「そうだ。模擬戦ができても実戦が、試合じゃない命をかけた戦いができないと意味がない。あいつはここに来て一ヶ月経つし、ちょうどタイミングよく今回の件がある。だから――」

「参加させようというんだね。確かに僕たちがフォローをすれば問題はないだろう。ただ僕はもっと早く経験させると思っていたけどね。君は彼に少し甘すぎるんじゃないかい?」

「……ちっ、ジジイに連絡しておくか。六日後だったな?」

「そうだね」


 テオに甘いと言われてしまう。だが仕方ないだろう、あいつは顔は似ていないくせに雰囲気はあいつに似ているんだ。俺が兄のように思っていた、今はこの世にいないあいつに。

 六日後、か……この経験があいつの糧になってくれればいいのだが。

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