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閑話 面影

「こっちに酒を二つ頼むよー!」

「はいはい! すぐ持って行くわよ!」


「ミラさん! こいつ酒の飲みすぎで吐きそうだって!」

「人一人入るごみ箱持っていくから突っ込んでちょうだい」

「吐き気が止まったって!」

「あらそう」


「ミラ姉~」

「あんたはアタシを姉と呼ぶ歳じゃないでしょ! それで何かしら?」

「呼んだだけ――」

「潰すわよ?」

「何を!?」




「あー、今日も疲れたわね」


 営業時間を終えて洗いものもすべて片づいているため、誰もいなくなった店の奥で背を伸ばす。


「はあ……流石に一人でするのも大変だし誰か雇おうかしら?」


 この仕事を始めたときは一人でやりたいって気持ちがあったからアタシだけでやってきたけど最近少しきつくなってきたように感じてきたのよね。

 そう考えながらふと店の入り口がある方に目を向けると、カレンダーが目に入ってきた。


「……そういえばそろそろ一年が経つわよね」


 確かあいつの命日にこの街を出たから昨日で一年のはずである。


「ということはもうそろそろ帰ってくるわね」


 現在ギルマスがいないエルピリアはテオとシュヴェルトさんによって運営されている。上手くやっているとは思うけど一部が暴走し始めているのよね。……主にアタシのバカ弟子とかが。どうしてあんな風になっちゃったかなぁ。

 テオは普段が優しすぎるしシュヴェルトさんはなかなかギルドに来れないからなぁ、アタシが行けたら良いんだけど店があるし……やっぱりレオンがいた方が助かるのよね。


 明日、ギルドの様子を見に行こうか悩んでいると、店のドアを開ける音、そしてアタシを呼ぶ声が聞こえてきたのでとりあえず返事をしながら向かう。

 するとそこにはレオンと初めて見る子がいた。


 えっ……? 

 

 二人を見て思わず驚いてしまったが変に思われないように隠す。……それにしても


「ミラ姉でしょ!」


 アタシのことはミラ姉と呼ぶように言っているのに、一年の間にレオンがさん付けで呼ぶようになっていたので注意をしたが、渋ってきたので脅しの意味でニコッと笑うとすぐにミラ姉と呼び直した。

 この呼び方をやめたいならアタシより強くなることね!



           ☆           



「はあ……」


 二人が店を出てからため息をつく。アタシも歳なのかしら……

 あの二人が並んで立っているのを見て、かつて共に旅をした晋冶とあいつの面影を感じたから驚いてしまった。レオンはともかく優臣はあいつとはまったくの無関係なのに。


「それで出会ったのは昨日……ね」


 昨日はあいつの命日、そんな日にあいつの面影を感じさせる子に出会うなんて何かが仕組まれているんじゃないかと思えてしまう。

 そんなはずはないと分かっているのに。


「……いけないわね、悪い風に考えてしまわないようにしていたのに」


 優臣はドッペルによってこの世界に連れて来られたと言っていた、彼はこれから苦労することになるでしょうね。戦闘はもちろん、文化や考え方の違いでも。そして参ってしまうかもしれない。

 そうならないことが一番だけど、もしそうなったときのためにお姉さんであるアタシが心休まる場所を作っておかないとね。


「そう考えるとやる気が出てきたわ。明日も頑張るわよ、アタシ!」

これにて閑話はひとまず終わりとなります。

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