閑話 お帰りはグー
「レオンが明日の昼前に帰ってくるらしいよ」
「なに!?」
酒を飲んでいるとテオがギルド内にいる俺らの注目を集めてそう言った。
「それは確かか?」
「うん、今連絡があったからね」
「マジか!」
どうやら本当であると確信したことでギルド内が騒がしくなる。それはそうであろう、俺にとって坊ちゃんが歳の離れた弟、はたまた子供のような存在であるように、このギルド内で坊ちゃんのことを大切に思っていない奴など一人もいないだろう。
そんな坊ちゃんが一年ぶりに帰ってくるのだ、騒がしくならない方がおかしいってもんだ。
「あと異人を一人連れてくるそうだよ」
「彼は修業に行ってたんじゃなかったの?」
「そのはずだけど……なんか拾ったって言ってましたね」
「そんな捨て猫じゃないんだから……」
さらに情報が入る、どうやら異人を連れてくるらしい。
「てことは新メンバーだろうな」
「だな、そして坊ちゃんが連れてくるってことは変人に違いないな」
「これでさらにこのギルドが騒がしくなりそうね」
坊ちゃんが連れてくる奴は何かしらに秀でていると同時に変人であることが多い。今回もまた変人なのかねぇ。
「俺みたいな普通の奴でももちろん歓迎するがな!」
「はっ? あんたが普通? 寝ぼけてるの? それとも酒の飲み過ぎかしら?」
「お前が普通だとこのギルドのほとんどの奴が普通ということになるな」
「あぁ!?」
また始まったよ。まともか、まともじゃないかの口論が。どう考えてもあいつらも後者だと思うんだがなぁ。俺? 俺は当然まともだろ。
「まあ落ち着けお前ら、バーンと比べれば俺らはまともだ」
「それもそうだな」
「熱くなりすぎてしまいましたね」
「なんだとやんのか!?」
我関せずの態度をとっていたらこっちに飛び火してきた。その喧嘩、買ってやろうじゃねえか!
「それで明日どうするよ?」
「そりゃやっぱり何かしらはするだろ」
「そうだよなぁ」
しょうもない争いをテオに止められた俺たちは、坊ちゃんをどのように迎えるか話し合っていた。
「クラッカーか?」
「いや、それは普通すぎるだろ」
「うーん……リアちゃんを呼んでおくとかどうかしら?」
「急には無理だろ、それに後が怖い」
やれやれ、こいつらは何も分かっちゃいない。
「お前らはバカか?」
「うわっ、俺の中の『バカって言われたくないランキング』三位の奴にバカって言われた……」
「ちょっと傷ついてるじゃない、謝りなさいよ!」
「傷ついてるのは俺の方なんだが!? ってそうじゃなくてだな。坊ちゃんは修業に行って帰ってくるだろ?」
「そうだな」
「ということは自分がどれぐらい強くなったか知りたいはずだ」
「……なるほど、あんたの言いたいことが分かったわ」
「ああ、つまり坊ちゃんに勝負を仕掛ければいいってことだな。……意外と良い案じゃねえか?」
「俺、バーンのこと少し見直したぜ」
どうやらこいつらもいけると思ったようだ。
「じゃあひとまずこの案でいくぞ、それで誰が坊ちゃんに仕掛ける?」
「俺だ!」
「私よ!」
「お前らじゃ荷が重いだろ、俺がやる!」
喧喧囂囂となった結果、テオの提案でくじ引きとなり俺を含む三人で仕掛けることが決まった。
「それで誰が最初にいく?」
「やっぱりバーンじゃねえか?」
「俺もそれがいいと思うぞ」
「魔法は……怒られそうだから使用はしないでおくか」
誰が仕掛けるか決まれば次は作戦会議である。完璧にするために他の奴らにも手伝ってもらっていると
「そういえば異人の子が先に入ってきたらどうするの?」
という意見が上がった、確かにな……。この案は勢いが大事だ、後から坊ちゃんが入ってくるとやり辛い。
「だがレオンを先に入るように仕向けると勘付かれるだろ」
「うーん……とりあえず外でどっちが先に入るか見ておいて、連絡する奴が必要だな。エニスとミーナは……そういえば二人ともいないのか」
「それなら俺がその役を引き受けよう」
「助かる、あとは異人のやつが先に入ってきた場合の案も考えておく必要があるな」
「それは私たちが考えるわ」
「楽しくなってきたぜ」
細かく案を詰めれば詰めてるほど、周りのテンションが上がっていくのが分かる。やはり坊ちゃんに久しぶりに会えるという事実がそうさせるのだろう。
「明日が楽しみだ」
☆
「レオンが先だ、そして異人の子を少し後ろに下げたぞ」
ギルド内で待っていると連絡が入った。坊ちゃんが先で、さらにどうやら異人の奴を少し後ろに下げたらしい。
「ばれたか?」
「そんなことは関係ねえ、俺たちは全力で坊ちゃんを歓迎するだけだ」
「だな、さあ行くぞ!」
そうだ、ばれていようがいまいが関係ない。ギルド一同、坊ちゃんが帰ってくるのを楽しみにしていたことをを全力で伝えるだけだ。
「お帰り坊ちゃん!」




