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初めての大会

「でっか……」


 目の前に大きな城が建っている。


「さっさと行くぞ」

「ほーい」


 レオンに急かされたためついていく。今日はついに初めての大会の日である。


「王都にはこんな立派な城があったんだね」


 そう、俺たちは現在大会に出場するために普段いる街、クリューンから王都であるリーチェルハイトへと来ているのだ。

 大会に出るのは俺とシルティだ。ダンケルハイトさんから許可がもらえなかったらしくメアは出ないそうだ。


「ほら、さっさと受付してこい。あとこの紙も提出だ」

「これは?」

「この大会は新人が所属したいギルドに入れるようアピールするものでもあるからな、そういった文章が必要なんだ。ただお前らはもううちに所属してるからな、俺が考えておいたぞ」

「そりゃどうも」

「じゃまた後でね~」

「行こう」

「そうだねシルティ」




「あいつ異人か?」

「くそっ……」


 大会のルールなどの説明を受けて控室に入るとすでに何十人もおり、その人たちに交じって待機していたのだが何やら敵意を感じる。何もしてないのに何故だ!?


「ねえシルティ、なんか俺たちめちゃくちゃ見られてないか?」

「仕方ないこと。これはアピールをする場、負けるより勝った方が印象は良い。異人は短期間で自分たちより強くなる人が多いから警戒したり、一部だけど嫌う人もいる」

「そんな理不尽な……」

「と、向こうも思っている。こっちは何年もやってきたのに異人は数か月から一、二年で自分たち以上になる奴もいるから理不尽だ、と。そこまで極端に短い期間で強くなるのはほんの一握りなのに」

「俺まったく関係ないじゃん」

「でももうギルド、それもエルピリアに所属してるからその妬みもあるかも」

「なんで!?」

「エルピリアは有名、それに加入を希望してもなかなか承諾されない。エルピリアから声をかけられて加入することがほとんど」


 知らないうちにめんどうなことになってるなぁ。


「でも大丈夫」

「何が?」

「みんな最終的に負けるから」

「?」

「私が優勝する」


 シルティがそう言った瞬間、視線が一気に集まった。何言ってんのこの人!? 怖いもの知らずってレベルじゃないぞ!


「そ、そう……」

「面白いことを言うね」


 と見知らぬ男がやって来た。


「誰? 優臣君の知り合い?」

「いいや」


 歳は見た感じ近いようだがこんな男は知らない。


「僕はバイゼル、優臣君の対戦相手だよ」

「???」

「……君はトーナメント表を確認してないのかい?」

「そういえば忘れてた」


 言われてみると確かにバイゼルという男と戦うことになっている。


「それで何の用かな?」

「挨拶をしに来たんだよ、よろしくね」

「よろしく」

「そろそろ僕らの出番だから一緒に行かないかい?」


 確かにこいつの言うとおりそろそろである。


「そうだね、じゃあシルティ言ってくるよ」

「うん」




「君は異人なんだってね」


 共に歩いているとそう聞かれた。


「そうだよ……それが?」


 こいつも何か言ってくるのかと思い警戒する。


「僕は異人にあまり良い印象を持っていない。けどだからと言って異人という一括りにまとめるのも何か違うと思う、だから君に声をかけたんだ」

「……」


 何が言いたいのだろうか、こいつは?


「まあお互い悔いが残らない勝負をしようねってことさ。それじゃあ」


 そう言い残し去っていった。なんだったんだあいつは……?

 まあどうでもいいや、入場口に向かおう。




「さあ一回戦、第十六試合目の始まりです!」


 入り口から司会の声が聞こえてくる。外が少し見えるのだがかなりの人数がいる。やべっ、緊張してきた。深呼吸して落ち着こう。

 無心にただひたすら深呼吸をしていると係員に肩を叩かれた。


「優臣君、対戦相手のアピールが終わったから行ってちょうだい」

「はい」


 なんと深呼吸をしているうちに相手の、誰だったか……とにかくアピールが終わってしまったらしい。


「さあ対戦相手はなんとエルピリア所属、優臣選手! 優臣選手のアピールはギルマスのレオンさんが書いたようですね。えーと、『優臣はこの世界に来てわずか一ヶ月足らずで三回死にかけたがそれを乗り越えたやつだ』」


 どんなアピールだよ、しかも一回はレオンのせいだし!


「『来たばかりでその危機を乗り越えたあいつに俺は可能性を感じている。みんなも楽しみにしてくれ、あいつはどんどん強くなるだろう』とのことです! いやー、レオンさんにそう言ってもらえるなんてこれからが楽しみですね! ……すでに三回も死にかけているというのは同情しますが」


 どうやら明確な死というものを一ヶ月足らずで三回も感じるというのは、元の世界より比較的危険な世界であるこの世界でも異常らしい。そりゃそうだよな! もう少しこの世界は俺に優しくしてくれても良いのではないだろうか?


「さて少しテンションが下がってしまいましたが始めてしまいましょう。審判準備は良いですか? 開始!」


 俺と相手が位置に着き、審判も準備ができたため開始の合図がされた。まずは一勝だ!




 開始の合図とともにまずは様子見ということで魔法を放ったのだが、相手も考えることは同じだったようで魔法がぶつかり合い消滅した。


「いくよ!」


 掛け声と共に相手が突っ込んでくる。それに対して魔法を放ち数発直撃したのだが止まる気配がない。あの防具、魔法への耐性が高めのものか?

 ポーションなどの回復アイテムは持ち込み不可なため極力ダメージを負わない立ち回りをすると思っていたのだが一気に勝負を決めに来たようだ。


「ふっ!」


 そのままの勢いで薙いできた剣を刀を使って滑らせる。ドッペルと闘ったときの俺とは違うんだよ!

剣を滑らせたことで相手の勢いは止まらず、背中ががら空きになったため振り向いて刀を振り下ろそうとしたのだが


「そりゃあ!」


 身体をひねって勢いを殺さずにそのまま剣を薙いできた。


「えっ!? ……くっ!」


 予想外の攻撃を無理やり手首を返すことによって剣と自分の身体との間に刀を滑り込まして防ぎ、直ぐに魔法を放って距離をとる。刀に纏わす魔力を増やしたことで刀が欠けることはなかったのだが


「……っ!」


 無理やり手首を返し、さらにその状態で衝撃を受けたため痛めたみたいだ。刀を握ることは出来るのだが、振ることできる回数は減るだろう。

 すぐに刀を構えるがどうやら相手からの追撃はない、今ので終わらせるつもりだったのだろうか? なんにせよ体勢を立て直す時間をくれるのはありがたい。

 今度はこちらから仕掛けさせてもらおうかぁ!


「はっ!」


 刀を鞘に戻し火、風、そしてこれらを組み合わせた魔法を連続で放つ。相手もそれに合わせて魔法を放ち、撃ち落とそうとしたようだが間に合わず二発直撃した。

 よしっ、上手くいった! これまで魔法のレベルが低かったためメインに使うことが出来なかったのだが、せっかく魔法がある世界で魔法を使うことができるのだ、当然鍛錬はしていた。

 そして大会前ギリギリにようやく、赤の魔法のみであるが実戦でメインを張れるというお墨付きを師匠からもらえたのだ。


「まだまだぁ!」


 魔力も増えてまだ余裕があるため、動きながら休まず放ち続ける。


「くっ……」


 相手も撃ち落としてはいるのだが間に合わないため分が悪いと感じたのだろう。再び突っ込んで来た。のだが、同じことをさせるわけがなく今度は足元に魔法を放ち


「ぐぅっ!」


 勢いよく転倒させることに成功した。すぐに体勢を立て直し立ち上がってきたが、


「ふっ!」


 足に当たったのを認識すると同時に一気に距離を詰める。そして防御する暇を与えず刀を抜き放ち、斬り捨てた。

 防具を魔法の耐性に割いていたからだろう、魔法による物理的な耐性はあまりなかったようで防具を切り裂き腹へと斬撃が通っていた。

 そしてそれが決め手となったのだろう、相手の身体は薄く消えていった。


「勝負あり! 勝者優臣!」

「よっしゃー!」


 名前が呼ばれると同時に思わず声を上げた。しかし、それは観客からの歓声でかき消されたようだ。勝てて良かった……そうだ、確認しに行かないと!



 控室にもどるとシルティはいなかったが先程の対戦相手は座っていた。良かった……

 説明で先日レオンとリヴォルが勝負した時と同じような結界が張られているとあったがやはり心配になるものである。そのため確認しに来たのだ。


「お疲れ、いい試合だったよ」

「そっちこそ」


 相手も俺に気付いたようで声をかけてきた。


「じゃあ僕はこれで帰るけど君は頑張ってくれよ? またね」


 そう言って控室から出ていった。嫌味の一つでも言われるかと思ったけどそんなことなかったな。意外と良いやつなのか、あいつ? 名前は確か……なんだっけ?

 ま、まぁとにかくあいつのためにも次も頑張るか!

前回予告したとおり次回Chapter1の最終回になりそうです。終わったら少し間でも空けるんですかね? その時になってみないと分からないですから気分がのったときの場合を考えて多少は書き溜めしておいた方がいいんでしょうか、悩ましいところです。

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