守護者Ⅱ
「本来の戦い方?」
「そう。あっ、早速仕掛けるみたいだね」
テオの言葉と同時にレオンはリヴォルへと向かって走り出した。
「はやっ!?」
いくつもの魔法が放たれたがレオンは最低限の動きと魔法で避け距離を一気に詰めたのだが、そのタイミングでリヴォルがレオンへと剣が振り下ろした。レオンは武器を装備していないため防ぐことはできず、さらにあの距離と速さでは避けることもできないだろう。
「あぶなっ……はっ?」
レオンに剣が直撃すると思い、思わず声を上げたのだが予想に反して鈍い音が響いた。音から察するにどうやら直撃はしていないようである。
いや、直撃していないというのは違うだろう。直撃はしているのだがなにやら禍々しい籠手を装備している左の拳を剣へと殴りつけて防いでいる。
「おらぁ!」
そしてそのまま弾き返し、右の拳をリヴォルの腹へと叩き込んだ。
「ぐっ……」
防具を装備しているがモロに直撃したためリヴォルが呻き声を上げて少しよろけた。
「「「来たぁっ!!」」」
闘技場の盛り上がりがここにきて最高潮になる。
「やっと使ったか!」
「久しぶりに見たら、さらに重い一撃になってないか?」
「前でも痛かったのに……」
など様々な反応が見られるためこれを見ているのも面白い。が、それよりも
「どういうこと……?」
気になることが多い。なぜレオンは剣を装備していないのか、そもそもあの短時間でどうやって装備を変更したのか。
「なにが?」
俺の疑問の声を拾ったのか、あいが聞いてきた。
「なぜレオンは剣を装備していないんだい?」
「そりゃあいつ剣のレベルは高いけど、拳で戦う方が得意だし強いからだろ」
「剣士なのに?」
「剣士? ……ああ、違う違う。あいつは称号の『守護者』だぞ」
「えっ!?」
剣士じゃなかったのか……これまで剣を使って戦っているところしか見なかったからそう思っていたのだが違ったようだ。それにしても守護者か……何かを守りたいという気持ちが人一倍強いんだろうか?
「じゃあ装備が初めと変わってるのは?」
「この指輪のおかげだな」
そう言ってあいは自身も装備している指輪を見せてくれた。
「まず装備を用意してこれに収納する。それから指輪に自分の魔力を流すと、そのとき装備しているものから収納されているものに換装されるってわけだ」
なんだその便利なアイテムは。
「ただ高いのがねぇ」
「だよなぁ」
どうやらその指輪は高いものではあるらしいが、便利だし俺でも買える値段ならなら一つ欲しいものだ。
☆
「おらぁ!」
剣を弾き返し、右の拳を腹へと叩き込んだ。防具を装備しているもののもろに食らったためそれなりのダメージは入っているだろう。現にリヴォルの顔は痛みから歪んでいる。
「くっ……」
痛みを和らげる時間を少しでも稼ぐためだろう、魔法を数発放った後土の魔法で壁を作っってきた。
だが……
「そんなんじゃ時間稼ぎにならねえなあ!」
さっきまで放ってきていた魔法と比べて精度も威力も落ちている、痛みで上手く制御できなかったのだろう。
それらを魔法で相殺をしたりしながら壁へと迫る。
「邪魔だあ!」
右の拳へと魔力を集め、炎を纏わせて殴り掛かると壁はボロボロと崩れた。
「そこ!」
「甘い!」
そのタイミングをリヴォルは狙っていたようで風の魔法を放ってきたがそんなのはお見通しである。何年お前と勝負してきたと思ってんだよ!
さて一気に決めにかかるか!
「そらそらそらぁ!」
☆
「うわ……」
レオンが再び距離を詰めた後ラッシュをかけ始めた。仲間としては応援したいのだが……絵面が酷い。レオンが口角を上げて攻撃しているからだろう、悪者に見えるのだ。
さっきあいはレオンの称号は『守護者』だと言っていたが籠手と相まってまったくそんなふうに見えない。さてはあいつ邪神やら魔神やらの守護者なのでは?
そんなわけでどっちを応援するべきか考えていると
「坊ちゃん調子乗ってんじゃねえぞ!」
「そうだそうだ!」
レオンに対し野次が飛んできた。誰が言っているのかそっちを見ると
「……」
バーンさんを含むエルピリアの人たちだった、何やってんのあの人ら?
「あれなに?」
「あれはレオンが調子に乗っているからイラッときたんだろうな、見てみろレオンの顔」
恭也によるとあれは調子に乗っている顔らしい。……言われてみればイラッとしなくもない顔をしているような。
「レオンくたばれ!」
そして遂に恭也まで言い出した。こいつらは仲間という言葉を知らないのだろうか?
「……これ放っておいていいの?」
「まあいつものことだからね、どうせあとで酷い目を見るだろうし。それよりそろそろ勝負が決まりそうだからこっちを見ておいた方が良いよ」
見ればリヴォルはもう一切攻撃に転ずることが出来ず防戦一方になっている。そして
「おらぁ!」
さっきの一撃よりさらに速い拳がリヴォルへと叩きつけられ、後ろへと吹き飛んで壁へ叩きつけられた。
「……ぐっ!」
「俺の勝ちだ」
なんとか立ち上がろうとしたリヴォルへとレオンは拳を突き付けた。
「……ああ、そうだね。僕の負けだ」
「勝負あり!」
リヴォルが負けを宣言したことで審判が判定を下し、それと同時に辺りは歓声に包まれた。
「さあ、下りてレオンのところに行こうか」
「いいの?」
「いいのいいの」
「お疲れ~」
「おう」
テオが声を掛けレオンがそれに返事をした。あれ?
「レオン、傷は?」
あれだけ激しい戦闘をしたにも関わらず、疲労は見られるものの傷は見られない。
「傷? ああ……うちの闘技場にモンスターと戦えるやつがあるだろ」
あの嫌な思い出の奴か。
「あれと似たような結界がこの闘技場にも張ってあるんだよ」
「へー」
そこで説明が終わった、詳しく説明するのが面倒くさくなったんだな?
「やっぱり君は強いね、僕も強くなったと思ったけどまだまだみたいだ」
「そりゃどうも、それより」
「分かってるよ、後で渡そうじゃないか。それよりとりあえず上に行って来たらどうだい? こっちに帰ってきてから会えてなかった人たちがたくさんいるんだろ? 君に会いたがっている人たちが大勢じゃないか」
観客席を見るとたくさんの人が見ている、すごい人数だな。
「チッ、行ってくる」
これまでレオンと共に行動することが何度もあり、その度にレオンは様々な人に声を掛けられていた。それはただ単にこの街のギルマスだからだろうと思っていたのだが、今日この光景を見て分かった。レオンは人望が厚いのだ。
「レオン修行から帰ってきてたんだね」
「なんでうちになかなか来てくれないんだよ!」
「俺とも勝負しろ」
「くたばれ!」
など様々な好意的な声があった。……一部変な声が聞こえたがツンデレというやつだろう。
「俺もいろいろと忙しかったんだよ」
「そうかい、それじゃあ仕方ないねえ。たまには顔を出してくれよ?」
「はいはい。ほら、もう解散しろ解散」
レオンの解散という言葉で名残惜しそうにしながらみんな帰っていき、エルピリアのメンバーとその他数人が残った。
「流石坊ちゃんだ!」
「ああ、見事な勝負だったぞ」
「それはありがとな。……ところで勝負の最中、罵倒が飛んでいたんだがお前らは何か知らないか?」
レオンがその話題を切り出すと数人が目を逸らす。
「やだなあ坊ちゃん、俺たちは坊ちゃんを息子のように思ってるんだぜ?」
「そんなことを言う奴俺らの中にいるはずないだろ!」
そして目を逸らさなかったエルピリアの人たちが真面目な顔をしてさらっと嘘を言いだした。しかし
「そうか……あとでフランヴィーレから記録を借り――」
「「「調子に乗ってすみませんでした!!!」」」
当然そんな嘘が通用するはずもないようで、レオンが記録を借りると言いかけた途端一斉に謝罪した。
「お前らの処分は後で考えるとして、恭也」
「なっ、なんだ!」
声を震わせながら返事をする恭也。
「お前さっきもくたばれって言ってたよな? お前はとくに覚悟しとけよ?」
「いやだー!」
次の日エルピリアのギルド内の大掃除が行われた。メンバーはもちろん昨日のレオンを罵倒した人たちである。その中でも恭也はとくに汚れの酷いところを掃除させられたようだ。
なるほど、テオの言っていた酷い目とはこのことか。
あと1~2話でChapter1は終了ですかね。その後はちょろちょろっと閑話を書こうかなと思ってます。




