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情報屋と *

 朝か……なんで起きた直後の朝ってこんなに残念な気持ちになるんだろうか?


「おはようございます、優臣様」


 うおっ!? 上体を起こすと隣にエラとアリスが目の前に座っていた。びっくりした!


「おはようエラ、アリス。どうしたの、こんなところで?」

「主人より早く起きておかないと怒られますから」


 どうやら以前いた場所ではそうだったらしい。


「俺たちはそんなことで怒らないから。それにまだ眠そうじゃないか。疲れも取れてないだろうしもう一度寝てきたらどうだい?」

「でも――」

「気にしなくていいから」

「……ありがとうございます。あ、あの……」

「どうしたんだい?」

「おトイレはどこでしょうか?」




「メア入るぞー」

「良いわよ」

「なにっ!?」


 エラたちをトイレに連れて行ってから、ノックをして自分の部屋に入ろうとするとメアからの返事があった。いつもこの時間は寝ているはずなのに!


「メア、なんで起きてるの……?」

「失礼ね、いつも私が寝てるみたいじゃない」


 その通りだから驚いているんだが。


「あの子たちがいるから頑張って起きたのよ」

「へー」


 頑張って起きれるならいつもそうしてもらいたいところだが。毎朝舌打ちされたり嫌そうな声を出されるのは心に来るものがある。


「でも明日からまたお願いね」

「拒否権は――」

「ないわ」


 ……それは残念である。




「誰に頼もうかな……」


 家で朝食を作った俺は師匠のところへ行ってからギルドに来ている。

 エラたちの服やベッドを買う必要があるのだが、男の俺が選ぶの不安が残る。メアは家でエラたちといる必要があるため出られず、よってギルドから一人ほど女性陣について来てもらいたいのだが。


「あいは忙しそうだなあ」


 となると比較的仲のいいクロかシルティについて来てもらいたいのだが、どっちにしようか?


「クロにお願いするか」


 悩んでいるとクロが視界に入ったため頼んでみることにする。


「よいぞ」


 クロに頼むと引き受けてくれた。いやー助かる。


 クロと街へと繰り出し、服やら何やらを買っていたら昼になったため昼食をとっていたのだが、ふと気になることがあったので聞いてみる。


「そういえばこの街はどこかしらで何かしらのイベントをやってるよね?」

「そうじゃな、この街の奴らは騒ぐのが好きな人間が多いからな」


 なるほど、そういえばエルピリアのメンバーも騒ぐのが大好きな奴らが多いしな。……あれ? 思えばこの世界や街について俺はほとんど知らないな。


「クロ、この世界のことや街について教えてくれないか?」

「んー、いいぞ」


 クロは一瞬何かを悩んだようなそぶりを見せたがすぐに了承してくれた。じゃあ何から聞こうかな……そうだ!


「神って本当にいるの? この世界では信じてしまいそうになる出来事や話が多いから気になってたんだ」

「……それは本当じゃな。この世界に何度も降臨しておるからな」

「へー、どんな姿なんだろうね?」

「興味があるのか?」

「まぁね、クロは見てみたいと思わないの? 情報屋なら余計にそう思いそうだけど」

「そういうものかの? 我は別にいいが」

「そっか。じゃあ――」

「まぁ待つのじゃ。昼も食べ終わったことだし、続きはデザートを食べながらでどうじゃ?」


 デザートと聞いて前回一緒に食べに行けなかったことを思い出す。これはリベンジチャンス!


「いいね! 行こう! 今すぐ行こう!」

「お、おう? なんじゃそんなに張りきって……」




「はぁ美味かったの~」

「俺も満足したよ」


 二つの意味で。クレープを食べたのだがこれが予想以上に美味かった。初めて見る果物がふんだんに使われており、酸味、甘味などを美味しく味わうことができた。

 そしてある意味メインと言っても過言ではないイベントであるが非常に満足するものであった。とくにクロが子供の様にクレープを頬張ってクリームを頬に付けたときなどただただ素晴らしい、この一言に尽きるものであった。


「それで聞きたいことは聞けたかの?」

「ああ、おもしろかったよ。ありがとう」


 クレープを食べながらいろいろなことを聞くことが出来た。どのような国や街があって、どのような生き物がいるのか。この街ではどのようなイベントがこれまであったのかなど。

 なかでも不思議に思っていた言葉について知ることが出来たのは非常にうれしい。この世界に来て思ったことがある、なぜ別の世界なのに言葉が通じるのかと。

 クロはいろいろと言っていたが簡単にまとめると『神がそうした』ということらしい。……なんかこの世界で不思議に思ったことのほとんどはそれで解決するのではないだろうか?


「それではな優臣、我は楽しかったぞ。また共に食べに行こうじゃないか」

「俺も楽しかったよ、じゃあね」


 さて、やることを終え楽しむこともしたし帰るか。




「ただいまー」

「「お帰りなさいご主人様」」

「ぶっ!?」


 家に帰るとエラとアリスが出迎えてくれた。それは嬉しいのだが何故かメイド服を着ている。


「メアー! これはどういうことだー!」

「あら、お帰り。良いでしょ? メイド服」


 メアの部屋に駆け込むとメアは紅茶を優雅に飲んでくつろいでいた。


「えっ? まあ良いんじゃないかな……ってそうじゃなくて!」

「ほら、私たちもともとメイドを雇うつもりだったでしょ? どうしようかなぁって思ってたらこの子たちが『この家に置いてください、その分働きますから』って言ってきたのよ。もともと家に住ませるつもりだったし別に働かなくていいって言ったんだけどね。どうしてもって言うから実家に戻って、ティナに協力してもらってメイド服貰ってきちゃった」

「……それでいいのかい? エラ、アリス」

「はい、こんないい服をいただいても良いのですか?」

「なるほど、エラたちの気持ちは分かった。分かったけど、何故メイド服にしたの?」

「似合うと思ったからよ」

「……」


 確かにメアの言うとおり似合っているのだが……なんだかなあ。


「そうそう、あなたたちに言いたいことがあるのよ」

「なんでしょうか?」

「そう、それよ! その口調! 確かにメイドをやってとは言ったけど口調はもっと砕けさせて欲しいわ」

「でもご主人様に――」

「あとそのご主人様もなしで。そうねえ、姉と呼ばせるのは立場上無理だから……仕方ない、メアさんでいいわ」

「分かりました」

「分かった!」

「「……」」


 エラとアリスは返事をすると今度はこっちをじっと見てきた。


「えっと……?」

「優臣様はどうしますか?」


 なるほど、そういうことか。確かにこれから同じ屋根の下で暮らす以上、メアの言うとおり他人行儀だと寂しいものがある。

 ふむ……


「俺のことはお兄ちゃんやお兄さんなど『兄』と呼んでくれ!」

「うわぁ……」


 そう言ったらメアにゴミを見るような目でこっちを見られた。


「メア」

「こっちに近づかないでくれるかしら」

「なんで!?」

「そんな欲望丸出しの行為をこの子たちにしておいて恥ずかしいと思わないのかしら?」

「ぐっ! 自分だって姉と呼ばそうとしていたじゃないか!」

「私は良いのよ」


 理不尽だ!


「分かりました、優臣お兄さん」

「にひひ、分かったよ! 優臣お兄ちゃん!」


 エラたちは素直でいい子だなあ。兄と呼んでくれと言ったらそれぞれの呼び方で呼んでくれた。可愛いなあ、可愛すぎて死にそうである。


「はあ……なんかこの先が心配になって来たけど、今日からこの四人でやっていくわよ!」

「「「……」」」

「やっていくわよ!」

「「「おー!」」」

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