吸血姫、家を買う
「家を買うわよ」
「はい?」
ティナちゃんに連れ去られた翌日、メアが唐突にそんなことを言い出した。
「だから家を買うわよ」
「なんで急に?」
「お金と魔術具をお父様から貰ったからね、寮じゃ落ち着かないのと魔術具を設置する場所が欲しいのよ」
「はあ……そんなに貰ったの?」
「ほら」
そう言うとメアはアイテムボックスからさらにアイテムボックスを取り出し机の上で揺すった。
「うわっ」
すると中からは金貨がじゃらじゃらと音をたてながら出てきた。なんだこの量!?
「これ以上出すとしまうのが大変だから出さないけど、多分大きいのが買えるんじゃないかしら? お父様いくつか事業をやってるのだけれどそれで稼いだ一部らしいわ」
ダンケルハイトさんどんだけ私産があるんだよ! こんなにあるならあの時少しぐらい貰っておいても良かったのでは? と思ってしまったじゃないか。いや、知ってても貰わなかっただろうけど……多分。
「ただあとは自分でなんとかしなさいって。家を買ったらとりあえずは貯金かしら?」
「借りるんじゃなくて買うなんだ?」
「お金がこんなにあるからね、せっかくだからこっちにも家が欲しいわ。あと買った家なら壊しても誰にも怒られないから」
買う必要がそこまであるのかと少し思ったが、メアのお金だし俺が口をはさむことでもないか。ん? 今メアが何か物騒なことを言っていたような……
☆
「家が欲しいのよ」
「はあ?」
ギルドに行きメアがレオンにそう言うと、レオンが何言ってんだというふうにメアを見た。級に言われたらそういう反応になるよなぁ。
「というわけで家が欲しいのよ、良い不動産屋知らないかしら?」
「そういうことか……それなら――」
「我に任せるのじゃ」
「ああ、そうだな。クロに聞けばいいんじゃないか?」
メアがレオンに事のいきさつを話し、レオンが質問に答えようとしたところにクロが現れた。レオン曰くどうやらそのクロに聞けばいいらしい。
「クロ知ってる?」
「もちろんじゃ、我は一応情報屋もしておるからな。それでいつ行くのじゃ?」
「今からでも大丈夫かしら?」
「了解じゃ」
「クロ様、いらっしゃいませ。お久しぶりですね」
「うむ、今日はこやつが望む物件があるか聞きに来たのじゃが」
「そうでしたか、私はグラスと申します」
「私はメノアよ、早速だけど良いかしら」
「ふむ、それでしたら一つほど全ての条件に当てはまっているものがありますが。見に行きますか?」
「そうね、そうしましょう」
「ここですね、今鍵を開けます」
「でっか……」
「そう? これぐらい普通じゃないかしら」
目の前には二階建てで大きな家が建っており、しかも庭がある。確かに元の世界にもこれぐらいの家はあったが狭い家に住んでいた俺からすればかなり大きく見えてしまう。
「じゃあ家の中を見て回りましょうか」
「ありがとうございます」
家の中を見て回った後、グラスさんにどうするか聞かれたメアはこの家の値段を聞き、それが一般的な値段なのかクロに聞いていた。そして満足がいく答えだったらしくこの家を買うことに決めた。
「では鍵はこちらになります。また機会がありましたら是非私をまた、それでは失礼します」
そう言うとグラスさんは去っていった。それにしても
「メア、即決だったな」
「よほどのことがない限り買うつもりだったからね。あっ、クロ教えてくれてありがとね」
「気にするでない、それよりお主らは早速引っ越しかの?」
「そのことなんだけどメア、俺も本当にここに住んでいいのか?」
「もちろんよ、私たち契約者なんだから」
パートナーとかそういうの関係なく同じ屋根の下、男と一緒で嫌じゃないのかと思ったのだが……気にしていないならいいか。
「じゃあ引っ越すわよ!」
「ここが私の部屋でそっちが優臣の部屋ね」
荷物はそこまでなかったためすぐに終わった。というより師匠から貸してもらっていたアイテムボックスと刀を以前もらい、それに入れたから早かったのであろう。これ本当に便利だなあ、師匠に何かお礼をしないと。あといくらで買えるのか聞いてみるかな。
「嬢ちゃん終わったぞ、これが新しい鍵だ」
「ありがとうございました」
そしてちょうど片付けが終わると同時に一人の男がやって来た。この男もまたクロに紹介してもらった人物である。
今回メアは家を買ったついでに鍵を新しくしたのだ、確かに前の鍵と同じだと不安になるのは分かるなあ。とくにメアは女の子であるからなおさらだったのではないだろうか?
「これでひとまず我が家の完成ね!」
笑顔で満足そうにメアが言う。
「さあ優臣、引っ越し祝いにギルドに遊びに戻るわよ」
☆
「右か、左か。さあどっちだ!」
「ここは右よ!」
「残念、左だ!」
「なんでよ!」
ギルドに戻った俺たちは暇にしていたクロや恭也を捕まえてボードゲームなどをしていた。そして今はババ抜きの最中でありメアと恭也の一騎打ちとなっている。
かなり遊ぶことに夢中になっていたようでふと外を見れば日が暮れはじめていた。
とここで俺はあることに気付いた。あれ? 俺朝の鍛錬は続けているが他にしてなくないか、と。
……ちょっと明日誰か誘ってなにか狩りにでも行こうかな。
バン!
「たっだいまー!」
なんだ!? 突然扉が大きな音をたてて開いたためそちらを見ると、一人の女の子が入ってきた。うん? あの女の子――
「おかえりサラー!」
そう言いながらレオンが階段を猛スピードで降りてきて女の子に抱きついた。
「ただいまお兄ちゃん!」
サナちゃんに顔が少し似ていると思ったらやっぱりレオンの妹だったようである、ただサナちゃんと違って髪は短く結んであり、雰囲気も活発そうな感じだなあ。
「サラちゃん早いよ~」
しかしサラちゃんとサナちゃんか……先にサラちゃんに会っておいてよかった、同時に会っていたら名前がごっちゃになっていたかもしれない。
などと考えていると続いて三人の女の子が入ってきた。
「あ、やっぱりレオンがいるじゃん。おかえり、そしてただいま~」
「ミーナ、マヤ久しぶりだな。ん? それでそっちは?」
「帰り道に出会ったの。エルピリアに入りたいそうよ? あ、あと晋冶さんからのお手紙もあるみたいね」
「親父から~? ……わかった。あっ、そうだ、お前たちがいない間に二人ほどギルドに入ったから紹介しておくか」
そう言うとレオンと女の子四人がやってきた。
「今いいか?」
「問題ないよ」
「じゃあ椅子持ってくるかな」
「ボクはサラ!」
「自分は東雲ミーナっす、よろしくっす」
「私はマヤ・トロピアよ、私のことはマヤお姉さんと呼んでもいいのよ?」
まずエルピリアに以前から所属している女の子三人の自己紹介があった。ミーナは軽装で動きやすそうな格好をしており、逆にマヤはいかにも魔法使いっぽい恰好をしている……のだが隣の二人が小さいということもあってある部分が余計にローブの下から主張しているように見える。
それから俺とメアが自己紹介をして
「じゃあ最後にあんただな」
レオンがエルピリアに入りたいという女の子に促した。
「私はシルティア・クリスタス。シルティでいい」
このシルティという女の子、見れば猫耳がありその間に髪の毛が上にピョコンとはねている。そういえばさっき見た時に尻尾もあったけど……多分コスプレではないのだろう。あいみたいに耳が少し長い種族もあるみたいだしそんな感じなのかな?
「じゃあ俺とシルティは奥で話してくるから、お前らも何か話してたらどうだ?」
メアやテオを交えて話をして三人について少しであるが知ることが出来た。
サラちゃんはサナちゃんの双子の妹であり、ミーナは東雲とあるように昔この世界に来た異人の子孫であるそうだ。そしてマヤはミラさんの弟子のようである。
……ああ、だから「お姉さんと呼んでもいい」と言ったのかな? これ絶対にミラさんの「ミラ姉と呼ぶように」が影響してるだろ。
新しく出会った三人に加えてメアや恭也と話しているとレオンとシルティアが戻ってきた。
「お前らこっちを向け」
レオンが二階から号令をかけた。
「今日新しくこのエルピリアに入る事になったやつがいるぞ」
「シルティア、みなさんよろしく」
「さて……新しく入るやつがいる、お前らならこれ以上は言わなくても分かるな?」
「もちろんだぜ坊ちゃん!」
「「「パーティーじゃあ!!!」」」
このギルド本当に騒ぐのが大好きだな!?




