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規格から外された存在

「――、――」


 ピッ…………ピッ…………

 暗闇の中、何か音がする。


「――した! ――さい!」


 ピッ……ピッ……

 これは……何かの電子音と人の声?


「意識が回復しました!」

「優臣君! 聞こえるかい!」


 ピッ、ピッ

 目を開けるとマスクと帽子を着けた数人と何らかの機械がいくつか見えた。

 ここは? どこだろう? 気になるけど瞼が重い……




           ☆           



「助かったよ、本当にありがとう」

「本当に助かってよかったわ……」

「オレたちを心配させやがって!」


 気が付いて目を開けると隣にメアとあいが座っていた。どうやら一度目を覚ました後また眠っていたらしい。


「あなた目を一度開けたけどすぐに閉じたらしいわね。担当した人が心臓に悪かったって言ってたわよ」

「あー……」


 確かにそれは死んだかもとか思いそうだな。やりたくてやったわけではないが担当した人に少し罪悪感を覚えた。すみません、誰か知らないけど担当した人。


 俺が目を覚ましたことをあいがレオンに連絡するとすぐ来るとの返事があったらしい。それまでメアたちと軽く会話をしながら時間をつぶしているとレオンたちがやってきた。


「優臣、無事でよかった」


 そしてやって来た全員から目を覚ましたことについて安堵された。


「いやー、心配かけてすまない」

「助かったなら良いさ。それより――」

「昨日何があったのか教えてくれるかい? あっ、喋れそうならだけど」

「分かりました。昨日は――」




「なんと……」

「そんなことがあったのか……」

「優臣君、今の話に間違いはないんだね!?」

「ないはずですが……」


 昨日の結界の中で目を開けたところから意識を失うところまで、覚えている範囲でしっかりと伝えると皆が息を呑んだ。


「ドッペルとの圧倒的な差を感じた? ドッペルが喋る? どういうことだろうか……?」


 なにやら蓮二さんがブツブツ喋っている。そして


「すまない、僕はすぐに優臣君の話をまとめなければならないので失礼するよ。優臣君、快復したらじっくり話を聞かせてくれないか? それじゃあね」


 部屋を出ていった。なんだったのだろうか?


「何があったんだろうね? 何か俺の話におかしな点でもあった?」

「おかしなことしかないな」


 レオンから闘いに必要なかったため聞かされなかったドッペルに関する情報を教えてもらう。

 ドッペルとは必ず、ほぼ互角になるようになっていること。ドッペルは喋らないこと。それに加えて時間になると影に包まれるようなことはなくその場から一瞬にして消えること。それにこれはすでに聞いていたことだがドッペルに負けたら必ず『死ぬ』こと。

 これまで例が少ないとはいえ、できる限りドッペルの情報は集められてきた。そしてその情報と根本的な何かが大きく違ったということはないらしい。つまり


「全然違うんだけど!? おかしいじゃん! げほっ」

「だからそういっただろ! それとお前はまだ安静にしてろ」


 聞いた話と全然違ってびっくりした。俺が闘ったのは本当にドッペルだったのか?


「時間です」


 と、ここで見知らぬ人たちが入ってきた。恰好からして医者だろう。


「もう時間なのね……優臣のことお願いしますね」

「じゃあな」

「ああ、今日はありがとな」


 面会終了の時間が来たためお見舞いに来たメンバーは部屋を出ていった。そして部屋には俺と男女一人ずつの医者が残った。


「傷の説明をしますね」




「昨日は心配かけてすみませんでした。ありがとうございます」

「いえいえ、それでは」


 説明を終えて部屋には俺一人になる。どうやら治療を担当したらしいので目を閉じてしまったことについて一応謝っておく。


「ふー……」


 医者の説明によると内臓には大きな真新しい傷痕があったようである。ただ痕と言ったように運び込まれたときに傷はなかったようだ。

 最近内臓まで届くような傷を負った覚えは今回の闘い以外に思いつかない。ドッペルにこちらに連れて来られた時はそこまでではなかったはずであるから。

 そのことを医者に告げると非常に難しい顔をされた。それはそうである、なぜなら内臓が自然に、それもかなりの速さで修復したということになるのであるから。もしかしたらドッペルに魔力を流されたときに何かされたのかもしれない。

 これも告げたが関連性が不明と言うことで様子見ということになった。一応傷跡を魔法とポーションにて治癒を行ったが何か違和感を感じればすぐに連絡してくれとのことである。外傷も治療によってほぼ完治し、今日を安静に過ごせば明日からは運動もできるということである。かなりの怪我だったと思うがすぐに運動できるまで治せるとは魔法様々である。


 ふと窓の外を見ると太陽が半分ほどしずみ、辺りを赤く照らしていた。


「もし……」


 もし治療が遅れていたら俺は死んでいたのだろうか? なぜ俺のドッペルは他と違うのだろうか? 混沌という称号のせいなのだろうか? 俺は本当に勝つことができるのだろうか? 

 弱っているからかさっきから嫌な考えばかり浮かんでくる。


「はあ、もう寝るか……」


 こんな状態で起きていてもプラスにならないだろう。願わくば寝ることで少しでも気分がリフレッシュされますように……



           ☆           



 やぁ、おはよう。今朝起きてみるとお世辞にもいい気分とは言えないが、少なくともネガティブな考えが浮かぶようなことはなくなっていた。リフレッシュ成功……なのかな?

 そして今、退院の時間となり病院の前に立っている。


「身体を大事にね、優臣君。しつこいようだけど違和感を感じたらすぐに連絡するんだよ」

「ありがとうございます、お世話になりました」


 担当してくれた人たちにお礼を述べる。


「じゃあ優臣、帰りましょっか!」

「ああ、ありがとな」




「で、ギルドに行くと」

「当然じゃない。まだギルドにきちんと報告してないでしょ」

「そういえばそうだった、じゃあ早速入るか」


 報告するためにギルドの扉を開く。するとそこには


「おう、待ってたぞ」


 レオンたち、エルピリアのメンバーがいた。テーブルの上には様々な料理が並べられている。


「えっと、何これ?」

「祭りだよ、お前が生き残ったことのな。お前ら! 主役の登場だ! 祭りを始めるぞ!」

「「「いえーーーー!!!!」」」


 レオンの号令で一斉に賑やかになるエルピリア。


「優臣はこっちにこい」

「ああ」


 レオンに呼ばれたためメアと共に着いていく。


「でこれはなんなのさ?」

「この世界ではドッペルに殺されることも少なくない。だから勝った際には親しい人が集まって様々な思いを込めて祭りをするんだ」

「でも俺は……!」

「負けたな、だがそもそもこの祭りで一番大切なのは気持ちだ。『おめでとう、生きていてくれてありがとう』というな。お前は今、ここにいる。つまり生きている。普通なら「ドッペルに勝つ=生きている」だから勝った際に開くということだけだ。おかしいことは何もない」

「そう……なのか? …………ありがとうな」

「お前が礼を言うのは違うだろ」

「それもそうか」


 思わずふふっと笑った。


「……やっとあなた笑ったわね」

「えっ?」

「昨日からひどい顔だったのよ、少しは元気が出た? 皆心配してたのよ?」


 メアにそう言われあいたちのいる方を見ると皆、心配そうにこっちを見ていた。かなり心配をかけてしまったらしい。


「……みたいだね」

「じゃああいつらのところに行くか。このままだと主役であるお前が楽しめないしな」


 席を立ちあいたちと合流する。そして謝罪と感謝の気持ちを込めて笑顔で言った。


「みんな心配かけてごめん……ありがとう」

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